頭を良くしてくれるかもしれない腸内細菌が見つかった話
腸と脳がつながっているって話はよく書いてますが、新たに「腸内細菌が頭の良さを左右してるんじゃない?」ってデータ(R)が出てておもしろかったです。
まぁこれまでも動物実験だと「脳の働きを腸内細菌が操ってる!」みたいな話はあったんですけど、いまいち規模が小さかったし、ヒトを対象にした大規模なものってほぼなかったんですよ。それが、今回は「CARDIA」というアメリカの大規模なデータセットを対象に、腸内細菌と脳の関係を調べてくれてて、非常に勉強になりました。
これはテキサス大学オースティン校のミシェル・ライト先生などの調査で、上述のとおりCARDIAってデータを分析したものです。CARDIAは4つの都市部に住む黒人と白人の成人を対象とした調査データで、今回の研究では、
- 3,358人の参加者を30年にわたってフォローしている
- これらの参加者のうち615人は、便のサンプルを調べて腸内細菌のDNAもチェックしている。最終的には597人のデータを解析に使用し、参加者の年齢は48〜60歳、平均年齢は55歳で、男性44.7%、黒人45.2%、白人44.8%だった
- 参加者は、6つの認知テストを行う(情報処理の能力、言語の記憶力、脳の抑制機能、言葉をうまく使う能力、社会生活や職業の機能、認知症レベル)
って感じになってます。これらの認知テストは、必ずしも日常的な「頭の良さ」を反映しているわけじゃないんですけど、とりあえず脳がちゃんと働いているかどうかを判断するには十分でしょう。
そのうえで、みんなの教育レベル、喫煙状況、身体活動、食事、薬物の使用状況、高血圧や糖尿病といった、「データに影響を与えそうな要素」を取り除いたところ、結果はこんな感じになりました。
- 個人間の差異を見ると、腸内細菌の種類は脳の働きとバッチリ相関があった。この相関に人種による有意な差はなかった
- バルネシエラ、ラクノスピラ、アッカーマンシアという菌は、少なくとも1つの認知テストと正の相関を示した(つまり、これらの菌を持っている人ほど脳の働きが良い)
- 逆に、サテレラは認知症テストと負の相関を示した(つまり、この菌が多い人は認知症リスクが高いかも)
みたいになります。全体的に見てみると「短鎖脂肪酸を産み出してくれる菌が大事なんだろうなー」って印象でして、特にアッカーマンシアあたりは肥満や糖尿病との相関も示唆されてまして、こいつが多い人ほど病気になりにくいとも言われてるんですよ。
まー、この研究に関しては、多重比較を行うにはサンプルサイズがかなり小さいのが難点ですし、調査のあいだに起きたかもしれない健康状態の変化もデータには含まれないので、まだまだ決定的な結論とも言えない感じっすね。
ちなみに、過去の研究だとアッカーマンシアのサプリを使った調査とかもあるんですけど、iHerbさんでは取り扱いがないみたいなので、「エーギフト 酪酸菌プレミアム」などを使って短鎖脂肪酸の増加を期待するか、イヌリンみたいな水溶性食物繊維を使って良い菌が増えるのを期待するかってとこでしょうかねー。