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今週半ばの小ネタ:片頭痛と運動、高齢者の睡眠改善には何が良いか、新型コロナの不安と睡眠不足には漸進的筋弛緩法

Summary

ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

        

 

 

片頭痛をやわらげるための運動ガイドライン

頭痛の原因は多々ありすぎて「これをやれ!」とは言えない状況なんですが、新たに「片頭痛なら運動だ!」と主張する論文(R)が出ておりました。

 

 

これは4,879人の頭痛患者を集めた調査でして、みんなにアンケートを取って、

 

  1. 週ごとにどれぐらい運動してるか?

  2. どれぐらい頭痛があるか?

  3. うつや不安のレベルはどれぐらいか?

 

ってあたりを調べて、運動量と頭痛の関係をチェックしたんだそうな。参加者のうち7割ぐらいは慢性頭痛に悩んでいて、月に15回以上の発作があったとのこと。

 

 

すると、運動と頭痛にはやっぱり明確な関係がありまして、

 

  • 運動をほとんどしない人たちを見ると、月あたりの頭痛が25日以上ある人の割合は48%だった

  • 運動をよくしていた人たちを見ると、月あたりの頭痛が25日以上ある人の割合は28%だった

 

ということで、結構な違いが見られたらしい。観察研究なので「頭痛がない人ほど運動するのでは?」って疑念は振り払えないわけですが、運動をよくしてる人たちには他の違いも確認されていて、

 

  • 運動をよくする人は、うつや不安レベルが低く、睡眠に悩んでいる確率も低かった

 

との結果だったそうです。メンタル睡眠はどちらも運動で改善するのは有名ですし、同時にどちらも頭痛のトリガーとして有名なので、運動のおかげで頭痛が改善する可能性は十分あると言えましょう。

 

 

では、具体的にどれぐらい運動すればいいのかと言いますと、この研究では、

 

  • 週に150分以上の軽い運動をしよう!(早歩きとかジョギングとか)

 

ってあたりが目安になってまして、要はWHOの推奨運動量を守ろう!って話ですね。頭痛にお悩みの方は気をつけていただくといいかもしれません。

 

 

 

高齢者の睡眠改善には何が良いのか?のメタ分析

高齢者には睡眠の問題が多い!ということで、「薬物を除いて不眠の改善に役立つ手法って何があるの?」ってのを調べたネットワークメタ分析(R)が出ておりました。

 

 

これはランダム化比較試験(RCT)を対象としたメタ分析で,不眠症の高齢者(60歳以上)に対する睡眠改善テクの有効性と安全性を評価しております。合計28のRCTから2,391人のデータをまとめてくれてて、なかなか参考になるのではないかと。

 

 

では、結果から見てみましょうー。

 

  • 睡眠の改善度(PSQI)スコアが高いのは、行動療法、ベンゾジアゼピン系薬剤と認知行動療法(CBT)の併用、鍼灸治療とベンゾジアゼピン系薬剤の併用、CBTの順。いずれも、何もしないときと比べて有意な改善が見られた

 

  • 鍼治療とリラクゼーションの併用、ベンゾジアゼピン系薬剤と運動の併用、メラトニン、気功については、有意な効果はなかった

 

ってことで、全体的には認知行動療系のメンタル改善が効きそうっすね。著者らは最初は「薬以外の方法を評価する」としてたんですが、結果にはベンゾジアゼピン系薬剤もふくむことにしたそうです。まぁなんだかんだで薬剤の効果は重要ですからね。

 

 

そんなわけで、高齢で不眠にお悩みの方は、認知系の療法を試すのも手かもしれません。

 

 

 

新型コロナの不安と睡眠不足には漸進的筋弛緩法が良い?

新型コロナによる不安感で、世界的に不眠の人が増えたと言われる昨今。が、最近のデータ(R)では、「COVID-19患者の睡眠障害に漸進的筋弛緩法が効くぞ!」って話になっておりました。

 

 

漸進的筋弛緩法はリラクゼーションテクニックの基本中の基本で、「足の筋肉に力を入れて抜く→腕に力を入れて抜く」みたいな手法を繰り返して、全身を深いリラックスに導く手法であります。ド定番な上に実証研究も多いので、試してみて損はないテクニックのひとつでしょう。

 

 

さて、今回の研究では、COVID-19で入院している73人の参加者を集め、漸進的筋弛緩法を行うグループと行わないグループに分類。漸進的筋弛緩法グループは、1回のセッション(約20~30分)を1日2回ずつ5日間続けて行ったそうな。

 


でもって、特定の尺度で不安感と一般的な睡眠の質を調べたところ、漸進的筋弛緩法をやったグループは不安が激しく減少し、睡眠の質も改善されたんだそうな。まぁ、結果欄に介入後の不安スコアが示されてないので、バイアスの臭いも少しするんですけど、漸進的筋弛緩法の効果は割と確立されてますし、副作用の報告もほとんどない技法なので、主治医に相談のうえ試すのはありでしょう。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。