「努力は必ず報われる!」わけではないが、報われやすい努力の仕方は存在する
偽のマインドセットを使ってないか?
名著「マインドセット」のアップデート版が出てたんでKindleで購入。ご存じ「やればできる!」の正当性を科学的に検証したナイスな一冊であります。
ざっくり言うと、人間には2つの思考スタイルがあるって話で、
- 硬直マインドセット=自分の能力は生まれつき決まってて変えられない
- しなやかマインドセット=自分の能力は努力で育てられる
って感じ。このうち「しなやかマインドセット」を持った人のほうが、いろいろと結果を出しやすいって話ですね。さらにくわしくは「しなやかマインドセットの育て方」をご覧ください。
で、このアップデート版で何が変わったかというと、「マインドセットを誤解してる人が多いから注意して!」ってとこが強調されてました。この十数年で「マインドセット」のアイデアが広まったのはいいんだけど、そのせいで「偽しなやかマインドセット」を使っているケースがよく見られるようになったんだ、と。
マインドセットは常に切り替わっている
そのパターンはいくつかありまして、まず多いのが、単純な二元論に回収しちゃうパターン。「彼はいつも硬直マインドセットだ」とか「自分は常にしなやかマインドセットだ!」みたいに、雑に切り分けちゃうケースですね。
ドゥエック博士いわく、
どんな場面でも常に同じマインドセットでいられる人などいない。誰のマインドセットでも、ある程度は硬直しているし、ある程度はしなやかさを持っている。
ある場面ではしなやかマインドセットのほうが優位だったとしても、ちょっとしたきっかけで硬直マインドセットに切り替わる可能性は大いにある。
とのこと(1)。2つのマインドセットは明確に切り離されておらず、両者がひんぱんにスイッチングしているんだ、と。
マインドセットが切り替わる原因は、何かトラブルが起きたからかもしれないし、自分のコンフォートゾーンから出てしまったからかもしれない。または自分の専門だと思っていたジャンルに、もっと有能な人物が現れたからかもしれない。
そんなわけで、「自分はどっちのマインドセットを持った人間か?」ではなくて、「いまは硬直してるな…」や「しなやかになってきたな…」のように、現在の状態をモニタリングできるほうが重要ってことですな。つまり、メタ認知が超大事。
戦略を考えないのは正しいマインドセットではない
でもって、もうひとつの「偽しなやかマインドセット」が、「要するに努力が大事ってことでしょ?」みたいなやつ。もちろん努力は大事なんだけど、「戦略のない努力はムダ」って側面が強調されておりました。
「本当によくがんばったね!」といったように、たんに子供の努力をほめるだけでは効果がない。子供たちは、実際の結果が出てないのにほめられたことに気づいており、「残念賞」をもらったように感じてしまうからだ。
これは子育ての例ですけど、メカニズムは大人でも同じっすね。
正しく「しなやかマインドセット」を育てるには、成長のプロセスに意識を向けなければならない。努力をほめるときは、その努力がいかに成長のプロセスを変えたかが重要になる。
とのこと。たんに努力が大事なんじゃなくて、その努力でちゃんと成長したかどうかがポイントなわけですな。
何らかの問題が起きたときに、子供たちは「努力だけではどうにもならない」という事実を認識しなければならない。効果がない戦略を使い続けて、努力の量だけを倍にしても意味がない。
使える戦略を生み出すために努力するのが、正しい努力の使い方なんだ、と。ごもっともですねー。
子供をほめるときは、「プロセスをほめる」ことを意識しよう。たゆまぬ努力、正しい戦略、優良なリソースの利用という3つのポイントをちゃんと組み合わせて、しっかりと成長に結びついたかどうかに注意を向けるのが大事だ。
努力・戦略・リソースの3つがないと、正しい「しなやかマインドセット」 にはならないってお話でした。
実はこのへんの話は旧版にもちゃんと書いてあるんですけど、たんに「努力は必ず報われる!」みたいな話と混同されちゃうケースが多かったみたいっすね。もちろん努力は大前提として、戦略の正しさをチェックし続ける仕組みを考えるのがよさげ。