浸透率、クレンジング、エステの効果など、スキンケアに関する7つのよくある疑問
ちょっと前に 「アメリカ皮膚科学会式のスキンケア」って話をしまして、そこで紹介したのが2012年の論文(1)。スローンケタリング癌センターの先生が、「正しいスキンケアってなによ?」を調べまくったおもしろレビューであります。
その基本的な結論は「アメリカ皮膚科学会式のスキンケア」に書いたとおりですが、本論には他にもいろいろタメになるポイントが出てますんで、落穂ひろい的にまとめときます。
1.肌に吸収される物質とは?問題
ネットでは「美容液が肌に浸透!」「いや、基礎化粧品は時間のムダ!」といった議論があったりします。が、この論文によれば、肌を通過するものは、
- ステロイド
- 四塩化炭素
の2つだけ。というか、どっちも美容と関係ないっすな(笑)
エステで使われる成分は肌を通過して血管には入らないし、肝臓までたどり着くこともない。そう考えたほうが安全だ。もし肌に塗ったものが血管に入れば、それは薬品として扱われ、FDAによって規制されるはずだ。
ごもっともですねぇ。
2.フェイスクレンザーは必要なの?問題
顔をどんだけ洗う必要があるの?って話ですが、これについて専門家の意見はかなり厳しめ。
特に冬に多いケースだが、乾燥肌や肌のかゆみで病院に来る患者の大半は石けんの使いすぎが原因だ。現代のアメリカ人は体を洗いすぎだ。1日に2回もシャワーを浴びていては、肌が乾燥して当然だろう。
ってことで、クレンジングのしすぎを固く戒めております。その代わりに、
夜になったら、ワセリンを使ってメイクアップを落とせばいい。それから余分なワセリンをティッシュで拭き取れば、肌の水分を守るのに十分なバリアーができる。
とのこと。やっぱワセリンですな。
3.目の周りには特別なケアが必要なの?問題
目の周りは肌が薄いので特別なケアが必要だと思われがちですが、専門家の意見はさにあらず。
目の下の皮膚はとても薄いので、刺激物への炎症反応が他の部分よりも目立ちやすい。そのため、目の周りには余分なものが入っていない保湿商品を使ったほうがよいだろう。つまり、ワセリンで十分だ。
とのこと。結局、不純物が少ないぶんだけワセリンがいいんだ、と。
4.年を取ったらスキンケアを変えるべき?問題
年を取ったら、その年齢に応じたスキンケア商品を買うべき?って問題ですね。
年齢によってスキンケアを変えるのは、まったく論理的ではない。なかには30才なのに50才のような肌をしている人もいるし、60才でも50才にしか見えない人もいる。年齢よりも重要なのは、各自の肌タイプだ。
もし乾燥肌なら、35才だろうが55才だろうが保湿を重点的に行えばいい。
確かに年を取ると肌は衰えるものの、結局は本人の肌質がもっとも大事なんだって話でした。そりゃそうですよね。
5.高級な化粧品って意味あるの?問題
ウン万円のラ・メールと数百円のニベアに差はあるの?みたいな話ですね。ここではいくつかのポイントがありまして、
- 高級な化粧品は、おもに心理的に気分をよくする効果がメイン
- ただし大企業の商品ほど安全テストにお金をかけているので、基本的には名の知らない企業の製品は飼わないほうがいい
- といっても、大企業のマーケティングは科学をねじ曲げて伝えるので、宣伝文句は信じないほうがいい
みたいな感じ。企業の宣伝を信じるのはムダだけど、安全性の面から名の知れたブランドを買ったほうがいいよ、と。おっしゃるとおりですね。
6.フェイシャルエステって意味あるの?問題
フェイシャルエステの効果については、
- ノーマルな肌の人にはまったく意味がない。また、色素沈着を起こした肌には逆効果になる可能性の高いので注意
- 古い角質を落とすぐらいの効果はあるんじゃない?
って感じ。「角質落とし」にどれだけの価値を感じるかがポイントでしょうか。
もっとも「リンパマッサージ」については意見がわかれてまして、
- 本当にリンパの流れに問題があったら、マッサージぐらいじゃ解決できないでしょ
- 加齢した肌や光老化のダメージが大きい肌はリンパ管が少なくなるから、たまった液体を流すのはアリかも
って感じだそうな。こちらも値段と相談ですかねー。
7.フェイシャルマッサージがストレスホルモンを下げて美肌になる?問題
フェイシャルマッサージが無意味なのは以前にも書いたとおり。ただし、もうひとつ「フェイシャルマッサージの効能はストレスを下げるところにあるのだ!」って主張についてはどうなんだって問題です。
要するに、フェイシャルでリラックスホルモン(オキシトシン)が増えるおかげでストレスホルモン(コルチゾール)の量が下がり、結果として美肌に結びつくって説ですね。私はこの説を知らなかったんですが、ググったら日本でも似たような主張をしているページがヒットしますな。
ところが現時点の研究は残念な結果でして、
- 過去の文献をレビューしたところ、マッサージでコルチゾールは下がらないことがわかった(2011年,1)
- 45分のマッサージに、オキシトシンを増やす効果は確認されなかった(2010年,2)
みたいな感じ。著者いわく、
マッサージによるコルチゾールへの影響は、一般的にとても小さい。たいていの場合、統計的にゼロと区別がつかないレベルだ。
だそうです。どうもフェイシャルには、主観的に「気持ちいいなー」と思わせる効果しかないっぽいですな。