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「地中海式ダイエット」の有名論文が間違いだった!地中海式ダイエットって間違いなの?問題

Med

 

地中海式ダイエットに関するご質問をいただきました。

 

「地中海式ダイエット」の効果を示す重要な論文が撤回されるという記事が出ていました(https://gigazine.net/news/20180621-mediterranean-diet-study-retraction/)。パレオさんは地中海式ダイエットを推してたかと思いますが、これはどのように考えるべきでしょうか?

 

とのこと。ちょっと考えてみましょうー。

 

 

まず前提として「地中海式ダイエット」ってのは1960年代にギリシャやイタリアで行われていた食事法を模した食事法です。現時点では、もっともデータ数が多い食事法でして個人的にも推奨しております。

 

 

その具体的な手法については、「陽気に食って楽しく痩せる「地中海式ダイエット」超基礎編」をどうぞ。また、これまでどんな証拠が出てきたのかについては「「地中海式ダイエット」の効果について知っておきたい3つのこと」をご参照ください。

 

 

さて、ご質問にあった記事がどのようなものかと言いますと、

 

地中海式ダイエットが注目を浴びたのは、2013年にニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)で「オリーブオイルを多く使った地中海式の食事をしていた人は、低脂肪食をとっていた人に比べて心臓発作・卒中・心疾患による死を経験する確率が30%少ない」という研究結果が発表されたことをきっかけとしています。

 

この研究では、ナッツを多く取る地中海式の食事を取っていた人は上記のリスクが低脂肪食をとっていた人に比べて28%低かったことも示されています。

 

しかし、NEJMは研究方法に問題があったとして、2018年6月13日付けで上記の論文を撤回しました。基本的に一度医学・薬学雑誌で発表された論文が撤回されることは珍しく、その数は1000本に1本以下だと言われています。上記の論文の信頼性はかねてから疑われており、撤回は最後の手段といえます。

 

って感じです。要するに、地中海式の効果を示した有名な論文が撤回されちゃったんだ、と。なかなかスキャンダラスな話でして、このニュースをもとに「地中海式は無意味だ!」みたいな結論を出しているお医者さんのブログも見かけたりしましたね。

 

 

そもそもなんでこんな話になったかといえば、2013年の論文で扱ってるデータに不備があったからです。このデータ、論文内では「すべてランダム化されてるよ!」って触れ込みだったのが、実はそうじゃなかったんですね。つまり、参加者の選び方に偏りがあったわけです。

 

 

具体的にどれぐらいの不備があったかと言いますと、7,447人中1,558人のデータが使えなかったんですな。なかなか大変ですねー。

 

 

もっとも、これで「地中海式は無意味だ!」って話にはまったくなりませんのでご安心ください。というのも、実験の不備がわかってからすぐに再計算が行われてまして、こんな結論が出たからであります。

 

  • 地中海式ダイエットをすると心疾患の発症率が30%下がる!

 

ってことで、実は撤回前の数字とまったく同じだったんですな。もちろんサンプル数が減ったのは痛いものの、現実的な結論は変わらないままであります。個人的には、これなら結論部を変えなくてもいいんじゃない?と思ったわけですが、おそらくジャーナルの編集上の要請があったんでしょうな。

 

 

さらに言えば、地中海式についてはその後も多数の追試が行われてまして、2016年論文(1)では15482人を対象に心疾患を減らす傾向が確認されてますからねぇ。今回の話で地中海式の優位性が動くことはないかなぁ……というのが正直なところです。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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