今週の小ネタ:人生の満足度と体重、互恵不安、若いころの肥満と癌
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
人生の満足度と関係するトップの要素ってなに?
まずはチャップマン大学の研究(1)で、「人間が人生の満足感をえるために必要な要素はなにか?」ってところを調べております。
具体的には、約12000人の男女を調べた研究で、全員のパーソナリティ、人間関係、自尊心レベル、所得などを調べたうえで、人生の満足度とくらべたんですな。その結果がどんなものかと言いますと、
- 人生の満足度と相関していたトップ1は「見た目」だった
とのことで、やたら即物的な結論が出ておりました。研究者いわく、
今回の研究は、私たちの人生の満足度にとって、見た目が大きな役割を果たしているということだ。
とのこと。ただし、ここでいう「見た目」ってもは生まれつきのルックスじゃなくて、この論文では体重を指標にしております。女性の場合はスレンダー体型のほうが満足度が高く、男性だったらひきしまった体のほうが人生に満足してたんですな。
ちなみに、そのほかの傾向としては、
- テレビを見る時間が多い人ほど、自分の見た目に満足してないケースが多い
- 自分の見た目に満足している人は、愛着スタイルが安定型になりやすい
- 自分の見た目に満足している人は自尊心が高く、友人や家族との関係も良く、経済状況も安定していた
みたいな感じ。全体的に見ればBMIが高い人ほど自分の見た目に失望しがちで、最終的には人生の満足度の低下と関係していたらしい。
もちろん、これは「体型がよければ人生が改善する!」って話じゃなくて、おそらく「体型を適切に管理できる能力を持った人は人生の満足度が高くなる」みたいなことだろうと思われます。要は体型がセルフコントロール能力の指標になってるんだろうなー、という話ですね。
他人に何かしてもらえると不安になっちゃう人ってどんな人?
他人に親切にしてもらうと不安になることはないですか? 落としものを拾ってもらったら妙に居心地が悪くなったり、席をゆずってもらったらなんかムズムズしたりとか。私はよくあります(笑)
この現象について調べてくれたのが、中山大学の新しい論文(2)。研究チームは、他人の親切で居心地が悪くなってしまう状況を「互恵不安」と名づけ、11問から構成されたオリジナルの質問集を作ったんですな。
で、こいつを数百人の参加者に答えてもらい、どんな傾向が出るかをチェックしたところ、
- 互恵不安が高い人は、ショップが提供する無料のドリンクや、20%オフのクーポン券みたいなのも嫌がりがち
- 互恵不安は、おもに「他人に借りを作りたくない!」という気持ちから生まれている
- 全体のうち18%の人に互恵不安が確認された
って結果になったんだそうな。研究チームは、この現象を「社会不安の一種」だと考えてまして、とにかく他人に迷惑をかけたくない気持ちが強すぎて、「自分だけが親切にしてもらうのはヤバい!」って感覚が生まれるんだそうな。すげー共感できるなぁ。
といっても、多くのデータでは他人の親切は喜んで受けたほうがいいし、他人にガンガン頼みごとをしたほうが好かれるよ!って結果も出てますんで、ここらへんのバイアスは修正したほうがよかろうと思われます。自戒。
若いころの肥満は人生に大ダメージが!
最後は東呉大学が行なったメタ分析(3)で、若年期の肥満って歳をとってからも悪影響なの?って問題を調べてくれたもの。中学生のころからブクブクに太っていた私には、なんとも気になるデータなわけです。
これは過去の観察研究から56件を抜き出して、おもに若いころの肥満と発がん率の関係をチェックしたもの。すべてひっくるめて計算したところ、
- 30歳より若いころに肥満だった人は、以下の発症率が高くなる
- びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫
- 食道癌
- 胃がん
- 肝臓がん
- 皮膚がん
- 膵臓がん
- 子宮がん
- 甲状腺がん
ってことで、個人的に非常にヘコむ結果になってました。若いころの体脂肪と発がん率がどう関係してるかはよくわからんのですが、とりあえず子供の肥満には注意しといたほうがよさげ。
私のように若いころにデブだった人は、「世界がん研究基金がまとめた、ほぼ確実に癌リスクを下げる要素」などを参考にしつつ、少しでも発症率を下げていくしかないでしょうなぁ。