ジョコビッチもダマされた? グルテン過敏検査の本当のところ
自分がグルテンに弱いかどうかを確認する方法はない
こないだ雑誌のインタビューを受けてて驚かれたのが、「自分がグルテンに弱いかどうかをハッキリ診断する方法はない」って話でありました。なんでも、その記者さんは、ウン万円を払って海外のグルテン過敏のテストを受けたんだそうな。
軽くおさらいしますと「グルテン過敏」ってのは、小麦に入ってるグルテンでいろんな不調が起きる症状のこと。具体的には、ヒドい下痢や貧血、頭痛、鼻水などで、日本では「ジョコビッチの生まれ変わる食事」 で有名になった話ですね。
が、実際は「グルテン過敏」についてはまだ何にもわかってないんで、ハッキリした検査法があるはずもないんですよ。
いろんなテストをしてみるしかない
いまのところはIgAやIgG抗体を調べたり、小腸のダメージをチェックしたりするケースが多いんですが、いずれも決め手に欠けているのが現状。2010年にセリアック病(グルテンに反応する自己免疫疾患)の診断法を調べたレビュー論文(2)でも、「これといった診断法はないから、いろんなテストをしてみるしかないんじゃない?」って結論だったりします。
さらには、現時点でどれだけグルテンに弱い人がいるのかすら曖昧で、2015年のレビュー(1)によれば「全人口の0.5〜13%は存在しているかもなぁ…」とのこと。まぁ診断法がハッキリしてないんだから、モニョモニョしますよね。
現時点でのベストなテスト法とは?
では、グルテン過敏症を見極める方法はゼロなのかといえば、そんなこともございません。2015年に世界の専門家が集まって「どうやってグルテン過敏を診断しようか…」を議論しまくったところ、以下のような結論にたどりついたんですね(3)。
▼現時点でもっとも正確にグルテン過敏を確かめる方法
- グルテンを完全に絶った食事を6週間続け、そのうち3週間は症状診断を受ける
- 6週間で症状が30%以上改善しなければ、グルテン過敏の可能性はない
- ステップ2で症状の改善がみられた場合は、さらに厳密なテストに進む
- 1週間だけ「グルテンが入った食事」か「グルテンフリー食」のどちらかをランダムで続ける。もちろん、被験者にはどちらの食事をしているかを隠す
- 次の1週間で「グルテンフリー食」を行う
- 最後の1週間で、再び「グルテンが入った食事」か「グルテンフリー食」のどちらかをランダムで続ける(最初の週とは違う食事)。
- 「グルテン入り食」と「グルテンフリー食」で、症状に30%以上の違いが出たかをチェック。
- 30%以上の差が認められれば、晴れてグルテン過敏だと認定!
専門的にいうと、3週間の二重盲検クロスオーバー無作為化プラセボ比較試験をくぐりぬけないと、本当にグルテンに弱いかどうかはわかんないわけですな。いやー、めんどくさい(笑)
まとめ
そんなわけで、私が「ジョコビッチの生まれ変わる食事」を読んだときは、「グルテン過敏は簡単な血液検査でわかる」みたいなことがサラッと書いてあったんで、かなり「ん?」となりました。
「ひょっとしたらヤバい医者に捕まったんじゃね?」とか思ってたんですが、「ノバク・ジョコビッチ伝」によれば、どうやらジョコビッチさんにグルテンフリーをすすめたのはホメオパシー系の人らしい。うーん、結果が良かったからいいですけどねぇ…。
ってことで、ネットでありがちな怪しいテストには惑わされぬようお願いします。といっても、自力でランダム化試験はできないので、いまんとこは「プチ除去食のすすめ」に書いた方法で自己診断してみるのが現実的ですかねぇ。