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学問の世界の辛いことを調べたら、一般社会と特に変わらなかったぞ!という話

 

  

学問の世界は辛い!」ってな内容の調査(R)がおもしろかったんでメモ。これは各大学の学者たちを集めて「仕事で辛いことはなんですか?」と尋ねまくったインタビュー集みたいなものでして、研究チームいわく、

 

アカデミックな人生は、学習、興奮、発見に満ちている。しかし、いっぽうで学者は、論文を何度もリジェクトされたり、インポスター・シンドロームになったり、燃え尽き症候群になったりすることもある。キャリアのさまざまな時点でプロとしての様々な課題に直面するわけだ。

 

こうしたネガティブな体験が公に語られることはほとんどなく、挫折したのは自分だけだと思い込んでいる人たちに孤独感や孤立感をもたらす。

 

と申しておられます。拒否や燃え尽きなんてのはどの職業でもあるけれど、学者の世界はとりわけ外界から孤立してるんじゃないのか?って話ですね。まぁそうかも。

 

 

では、具体的に学者さんたちがどのような対策を講じているかというと、以下のようになります。

 

たび重なる挫折問題

論文の掲載が拒否されたり、大学の就職を断られたりと、学者の世界でも希望がかなわないケースはよくあること。しかし、ここで挫折にこだわってばかりだとメンタルが死ぬので、ミシガン大学の先生などは「闇の業績書を作ってシェアしようぜ!」って提案をしておられます。

 

 

闇の業績書ってのは、過去に味わった失敗や拒否の経験をすべて書き込んだペーパーのことで、例えば私でしたら、

 

  • 光の業績書=これまで6冊の自著を出し、すべて増刷している
  • 闇の業績書=会社員時代にライティングした本が大コケ連発。なかには返品率80%を叩き出したものがいくつかある。血を吐くかと思った

 

みたいになりましょう。あらためて嫌な記憶がよみがえってヘコみましたが、本論文では「闇の業績書により学者たちが自らちの進歩を認識する助けになる」って辺りが強調されてました。一般の企業なんかでも、会社員が飲み会で自分の挫折を語りあうなんてことがありますけど、これをちゃんとシステム化したらいいんじゃない?って提案っすね。これはライター界でも導入して欲しい…‥。

 

 

 

インポスター・シンドローム

インポスター・シンドロームは、はた目には成功してるのに、本人は「誰かをダマしてしまった…」と思いこんじゃう傾向のことで、別名「詐欺師症候群」と呼ばれております。これまたアカデミズム以外の世界でも一般的ですね。

 

 

この問題については「外部コミュニティにサポートを求める」って解決策などが提案されてるものの、やはりパキッとした対策は難しいようで、このインタビューのなかでは、

 

  • 「学問の世界にはカッチリとした決まった手法がある!」のような思い込みを捨てるのがいいかなぁ……
  • 詐欺師症候群は高い基準に固執することから生じるので、他との比較はやめたほうがいいかなぁ‥…
  • 現代では「キャリアの成功」についてのイメージが固定化してるんで(大学で終身在職権をゲットだ!みたいな)、もっと幅広いイメージが作られるといいなぁ……

 

みたいな話になっておりました。やっぱ詐欺師症候群の対策って難しいみたいっすね。

 

 

ちなみに、マサチューセッツ大学の先生などは、自身が経験した詐欺師症候群について、

 

自分にふさわしいと思えないレベルで私の業績に感謝されることがあり、他社がこちらの仕事に興味を示したときには驚いてしまう。

 

みたいなコメントをしてまして、同じくインポスター・シンドローム気味な私は「うわー!わかる!」とか思いました。

 

 

 

燃え尽き症候群

テキサス大学の先生いわく、

 

燃え尽き症候群で味わう感覚は、単ある疲労や消耗とは異なる。燃え尽きに襲われた人々は常に何かに圧倒されている感覚を抱き、「どうしていいかわからない……」 と感じさせる。この現象は、主にコントロール感覚の欠如から生じるものだ。

 

とのこと。幸いにも私は燃え尽き症候群にはなったことがないのですが、「圧倒されて何もできないような感覚」と説明されるとうなづく面がありますね。

 

 

この問題の対策については、

 

  • そもそもバーンアウトは競争社会であれば誰にでも起きる一般的な経験なので、まずは「燃え尽きを感じているのは自分だけではない」と認識するのが克服の一歩になる
  • 仕事を思い出すような要素が存在しない「物理的な空間」を用意して、しばらくそこで時間を過ごすのも助けになる
  • 睡眠不足とバーンアウトには大きな関係があるので、とにかく休暇が大事
  • 現代では「個の達成」が優先されすぎるきらいがあるので、競争よりも協働を重視するカルチャーを作る

 

といったものが上がっておりました。「仕事を思い出す要素がない物理空間」については意識したことがなかったんで、これはちょっと気にしてみるか‥‥。

 

 

まぁいずれにせよ、アカデミズムの悩みも一般の会社員と変わらないよなーってことで、「みんな似たような問題に苦しんでいる!」ってのを知れるのがこの論文を読む一番のメリットではないかと思ったりしました。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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