乳製品は体に悪い!心臓病の原因になっちゃうぞ!って説はどれぐらい正しいのか?
乳製品って本当に体に悪いの?問題
「乳製品ってどうなの?」って議論は昔からありまして、一部には「牛乳で癌になる!」みたいな意見もあるわけです。事実、「なぜ『牛乳』は体に悪いのか 」なんて本まであるほどで、
- 乳製品は飽和脂肪が多いから心臓病を引き起こす!
- 乳製品による成長ホルモンの増加が癌の原因に!
といったメカニズムが言われてたりします。怖い話ですなぁ。
ただし個人的には別に乳製品は「別にいいんじゃないかぁ」と思ってまして、たとえば癌との関係については「牛乳でがんになるってホント?」シリーズをご参照ください。ざっくり言えば、「もしかしたら前立腺がんとの相関はあるかもだけど、基本的には気にしなくてもいいかなぁ」ぐらいのレベル。
また、チーズに関してもこないだ書いたとおりで、心臓に悪いどころかメリットがあったり、体内の炎症レベルにも影響しないらしいんですな。もちろん、乳製品に飽和脂肪が多いのは間違いないんで「無制限に食ってよし!」とは思わないものの、そこまで気にしなくても良いのでは?とか思ってたりします。
といったところで、近ごろ欧州心臓病学会から出た論文(1)は、「いまの乳製品のガイドラインは厳しすぎるぜ!」って結論になってて良い感じでした。
乳製品で総死亡率が低下!
これは1999〜2010年にかけて行われた健康調査をまとめたもので、参加者の数は24474人です。アメリカのCDCが行った調査のデータセットを使用しておられます。
フォローアップ期間のあいだに3520人の死者が出まして、そのうち827人が癌で、709人が心疾患、228人が脳の血管疾患によるもの(脳梗塞とか脳出血とか)。これらのデータを、全員の毎日の食事量とくらべたわけですな。
その結果がどうだったかと言いますと、
- すべての乳製品は総死亡率2%の低下と相関がある
- チーズは総死亡率8%の低下と相関がある
- 脳梗塞や脳出血については、乳製品は4%のリスク低下と関係がある。とくに牛乳は7%ほどのリスク低下と相関
ってことで、乳製品をよく食べる人は、わずかながらも寿命がのびるんだ、と。とくにチーズとの関係がすごい数字ですね。
ただし牛乳の飲み過ぎには注意だ!
さらに、この論文ではメタ分析もやっていて、12件の観察研究(前向きコホート)から636,726人分のデータをまとめてくれております。これは信頼感があっていいですねー。
では、こちらの結果がどうだったかと言いますと、
- すべての乳製品はやっぱり総死亡率の低下をもたらす。脳梗塞や脳出血リスクも下げる
- ただし、牛乳は心疾患のリスクを4%上げる
- ヨーグルトは心疾患のリスクを3%下げる
みたいな感じ。牛乳と心疾患リスクが上がってるのが気になりますが、ここらへんはちょっと謎。2017年の別のメタ分析(2)では「牛乳で心疾患リスクは上昇しない」って結論も出てるんで、もうちょい研究が進まないと判断が難しいかなぁ……という。
とはいえ、全体的に見れば「乳製品は安全性が高いし予防効果すらあるかも?」って感じになってまして、研究者は以下のように申しておられます。
乳製品の病気予防効果からすれば、公的な機関はガイドラインを変えるべきだろう。もちろん牛乳を飲みすぎれば心疾患リスクは高まるかもしれないが、適度な量であれば健康に良い。
要するに、この研究チームは「牛乳は飲みやすいせいで飽和脂肪酸をとりすぎちゃうんじゃないの?」と考えてるっぽいんですな。そりゃあ大量の脂肪をとりすぎるのは良くないですからねぇ。
ってことで、普通に1日グラス1〜2杯ぐらいであれば牛乳は体によさげだし、とくにチーズやヨーグルトのような発酵系の乳製品は予防効果がありそう。個人的にはちょっと乳糖に弱い体質なので、そんな積極的には摂取しようと思わないんですが、乳製品が好きな人がガマンする必要もないですよーってことで。