「宗教的な人ほど頭が悪いのはなぜ?」という論文
宗教的な人ほど知性が低い傾向が
「宗教的な人は頭が悪いのはなぜ?」みたいなテーマの論文(1)が出ておりました。
これはインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究で、まず最初の一文を紹介すると、
宗教性が知性と逆の相関を示すことは広く認められている。
とのこと。つまり、宗教にハマりやすかったり信仰心が厚い人は、なぜか頭が良くない傾向があるんだ、と。いきなりな出だしですねぇ。
が、これは実際に何度も確認されている事実でして、たとえば2013年のメタ分析(1)が有名どころ。63件のデータをまとめて大きな結論を出した内容になっていて、宗教的な人と知性の相関は「r = −.24」になっております。そこまでハッキリとは言えないものの、やはり大きな傾向としてはあるんだろうなーぐらいの数字っすね。
宗教的な人の知性が低いのは思考スタイルの問題か?
で、今回の研究では、「宗教的=知性が低い」って関係があるのはなぜ?ってとこを調べております。研究者いわく、
このような関係が現れる理由としては、(宗教的な人は)直感的に問題を解決するため、行動にバイアスがかかってしまうのではないかと考えられている。
ってことで、宗教的な人はヤマカンに頼って物事を決めるからじゃないかと推測しておられます。
つまり、宗教的な人は一般的な知性が低いわけじゃなくて、思考スタイルのせいで論理的や思考を軽んじる傾向があり、結果としてIQテストの成績も下がっちゃうんじゃないかってことですね。これはありそうな話ですなぁ。
全体的に無神論の方が成績がいいが…
そんなわけで、研究チームはオンラインで約63,000人に協力をお願いして、12種類の認知テストを実行。計画力、推論力、注意力、ワーキングメモリなどの高さをチェックしたうえで、
- 宗教的
- 不可知論者(神がいるかどうかは人間には判断できないのだ!みたいなやつ)
- 無神論者
の3パターンに全員を分けております。
そのあとで全ての数字をまとめたところ、
- 全体的に、宗教的な人より無神論者の成績がよかった
- その傾向は、年齢や教育レベルなどの要素を調整しても残った
- 不可知論者はほとんどのテストで真ん中の点数を取った
だったそうで、これは予想どおりの結果ですね。ただ、細かく見てみるとそこには微妙なニュアンスの違いがありまして、
- ワーキングメモリの性能にはそれほどの差はない
- ただし宗教的な人は、ストロープタスクのように推論の能力が必要なテストに弱い
だったそうな。要するに、ベースとなる脳の機能には差がないんだけど、推論が必要な作業になると宗教的な人は直感に頼っちゃう可能性がデカいみたいなんですな。
別に宗教的な人の一般的な知性が低いわけではない
いっぽうで宗教的な人は、
- 演繹的な思考力では特に他のグループより劣っていない
との傾向も出ておりました。演繹的ってのは、
- すべての猫は可愛い → 私が飼っているのは猫である → ゆえに私の猫は可愛い!
みたいに、絶対的な事実をベースに最終的な結論を導き出すタイプの思考法。演繹法は直感を使う必要がないんで、宗教的な人でも正しい答えを出しやすいんだそうな。なるほどねぇ。
まとめ
研究者いわく、
宗教的な人は、一般的な知性や推論の能力が低いわけではなく、論理と直感のあいだでコンフリクトを起こしている。このデータは、その仮説を支持するものだ。
とのこと。あくまで知性の差は思考スタイルの問題だってことですな。なんか納得感があるなぁ。
まぁ、頭がよかろうが悪かろうが、「信心深い人の方が長生きで幸福」だってデータもありますし、個人的にはどっちでもいいんじゃないかと思いますけども。どっちの生き方にもメリットとデメリットはありますんで。