スマホは不幸の原因になってるかもだぞ!というイヤーな観察研究の話
「スマホって不幸のもとじゃない?」っておもしろい論文(1)が出てたんでメモ。
これはサンディエゴ州立大学の研究で、ざっくり要旨をまとめると、
- アメリカの若者はどんどん幸福感が減っている!
- その原因は、スマホ、タブレット、ラップトップの使いすぎが原因だ!
って感じです。研究チームのひとりは「自己愛過剰社会」で有名なジーン・トウェンギ先生ですね。というと「またデジタル害悪論か……」みたいな気分になる方も多いでしょうが、中身は結構いい感じになっております。
研究チームは「Monitoring The Future」ってデータセットを使っていて、これは13歳前後の若者110万人を1991年から追い続けたもの。全員に対して幸福度の移り変わりを尋ねまくった貴重なデータなんですな。
で、こいつを分析してなにがわかったかと言いますと、
- 90年代から2000年代にかけては、みんな自尊心や自生の満足度、幸福度はジリジリと上がり続けていた
- ところが、2012年あたりから被験者の幸福度は下がり始め、2016年まで下降を続けた
って感じ。その効果量は-.14なんでそこまで劇的な数値じゃないものの、2010年代の前半あたりに何かあったのでは?と思わせるには十分ではないかと。
そこで、研究チームは若者の幸福度を下げそうな要因を端から調べていきまして、たとえば、
- 運動量の低下
- 友人との付き合いの減少
- 読書時間の低下
- テレビ視聴時間の増加
といったところをいじってみたところ……
- デジタルデバイスの使用時間が少ない若者ほど幸福度が高い!
- デジタルデバイスの使用時間が週に10〜19時間の若者は、使用時間が短い若者より41%も不幸度が高い!
- デジタルデバイスの使用時間が週40時間を超えると不幸度は倍になる!
だったらしい。いろんな変数があってはっきりは言えないものの、とにかく全体的にはスマホを使うほど不幸になる傾向はあるんだ、と。
さらに、ひるがえってデータを見ますと、アメリカで人口の半数以上がスマホを持ち始めたのが問題の2012年前後なんだそうな。と同時にオンラインメディアの利用時間も伸びていきまして、逆に幸福度はどんどん低下していったみたい。
ちなみに、この研究では他の知見も出てまして、
- 幸福度の上昇ともっとも相関があったのは友人とのリアルでの接触時間(おなじみの結論ですな)
- 家族の失業率や年収は、さほど幸福度の低下に影響を与えていなかった(ちょっと意外)
ってあたりもおもしろいところです。
もちろん、この手の研究は交絡要因が多すぎて「デジタルデバイスは不幸の元!」とはまだ言えないレベルではあります。が、とりあえず「自分がデジタルデバイスの使用量を減らしたらどうなるだろう?」みたいなセルフ実験をするのは良いことだと思いますねー。