2021年7月に読んでおもしろかった6冊の本
月イチペースでやっております、「今月おもしろかった本」の2021年7月版です! 今月は新刊「無(最高の状態)」の進行で死んでたり、引越しがあったり、猫が病気になったりでバタバタしてまして、読めた本は22冊ぐらい。なかでも良かった6冊をまとめてみます。
カラー図解 アメリカ版 新・大学生物学の教科書 第2巻
先月も紹介した生物学の超基本書の2巻目です。本巻は私が苦手な「分子遺伝学」がテーマで、1巻の「細胞生物学」よりもヒーヒー言いながら勉強させていただきました。
内容の高度さはもちろん、この新版では「このセクションで考えるべき問い」や「本章で学ぶべきポイントの語り直し」みたいな細かいガイドラインが増えていて、「うおー、メタ認知読書がやりやすいぜ!」とか思いながら読めるのがいいですね。こういった細かなポイントでモチベーションって変わるんすよね。
進化でわかる人間行動の事典
「なぜ人間は遊ぶの?」「なぜ人間は結婚するの?」「なぜ人間は噂話をするの?」といった根本的な問題を43項目ほど選んで、すべての進化的な原因を教えてくれる本。各項目ごとに「機能」「進化史」「メカニズム」といった区分けをしつつ、
- いまんとこどのような仮説があるのか?
- どの仮説がもっとも支持されているのか?
といったあたりを簡潔にまとめてくれていて、個人的に今後の仕事にめちゃくちゃ役立ちそうな感じでした。まー、全体的にエンタメ要素はないし、かなり高価な一冊なので、よほど進化心理学に興味がある人じゃないとオススメできませんが……。
誰がために医師はいる――クスリとヒトの現代論
薬物依存症の研究で有名な松本俊彦先生が、ハードすぎる臨床の日々をつづったエッセイ。「なんで自殺などしようと思ったのか?」と笑って退院した患者がその後ですぐに命を絶ったとか、「飛び降り自殺をする患者の多くは、直前に人間の生活が垣間見える風景を求める」とか、グッとくるエピソードばかりで泣きそうになりました。
その上で、全体的には「依存は”生きづらさ”の問題なのだから、誰かに依存させる社会を作らねば!」って問題意識が貫かれていて、こちらも感動的。現代において「依存」は重要なキーワードなんで、どのような考え方があるのかを知るだけでも意味があるのではないかと。
ROCKONOMICS 経済はロックに学べ!
著者のクルーガー先生はオバマ政権の経済諮問もつとめた人で、旧作「テロの経済学」も非常に勉強になる一冊でありました。本作はクルーガー先生の遺作で、「モノが売れない時代に何を売る?」とか「売れる人と売れない人は何が違う?」みたいな普遍的なテーマを、音楽業界を舞台に教えてくれる内容になっております。
あくまで音楽業界の変化がベースながら、ここで得られる知見は他の業態にも広く当てはまりますんで、「これからの稼ぎ方とは?」みたいな下世話な興味で読んでも得るところはあるはず。それ以外にも、レディオヘッドのネット販売実験とか、ストリーミングによる音楽界の復活といった小ネタも楽しく、ちょっと洋楽に興味がある方ならおもしろく読めるんじゃないでしょうか(出てくるアーティストはかなりオッサン向けですけど)。
レヴィット ミクロ経済学 発展編
「ヤバい経済学」でおなじみレヴィット先生が手がけたミクロ経済学の教科書。中級レベルのテキストなので「ミクロ経済学?何それ?」な方が読むと大変なことになると思いますが、初学者でもていねいに数式を追っていけばしっかり理解できるように噛み砕かれてます。
「ヤバい経済学」ほどではないにせよ、レヴィット節もそこかしこにみられまして、「この知見を実生活でいかに使うか?」の例が楽しいです。中級テキストって無味乾燥なものが多いですからねぇ……。
いきなりここから入るのは辛い!という場合は、クルーグマン先生の「クルーグマンミクロ経済学」あたりからどうぞー。
楽園への道
ラテンアメリカ文学の超有名人、バルガス=リョサの2003年作品。南米文学といえば読むのにカロリーを使うケースが多く、「緑の家」を読んだ時も爆死寸前まで追い込まれた私ですが、これはかなり読みやすくて助かりました。
お話としては、画家のゴーギャンと革命家のフローラが、それぞれのユートピアを求めて右往左往する様子を500ページにわたって描いたもの。ゴーギャンはバリで楽園を求めてさまよい、フローラは理想の世界を求めてパリをさまよい……というと面白くもなんともなさそうですけど、ゴッホの耳切り事件やら、足が壊死する病気やらを潜り抜けてたどり着くラストには、「楽園も地獄も自分しだいやで!」という無常感がガツンと漂ってまして、実によろしい感じでしたねー。