筋肉を限界まで動かす「フルロム」のトレーニングは本当に意味があるのか?という系統的レビューのお話
筋トレの世界でよくある議論に「フルロムでやるべきかどうか?」ってのがあります。
フルロム(Full ROM)ってのは「関節が動く範囲を限界まで使ってやる筋トレ」のことで、例えばスクワットだったら、
- フルロム=太ももの裏とふくらはぎがくっつくぐらいまでしゃがむ
- それ以外=ヒザの角度が90度ぐらいになるまでしゃがむ
みたいな違いがありまして、一般的には「フルロムの方が運動量が多いから良い!」と言われてたりします。
それでは、「実際のところフルロムは役に立つの?」ってことで、そこらへんを調べた系統的レビュー(R)が出ておりました。過去のフルロム研究から質が高めな6件を選んで135人分のデータをまとめたもので、文献の採用基準はこんな感じです。
- MRIなどを使って筋肉への影響をちゃんとチェックしている
- 少なくとも6週間の筋トレを継続している
- 被験者が健康な成人である
結果、選ばれた6件のうち5つは筋トレ歴がない人が対象で、4件が下半身の筋肉を、 2件は上半身の筋肉を肥大をチェックしております。平均研究期間は10.5週間ぐらいで、被験者の大半は男性だったみたい(女性8人ぐらいしかいない)。系統的レビューとしてはかなりサンプル数が少なめですけど、研究例がないんでしかたないですね。
でもって、最終的にどんな傾向が確認されたのかと言いますと、まずは各研究の結果を総まとめにしてみましょう。
- ダンベルカールの効果はフルロムのほうが筋肉が増えてた(+9.52% vs +7.37%)
- スクワットの効果もフルロムの勝ちだった(+2.0 ± 0.8% vs +1.5 ± 0.9%)。もうひとつのスクワット 研究も似たような感じ
- 下半身のいろいろなエクササイズを比べてもフルロムの勝ちだった(+33.80% vs. +19%)
- トライセップエクステンションはフルロムの負けだった(+28.2 ± 10.9% vs .+48.7 ± 14.5%)
- ニーエクステンションはフルロムの勝ちだった(+7.6 ± 1.6% vs. +6.7 ± 3.0%)
って感じで、4つの研究は「フルロムの勝ち!」って結論が出てるんだけど、トライエクステンションについては可動域が短いほうが成果が出てたりします。一部に例外はありつつも、全体的に見ればやっぱフルロムの方がいいんだなーって印象ですね。
まぁそれもそのはずで、筋肉ってのは伸びた状態にある時に張力が高くなりまして、おかげで筋肉の増加につながるシグナルが増幅されるんですよ。これは昔からよく言われてきたことなんで、まぁ正しかろうと思うわけです。
ということで、研究チームの結論をまとめてみると以下のようになります。
- おそらく下半身の筋肉のほうがフルロムに反応しやすいと思われるので、スクワットやニーエクステンションなどはガッツリ足を伸ばすべし
- ただし筋肉の可動域は人によってかなり違うんで、無理のない範囲で動かすべし
- 上半身についてはよくわからないので、実践的な推測は難しい(ここらへんはお好みでどーぞ)
- 体幹の筋肉についてもデータ不足なのでよくわからん
こうして見ると、世間で言われてるほどフルロムの優位性って確認されてないんだなーって感じもしますね。なんか困っちゃいますが、当面の考え方としては、
- 明確な反証が出ない限り、すべてのトレーニングをフルロムで行っておく!
ぐらいに思っておけばいいんじゃないでしょうか。「この筋肉にはフルロムは効かなそうだから…‥…」とか考えだすとドツボにハマりそうなんで。