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人生は辛い。それゆえに、人は歳を取るごとに自然に「マインドフルネス」になっていくのだ!という観察研究の話

 


マインドフルネスはいいよー」みたいな話はしょっちゅう書いてまして、私も日がな瞑想を続けてたりするわけです。まぁ実際のところ、マインドフルネスの効能についてはまだ議論があるところなんですけど、個人的には「プラセボでもいいから続けとくかー」ぐらいの気持ちでやってます。


で、新しいデータ(R)もマインドフルネス関連で、ざっくりした結論から言うと、

  • 人間は歳を取ると自動的にマインドフルネスになっていくんじゃない?

みたいな話です。これはフリンダース大学などの研究で、18歳〜86歳までの男女623人に「どれぐらいマインドフルネスに暮らせてますか?」を尋ねたものです。この調査におけるマインドフルネスの定義はどんなものかと言いますと、

  • 現在の瞬間に注意を払いながら暮らすことができているか?
  • ものごとを簡単にジャッジしない、または自分の判断にこだわらず客観的に見ることができるか?
  • 身体の内部にどのような感覚が起きているかどうかを察知できているか?
  • よきにせよ悪しきにせよ、目の前の現実を受け入れることができるか?
  • 物や人、概念などに執着することなく人生を歩むことができるか?
  • 自分の思考や欲望に巻き込まれるに距離を持って接することができるか?

みたいな感じです。いずれもひとつひとつが深い考え方ですが、ここは深入りせずに「マインドフルネス=なにも判断せず”いまここ”にいられるスキル」ぐらいに大まかに捉えていただければと。
でもって、みんなの回答をひっくるめたらどんな傾向があきらかになったかと言いますと、

  • だいたい40歳を過ぎたあたりからマインドフルネスのレベルが上がり、それと同時に幸福感も高くなっていく

  • 歳を取るとどうしても体を壊してストレスが高まりがちだが、マインドフルネスのスキルがあるほど苦痛のプロテクトになるし、ストレスからの回復も高まる

というわけで、どうも歳を取れば取るほどマインドフルネス度があがり、自然と幸福度も上がっていくかもしんないらしい。研究チームいわく、

予想されたように、いまの瞬間に注意を向ける能力、判断をしない能力、ものごとを受容できる能力、物や人に執着しない能力、および自分の思考と感情に巻き込まれない能力は、いずれも加齢と相関していた。

要するに、これらの能力は、時間や人生経験のおかげで自然に発達していくものである可能性を示唆している。

マインドフルネスが幸福をもたらす重要性は、年齢を重ねるごとに高まるかもしれない。なかでも現在の瞬間に集中する能力や、善悪の判断をせずに体験を受け入れる能力などが上がりやすいようだ。

これらの特性は、加齢にともなう問題に対処し、ポジティブな感情を生み出すのに役立つ。

とのこと。確かに「歳を取ると人生が楽になる」みたいな話はよく聞くところで、私も「そうだよなー」とか思ってたんですが、それはマインドフルネスが向上してるからなんすかね。


それでは、なんで歳を取るとマインドフルネスになるのかと言うと、

長い人生の中では、社会的関係や職業上のアイデンティティ、身体的健康などは次々と変わっていく。このような経験を重ね、人生の変化を理解することによって、自分の思考や感情から距離を置く能力が発達するのだと理論的には考えられる。

人生が中高年に差しかかったあたりでは、自分の思考や感情から距離を取り、より広く客観的な視点を保つことができる能力は、目標が達成できない事実を認めたることによる負の影響をやわらげ、また別の目標に向かって進むための調節機能を果たしていると考えられる。

だそうです。すごく簡単に言えば、歳を取るほど「人生はままならんなー」って事実が身に染みるので、そのぶんだけ自己への執着が薄れていくのだってことですね。そういえば、私も40代を過ぎたあたりからサンクコストバイアスには滅法強くなりまして、これも歳をとったせいなのかなー、とか(そのせいで人生への情熱もわきにくくなりましたが)。

中年期に差しかかった人間は、粘り強く目標を追求することに集中していた若い時期を過ぎ、それまで大切にしていた目標が達成できないことに気づくことが多い。(中略)その意味で、実現不可能なゴールを手放せる適応力は非常に大事になる。

例えば、子供を持つという目標を果たせていない高齢の男女は、いったんそのゴールをあきらめて代替目標に再チャレンジしたほうが、ネガティブな感情が低下し、ポジティブな感情が高くなったとの報告もある。

ってことで、人生はいつまでも変化と挫折の連続なので、歳を取るにつれてマインドフルネスを発達させないとやってらんないんだ、と。この結果を見て、個人的にはあらためて「さらにマインドフルネスを鍛えるぞ!」って気分になりましたねー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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