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今週半ばの小ネタ:怒りを抑えるには?MINDは脳に効く?太極拳は脳に効く?

Summary

ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

   

 

 

怒りを抑えるにはどの認知行動療法がベスト?

怒りが止まらない!という人には認知行動療法が良いのは有名な話。アンガーマネージメントの手法にも、認知行動療法のエッセンスがかなり入っております。

 

 

が、認知行動療法といってもいろんな流派があるわけで、それぞれに強調するポイントが違ってたりします。例えば、ざっくり言うと、

 

  • CBTはより能動的で、行動をうまくコントロールする方法に焦点を当てる

  • ACTはより受動的で、直感的で不適切な行動をせずに、感情にうまく気づく方法を教える

 

みたいな違いがあったりして、問題によって使い分けていくのが重要だったりするんですよ。



では、アンガーマネージメントにはどちらが有効か?ってことで、7週間のRCT(R)が行われておりました。これは攻撃性の判定テストで平均以上を取った男子学生30名(22~28歳)を対象にしたもので、

 

  • 週1回90分のACT系グループセラピーに参加する

  • 週1回90分のCBT系グループセラピーに参加する

 

って感じに分けた上で、参加者の攻撃性がどう変化したかをチェックしてます(Perry Aggression Questionnaireで測定)。すると、セラピーの種類によって結果が微妙に異なりまして、

 

  • ACTは、CBTと比べて、参加者の攻撃性スコアを低下させる効果がわずかに高かった(18.8% vs. 16.8%)
  • ACTとCBTは、参加者のコミュニケーションスタイルの改善に同程度の効果があった

 

だったそうです。まぁ実験を見ればおわかりのとおり、小規模な調査だし、対照群もふくんでいないんで、怒りの問題を抱える男性に一般化できるかは謎です。個人的にはACTの考え方は好きなので、自分でも実践は続けていこうと思ってますが。

 

 

 

ヤバい集中力で取り上げたMIND食事法の実力やいかに?

ヤバい集中力」ではMINDっていう食事法を紹介してまして、「脳の働きを保つのに良いよー」みたいな話をしてます。簡単にいえば、

 

  • 緑の葉野菜、その他の野菜、ナッツ類、ベリー類、豆類、全粒穀物、魚、鶏肉、オリーブオイル、ワインなどを豊富に摂る!
  • 赤身の肉、バターやスティックマーガリン、チーズ、菓子パン、スイーツ、揚げ物やファストフードは避ける!

 

みたいな食事法のことで、地中海食にかなり近い内容になってます。いかにも脳に良さそうな感じではありますね。

 

 

では、このMINDは認知機能にどれぐらい良いのか?ってことで、新たに高齢者をメインにしたメタ分析(R)が行われておりました。この研究は、13件の関連研究(コホート9件、クロスセクション3件、RCT1件)をまとめたもので、

 

  • みんなの食事の内容をチェック

  • その食事がどれぐらいMINDの推奨内容に近いかをチェック

 

といった感じで調べた上で、全体的な認知スコアの変化を評価してます。すべてのデータをまとめた結果がどうだったかと言いますと、

 

  • 認知スコアを評価した研究の78%で、MINDにはポジティブな効果が認められた

  • MINDのスコアが1ポイント上昇するごとに、記憶の低下に悩む確率が14%減少する

    MINDは、他の食事療法(地中海式、バルト海式、ベジタリアン、DASH食など)と比べて、認知機能の維持に強い関連があった

 

だったそうです。もちろん、ここにはRCTがひとつしかふくまれてないので、この結果はあくまで因果関係ではなく相関関係でしかないのでご注意ください。

 

 

が、そうは言っても、他の有名な食事法よりも強い関係が認められたのは心強い話ですし、MINDが体に良いのは確実ですから、老いも若きもお試しいただくといいんじゃないでしょうか。私も最近の食事はかなりMINDに近い感じにはなっております。

 

 

 

太極拳は認知機能を改善できるか?

太極拳って割と頭脳に効くかもなーって話は、昔からよくあるわけです。ヨガと同じように、太極拳も自分の肉体の動きに意識を向け続けるため、脳が刺激を受けやすいと言われてるんですな。

 

 

そこで新しいデータ(R)は、「太極拳で高齢者(65歳以上)の認知機能はどうなるの?」って問題について調べてくれておりました。これは軽度認知障害(MCI)の男女539人を対象とした7つの臨床研究をまとめたメタ分析でして、

 

  • 2つの研究では、太極拳のうつ病や身体活動への効果を評価

  • 1つの研究では、認知機能に関連するバイオマーカーを評価
  • 総合的な認知機能、記憶と学習、実行機能、視空間能力なども評価

 

みたいになってます。軽度認知障害ってのは、記憶力、注意力、認知機能が下がっちゃう問題で、歳をとって起きる認知機能の低下と認知症の真ん中ぐらいに当たります。高齢者の10~25%がかかる症状で、そのうちの3分の1が12~24カ月以内に認知症を発症すると考えられてるんですな。

 

 

で、すべてのデータをまとめたら、結果はこんな感じになりました。

 

  • 太極拳は、認知機能の4つの能力(記憶、学習、実行機能、視空間能力)すべてを改善した

  • 太極拳は身体活動を増加させたが、うつ病には影響しなかった
  • Wechsler Memory Scale(0~75の範囲)で記憶と学習能力の変化を調べた3つの研究では、全体的に0.2~1.5ポイントの改善が見られた
  • 認知機能に関するバイオマーカーを調べた1件の研究では、学習や記憶に欠かせない分子のレベルが1.4倍高かった。

 

ってことで、どうやら高齢の方にとって太極拳はかなり良さそうな雰囲気っすね。まー全体的に介入期間(2-12ヶ月)、セッション時間(20-90分)、練習頻度(2-3x/週)にだいぶ差があるので、「これが結論!」とまでは言えないレベルですけど、高齢の方は試す価値があるでしょうね。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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