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野菜とフルーツがアンチエイジングに良いのは当たり前だが、具体的にどれぐらい食べればOKなのか?を調べたメタ分析の話



日本人が死ぬ原因の第2位といえば「心疾患」。ご存じのとおり心臓や血管にダメージが出ちゃう病気で、世界中でも主な死因になってたりします。


この問題を解決する特効薬はないんですが、なかでもよく言われるのが「野菜とフルーツを食べようねー」って考え方でしょう。野菜とフルーツが体にいいのは当たり前ですからね。


ただ、ここでまだよくわかってなかったのが、

  • 実際に野菜とフルーツをどれぐらい食べると、心疾患のリスクは改善するの?

ってポイントです。野菜とフルーツが良いのは当然だけど、具体的にどれぐらい食べたらどれぐらい心臓と血管に影響があるのか?ってところですね。意外にも、ここらへんの問題ってまだしっかりした研究がなかったりするんですよね(もちろん大規模な観察研究はあるんだけど、RCTなどの結果もふくめて大きな結論を出したものがない)。


というわけで、近ごろシンガポール国立大学が「野菜とフルーツをどれぐらい食べりゃいいの?」というメタ分析(R)をやってくれました。


ざっと文献の概要をまとめておくと、

  • 18歳以上の参加者を対象に、野菜とフルーツの摂取量を1日3回以上増やしたランダム化比較試験などを82件ほど扱っている
  • 野菜とフルーツを増量したら、中性脂肪、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、最高血圧、最低血圧にどういう影響が出るかをメインに調べた

みたいになってます。事前登録は行われてませんが、全体のデータは「質が高い」って判定が出てましてよろしいのではないでしょうか(バイアスのリスクも許容できるレベルだし)。


で、分析の結果がどうだったかと言いますと、こんな感じです。

  • 1日に3サービング以上の野菜またはフルーツを食べると、中性脂肪が大体〜9mg/dL下がり、最低血圧が〜大体2mmHgほど下がる

  • 野菜とフルーツの量が少ない人と多い人を比べると、中性脂肪には8.9 mg/dLの違いが出る

  • 1日に3サービング以上の野菜またはフルーツを食べると、LDL、HDL、総コレステロールにも統計的に有意な影響が見られた

  • 1日5サービング以上の野菜またはフルーツによる影響を検討した分析では、目立ったメリットがあるかどうかはよくわからなかった

ここでいう「サービング」はアメリカでよく使われる食事量の目安で、だいたい以下のようになります。

  • 生の葉野菜の場合:1サービング=1カップ(240ml)
  • 調理した葉野菜、葉野菜以外の野菜:1サービング=1/2カップ(120ml)
  • りんご、バナナ、オレンジなど:1サービング=中1個
  • 缶入りフルーツ:1サービング=1/2カップ(120ml)
  • 調理した豆類:1サービング=1〜1 1/2カップ(240ml〜360ml)

といってもわかりにくいかもなんで、視覚的に確かめたい場合は「popsugar」さんの「野菜の1サービングはこれぐらいの量だよー写真集」などをチェックしてみるといいかもしれません。実際に見てみるとわかりますが、1日3サービングぐらいなら楽勝で達成できそうな印象っすね。


ちなみに、この研究が示した「拡張期血圧が約2 mmHg低下する」ってのがどれぐらいのレベルかと言いますと、冠動脈心疾患のリスクが約9%下がる感じでして、降圧剤を使うのとほぼ同じぐらいの効果だったりします。こりゃあなかなか凄いんじゃないでしょうか。


個人的には5サービング以上の果物と野菜に明らかなメリットが出なかったのが意外でしたが、まぁライフスタイルによっても用量の効果は違ってきそうな気もしております。とにかく1日3サービングでOKってのは、気が楽になる感じでいいですな。

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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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