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「ここまで言葉が出てるのに!」を防ぐには運動しかないかも!という話

Memory

 

ここまで言葉が出てるのに!」って経験は誰にでもありましょう。「あの映画の主演の名前が出てこない……」みたいなやつですね。最近では、私も「ライアン・ゴズリング」って名前が40分ぐらい出てこなくて困りました。

 

 

で、この現象が「脳の劣化かどうか?」ってのは意見が分かれるとこですが、とりあえず歳をとるごとに多くなっていくのは間違いないところ。その点で加齢のサインだとは言えるでしょうね。

 

 

が、新しいデータ(1)は「『言葉が出ない』を防ぐ方法はないの?」ってところを調べてくれてておもしろいです。

 

 

これはバーミンガム大学の研究で、2つの集団を対象にしております。

 

  1. 60代後半の高齢者28人
  2. 20代前半の若者27人

 

でもって、まずは全員にエアロバイクをこいでもらって参加者の心肺機能をチェック。そのうえで、

 

  • モハメド・アリのラストネームは?
  • リスが食べるオークツリーに生えるフルーツは?
  • ダイアナ妃の旧姓は?

 

みたいな質問をしまくって、みんながどれぐらい「言葉が出ない現象」に悩んでるのかをチェックしたんだそうな。

 

 

その結果は予想どおりで、

 

  • やっぱ高齢者ほど「言葉が出ない現象」が多くなる
  • だけど、心肺機能が高い高齢者ほど言葉は出やすい

 

って傾向が見られたそうな。つまり、体力がある人ほど「言葉が出ない!」って問題に悩みにくくなるんだ、と。なんとなくわかりますな。

 

 

さらにここでおもしろいのが、

 

  • ボキャブラリーの量や忘れてしまった言葉の量は、「言葉が出ない現象」とは関係がない

 

ってとこですね。研究者いわく、

 

歳を取って「言葉が出ない現象」が起き始めると、多くの人は深刻な記憶の問題があるのではないかと心配しがちだ。しかし、この不安は誤っている。

 

「言葉が出ない現象」は記憶の障害とは関係がない。事実、高齢者は若者よりもボキャブラリーが豊富なケースが多いからだ。

 

実際の「言葉が出ない現象」は、知識自体は記憶の中に存在するが、その情報の音声形へアクセスできないせいで発生する。

 

知ってるのに言葉が出てこない!ってのは記憶の問題ではなくて、認知的流動性の問題だと考えられるわけっすな。

 

 

このブログでは「運動は脳にいい」って話をさんざん書いてるんで、心肺機能が高い人ほど言葉出やすいのも当然な気がしますけれども、実際のメカニズムはそこまで明確ではなかったりします。とりあえず研究者が推測してるのは、

 

先行研究によれば、健康な高齢者に「言葉が出ない現象」が起きた場合は、脳の灰白質が萎縮を起こしているケースが多い。その結果として言語機能に変化が起きる。

 

ってメカニズムを想定してるそうな。まぁ以前に「IQが高い人は心臓と肺の機能も高い」って研究で紹介したとおり、たんに心肺機能が高いと脳に酸素が行きやすいってのも大きいのかもしれませんが。

 

 

ちなみに、この研究だと「どれぐらい心肺機能を高めればいいの?」って疑問には答えられないんですけど、過去の研究だと「定期的な中強度の運動(moderate-to-vigorous physical activity)」には脳の神経を保護する働きがあるよーって結論が多いんで、だいたい「ちょっと息が上がるレベル」の運動を1日30分ぐらいはやっとくとよろしいのではないかと思いますな。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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