人間の性格は「働き方」によって良い方向に変わるのだ!というドイツの実験
「人間の性格はどこまで変えられるか?」って議論はいまも続いてまして、過去には当ブログでも、
なんて話を書いたことがありました。いまんとこの個人的な見解としては、
- 基本的な性格の設計図は遺伝で決まるが、その範囲内であれば性格は変えられる
ぐらいのとこに落ち着きそうな感じがしております。だいたい50%ぐらいは遺伝が決めるものの、それでもある程度の変化は起こせるであろう、と。
で、新しい論文(R)でも「性格は仕事で変わる!」って結論になってておもしろかったです。
これはテュービンゲン大学の研究で、2006年の時点で43の学校から16歳の学生508人を集めた上で、
- 認知機能の高さ
- 学校の成績
- どれぐらいリスクを好む傾向があるか
- ビッグファイブ
などをチェック。それから6年後の変化を追いかけた観察研究になります。
なんで16歳の学生を選んだかと言いますと、この年齢になったドイツの若者は、学校で以下のような2つのコースを選ぶように指導されるからだそうな。
- 現実社会の仕事に通用するような職業訓練を行う
- 大学受験に向けてさらに高度な教育を行う
つまり、この2グループの変化を追えば、「仕事をした人」と「仕事をしない人」の性格の違いが判断できるわけっすね。あくまで「職業訓練」ではありますが、その実態はかなり現実の仕事に近いものだそうで、ある程度の参考にはなりましょう。
というと、「職業訓練を選ぶような学生には偏りがあるのでは?」といったあたりが気になる方もいるかもですが、もちろんそのへんはコントロールされてまして、調査のスタート時点で成績や家庭環境が似た学生だけが選ばれてます。なかなか周到でよろしいですね。
では、その結果がどうだったかと言いますと、
- 職業訓練を受けた学生は、誠実性の得点が有意に高くなっていた!
- 学生の自己申告でも、「自分はより勤勉になり、昔より注意深くなった」と答える確率が上がった
だったそうです。ご存じのとおり、誠実性は「人生の成功」にもっとも関わるパーソナリティ特性でして、この数値が高いほど年収は高いし、犯罪率も低いし、長生きする確率も高いって傾向が、複数のデータでハッキリ示されてるんですよね。実にすばらしい能力なわけです。
研究チームいわく、
このような変化は、「新たな社会的役割」と「特定の環境特性」という2つの理由が原因で起きると考えられる。これら2つの原因は、被験者に特定の態度と行動を要求するからだ。
とのこと。以前にこのブログでも「特定のことにコミットし続ければ性格は変わる」ってな話を書きましたけど、そのような環境を職業訓練が用意してくれたんだってことですな。
もちろん学問でもコミットし続ければ良い方向に性格は変わると思いますが、やっぱ社会的な仕事は強制力が違いますからねぇ。そのぶんだけ性格にも影響が出やすいんでしょう。
もっとも、だからといって職業訓練が良いことづくめって話ではなくて、
- 職業訓練を受けた学生は、科学やビジネスへの興味を失っていた!
なんて結果も出てたりします。この結果だけを見ると、やっぱ教育ってのは、個人の興味をかきたててくれる作用が大きいのかなぁって気がしてきますね。
ということで、最後に研究チームのコメントでまとめ。
今回の研究は、「性格は不変ではない」という考え方に新たなエビデンスを付加した。性格は人生を通じて変化していくものだ。
その変化はあくまで少しずつだが、それでも十分な意味がある。あなたの人生の選択によって、性格は変わるのだ。