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酸性の食事で癌になる!骨が弱る!はどこまで本当なのか?


  

こんなご質問をいただきました。

 

ちょっと前に流行った「アルカリ性ダイエット」ってどうなんでしょうか?なんとなく酸性食品には悪いイメージがありますが…。

 

とのこと。「アルカリ性ダイエット」ってのは、文字どおりアルカリ性の栄養素(例:カリウム)を増やす食事法のことです。

 

 

もともと人体は血液のpHを弱アルカリ性に保っていて(7.35から7.45)、この範囲を超えると体に悪いので、酸性の栄養素(例:タンパク質)を控えてアルカリ性の食事を増やすといいよー、という考え方ですね。

 

 

同じジャンルとしては「アルカリ水」ってのもありまして、こちらも考え方は上と同じ。オバマやビル・ゲイツなどもアルカリ水を愛用しているそうで、なにやら効果がありそうな気もするわけです。

 

 

一説には、酸性化した食事は骨を侵食し(酸灰仮説)、癌、糖尿病、腎臓結石を促進するという主張もありまして、これが事実ならまことにおそろしい話だったりするわけです。

 

 

では、アルカリ食に意味があるのか?ってことで、いくつか具体的な試験を見てみましょう。

 

 

ポイント1:酸性の食事は骨に良くないのか?問題

まずは、酸性の食事で本当に骨がもろくなったりするのか?ってところですが、2017年に出た2つのメタ分析(R,R)では、「食事で摂ったタンパク質の量と骨密度の関係」を調べてくれていて、だいたいどっちも似たような結論が出てたりします。

 

 

ざっくりまとめると、

 

  • 過去のRCTでは、タンパク質の摂取量が多いほど腰椎の骨密度に良い効果が見られた。
  • 股関節、大腿骨頸部、カルシウムバランス(吸収されたカルシウムと排泄されたカルシウムの比較)、骨破壊のマーカーには中立の効果が見られた(要するに、酸性の食事でも骨の健康には影響がない)
  • 前向きコホート研究だと、タンパク質の摂取量が多い人は、骨密度および骨折のリスクに対して中立か肯定的な効果が確認されていた

 

という感じでして、少なくとも酸性の食事だからと言って骨に悪影響が出るってことはなさそうですね。

 

 

では、カリウム、クエン酸塩、重炭酸塩など(つまりアルカリ性の栄養素)は骨の健康にどのような影響を与えるのかということで、こちらは2015年に14のRCTをまとめたメタ分析(R)が行われております。これによると、

 

  • クエン酸カリウムまたは炭酸水素カリウムを摂取すると尿中NTXが低下したので、もしかしたら骨の健康にいい可能性はなくはない

 

  • ただし、2年間のRCTをメタ分析したところ、クエン酸カリウムを摂取しても骨密度には効果がないことがわかった。これらの2つのRCTのうちの1つは、果物および野菜の摂取量を増やした場合の違い調べたが(約300g/日)、こちらも骨密度に影響を及ぼさなかった

 

となってまして、やはり酸性だろうがアルカリ性だろうが骨への影響はほぼなさそうっすね。

 

 

 

ポイント2:酸性の食事は癌になりやすいのか?問題

続いて、酸性の食品で癌リスクが高まるのか?という問題ですが、こちらは「関連がある」とした観察研究がいくつかあったりはします。たとえば、

 

  • 乳がん(R)
  • 肺がん(R)
  • すい臓がん(R)

 

というものがありますが、絶対的なデータ量が少ない上に、酸性の食品が多い食事ってのはそもそも野菜が少ない傾向があるので、酸性とかアルカリ性とは無関係な理由で癌リスクが上がる可能性が高いんですよね。正直、これだけではなんとも言えないってところですけど、個人的には「酸性食品って普通に肉の摂取量が多いから癌リスクが上がってるだけでは?」ぐらいにしか思ってませんが。

 

 

 

ポイント3:酸性の食事は糖尿病になりやすいのか?問題

いくつかの観察研究(R,R)では、酸性の食品と糖尿病のリスクに「関係性あり」と報告してるんですが、こちらのメカニズムも基本的には上と同じです。つまり、酸性の食事は肉類が多いから「たんに不健康な食事をしてる人のデータが増えるだけでは?」ってことですね。現時点では、証拠としてはかなり弱いと申せましょう。

 

 

実際のところ、関連する試験の結果では酸性系の食品に有利な結論が多くて、たとえば、

 

  • 複数のRCTでは、タンパク質をたくさん食べてもインスリン抵抗性の増加にはつながらなかったと報告されている(R,R)

 

  • もちろんタンパク質と糖尿病の関係にはまだ議論があるけれども、それは酸性がどうこうじゃなくて、BCAAがインスリン抵抗性を高める可能性があるからだったりする(R)

 

  • また、アルカリ性の成分については、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウムの作用を調べた試験では、血糖値やインスリンのコントロールに効果がないと報告されている(R)

 

って感じになります。まだ議論はあるものの、酸性とアルカリ性の問題については無視しても良いのではないんじゃないか、と。

 

 

ってことで、いろいろ書いてきましたが、現時点では多くの研究者が「食品は血液のpHに影響を与えるけど、体は簡単バランスを取ることができるから、気にしても意味なくないか?」と考えてまして、食品がアルカリ性か酸性かにこだわったところで、実際の健康への影響はないと判断したほうがいいでしょうね。

 

 

まぁアルカリ性の食事が体にいいってのは、普通に野菜の量が増えるのが原因だとお考えください。どうぞよしなに。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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