今週末の小ネタ:オシャレは女の戦闘服、フェイクニュース拡散、『のどまで出かかってる!』状態とギャンブル
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。 新型コロナに関する新しいデータがいくつか出てたので、今回はそこらへんのまとめなど。
「オシャレと化粧は女の戦闘服」は本当か?問題
「オシャレと化粧は女の戦闘服」などと申しますが、このフレーズを裏付けるようなデータ(R)が出ておりました。
これはニューサウスウェールズ大学などの研究でして、「ファッションや化粧は女性の心にどんな影響を与えるか?」ってポイントを調べたものです。どんなデザインの実験だったかと言いますと、まずは158人の女性を2つのグループに割り当ててます。
- 自分が好きな服、靴、宝石、化粧品、アクセサリーなどを実験室に持ち込む
- 自宅でリラックスしたいときに着るようなゆるい服を実験室に持ち込む
その上で、それぞれのグループが持ち込んだ衣装を身につけてもらい、
- 自己主張のレベル
- 幸福感
- 自分への好意レベル
といったポイントをチェックしたんだそうな。すると、両グループにはハッキリした差が出まして、
- 好きな衣装を身につけた女性は、自分自身をより好意的に見ることき、自己主張のレベルも高かった
って結果だったんですよ。まさにオシャレは女の戦闘服ですな。
ちなみに、この実験でいう自己主張ってのは、
- 欠陥がある靴を返品するために靴屋にクレームをつけるかどうか
- ヘアサロンに電話して、不明確な支払いなについて説明を求められるかどうか
- 車の整備士から届いた請求書に異議を唱えられるか
などの状況にどう対応するかで判断してます。つい面倒くさがって後回しにしがちな日常のトラブルにも、明確な意志をもって処理できるかどうかを調べたわけですね。
まぁ過去には「スーツを着た男は力強い気分になる」なんて報告(R)もありますんで、ファッションによって気分が変わるのは全人類的な現象なのかもしれません。なんか明確な意思を表示しなきゃいけない場面では、男女を問わずガッツリ決めてみるのもアリかもですな。
フェイクニュースを見れば見るほど拡散したくなっちゃう問題
ここ数年フェイクニュースに関する研究が増えてまして、
みたいな話があったりするわけです。みんな「俺はフェイクニュースには引っかからない!」と思ってるけど、実際に誤情報から身を守るのは想像以上に難しいってのがいまの結論じゃないかと。
でもって新たに出た論文(R)もフェイクニュース関連で、まず結論から書いておくと、
- フェイクニュースを見れば見るほど、多くの人はさらに拡散したくなる!
みたいな感じです。これはロンドン・ビジネス・スクールなどの調査で、138人の男女にこんな実験をしてます。
- フェイクニュースの見出しを6つ見てもらう(「大統領選の夜にヒラリーは酒でベロベロに!」みたいなやつ)
- フェイクの見出しをそれぞれ4回ずつ見たら、しばし間を置いたあとで「先ほど見たニュースは全てフェイクです」と伝えらえれる
- その後、さらに今まで見たことがないニュースの見出しを6つ見てもらい、「どのニュースが面白いか?」「どれぐらい拡散したいか?」などを尋ねる
みたいになってます。つまり研究チームは、いかなる誤情報だろうが、何度も目にするだけで周囲に広めたくなっちゃうんじゃないの?と考えたわけです。
結果はチームの予想どおりで、被験者がどんな反応を示したかと言いますと、
- フェイクニュースを何度も見た者は、その情報への親近感がアップしていた影響していることが示唆された
- くり返し見たニュースは新たに見たニュースよりも「倫理的である」と評価され、周囲に拡散される可能性が高かった
だったそうです。ここではさらに3つの実験が行われてるんですが、だいたいの結論は同じで、たいていの人はよく知った情報ほど拡散する傾向があったらしいんですね。
なじみのフェイクニュースほど拡散したくなる理由は簡単で、
- すでに知っている情報は脳が簡単に処理できる
- 人間の脳は簡単に理解できるものを好むので、何度も見たニュースほど好きになる
- ニュースに親近感がわいたおかげで、その情報を「なんか真実っぽい」と判断する
- 拡散したくなる!
みたいな流れです。何度も遭遇したものごとに好意を抱くのは人間の基本システムなんで、これはどうしようもないところなんすよね。いまんとこは、このような限界を肝に銘じておくしかない気が。
『のどまで出かかってる!』状態の人ほどギャンブルをしやすくなる
「あの映画の俳優って誰っけ? のどまで出かかってるんだけどなぁ……」みたいな体験は誰にでもありましょう。私もこのあいだジェイソン・ステイサムの名前が30分ぐらい思い出せず難儀しました。
で、近ごろ読んだ文献(R)では、「『のどまで出かかってる!』状態に入った人はリスクを取りやすくなる」って話になってておもしろかったです。これはコロラド州立大学などの調査で、19人の学生に「オズの魔法使いのドロシーの犬の名前は何ですか?」みたいなクイズを80問ほど出して、参加者を「のどまで出かかってる状態」に誘導。その後、「コイントスのギャンブルをしませんか?」と持ちかけてみたんだそうな。
なんでこんな実験をしたかというと、過去の研究により「のどまで出かかってる状態」に入った人はポジティブな気分になることがわかってたからです。なんでも「ここまで出てる!」って感覚が興奮をもたらし、この状態を脳が「ポジティブになった」と勘違いするんだそうな。おもしろいもんですねぇ。
と同時に、同じく先行研究では「人間は気分が浮き上がったときにギャンブルをしやすくなる」って傾向も確認されてたりします。ポジティブな感覚のせいで気が大きくなり、つい危険なギャンブルに手を出してしまう気持ちは、誰でもなんとなくわかるんじゃないでしょうか。つまり、研究チームは「のどまで出かかってる状態に入る」→「ポジティブな気分になる」→「リスクを取る気になる」って流れを想定してるわけっすね。
その結果は果たして予想どおりで、「のどまで出かかってる状態」に入った人ほど「コイントスをしたい!」と答える割合が高くなったとのこと。なんか思いがけない結論ですけど、言われてみると「ありそうな話かな〜」とか思いますね。
今回は「のどまで出かかってる状態」についての調査でしたが、ポジティブな気分でリスク性向が高まるのは事実なんで、そこら辺は気をつけておきたいところっすな。