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筋トレでは体の動きに集中したほうが筋力のパフォーマンスが上がりやすくなるぞ!のメタ分析

 


  

筋トレの世界では「動いてる間に体の動きに意識を向けるといいよー」ってアドバイスをよく聞くわけです。ベンチプレスの時に胸の筋肉の動きに集中したり、スクワットで太ももの筋肉に意識を向けたりといった話で、割と複数の研究で支持されているアドバイスだったりします。やっぱ精神と肉体はつながってるんですなー。

 

 

で、ここで重要なポイントが、「筋トレの意識」には外部と内部の違いがあるところです。ざっくり説明すると、

 

  • 外部フォーカス:ベンチプレスで「できるだけ素早くバーを上に上げる」ってところに集中する。スクワットで「足の裏で床を押し下げる」感覚に意識を向ける
  • 内部フォーカス:ベンチプレスで「大胸筋を限界まで収縮する」ってところに集中する。スクワットで「太ももの筋肉が収縮する」感覚に意識を向ける

 

みたいになります。小さな違いのようですが、最近の研究だと「筋トレでどこを意識するか?」によって結果が違うと言われてまして、「外部フォーカスだと運動のパフォーマンスが上がりやすいのでは?」や「内部フォーカスは筋肉の発達に役立つのでは?」みたいに考えられてたりするんですよ。

 

 

 

では、実際にはどんな効果の違いがあるのかってことで、外部フォーカスと内部フォーカスの違いをチェックしたデータ(R)が出ておりました。具体的には、先行研究から5件のデータをまとめたメタ分析になっていて、

 

  • そのうち1件は男女の被験者を別々にテストし、1件は2つの別々の実験について報告したものだった

 

  • 全体には合計で141人の被験者(女性24人、男性117人)が含まれ、すべての研究で多関節運動(腕立て伏せ、ベンチプレス、スクワット、デッドリフト)が採用されていた

 

  • すべての研究で、限界まで筋トレをする実験が行われ、筋持久力の変化が評価されている

 

  • すべての研究はPEDro(研究の偏りリスクと方法論の質を評価するチェックリスト)を使い、実験の質が「まあまあ」または「良い」と評価されている

 

みたいになります。筋トレの外側と内側に意識を向けるかどうかで、筋肉の耐久性はどう変わるか?ってとこを深掘りしてくれたわけですね。

 

 

でもって、結果はこんな感じになりました。

 

  • 外部フォーカスと内部フォーカスを直に比べたメタ分析では、「外部フォーカスを使うほど筋持久力がアップしやすい」傾向があった(d = 0.58; p = 0.001)

 

  • 上半身の運動(d = 0.53; p = 0.0003)と下半身の運動(d = 1.36; p = 0.01)の両方を調べた場合でも、この差は有意に残っていた(つまり、ベンチプレスでもスクワットでも、外部フォーカスのほうが筋持久力は上がる)

 

  • 「外部フォーカス」と「フォーカスしない」場合を比べてみると、当然ながら外部フォーカスを使った方が、やっぱり筋持久力が高くなりやすかった(d = 0.42; p = 0.01)

 

  • 「内部フォーカス」と「フォーカスしない」場合を比べてみると、筋持久力の結果に有意な差が生じなかった。これは、上半身と下半身の両方の運動で当てはまる(すべての比較でp = 0.14-0.41)

 

ということで、筋持久力(筋トレで筋肉が疲れるまでの時間)については、外部フォーカスのほうが優勢みたいですね。筋持久力のパフォーマンスは1RMに最も関係するポイントなので、「とにかく重い重量を扱いたい!」って人には参考になる結果かもしれません。

 

 

ただ、これはあくまで筋持久力にのことしか調べてないので、筋肉量を増やしたい!って人がどっちを使うべきかは、まだ謎が残るところではあります。いちおう2018年の研究(R)では「8週間のトレーニングで内部フォーカスの方が筋肉が増えた!」と報告してるんですが、それはあくまで上腕二頭筋に限った話なので、判断が難しいんですよね。

 

 

また、今回のメタ分析の結果を考えてみると、

 

  1. 外部フォーカスの方が筋持久力が上がるってことは、そのぶん筋トレボリュームを増やせるはず

  2. ってことは、外部フォーカスの方が最終的には筋肉が増えるんじゃないの?

 

とも言えるわけで、やっぱり判断がしづらいところではありますね。まぁ現時点では、

 

  • 筋トレのパフォーマンスを向上させたい場合は、外部フォーカスが良いのは間違いなさげ
  • 筋肉を増やしたい時は内部フォーカスでもいいのかもしれないが、ちょっと事情は複雑になる

 

ぐらいの結論でしょうかね。個人的には筋肥大よりは筋力の方が大事なので、外部フォーカスを使っていこうかと。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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