今週末の小ネタ:失敗にヘコたれやすい人の特徴、酒は直に癌の原因になってる説、日中のボンヤリが物覚えには超大事
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
失敗にヘコたれやすい人ってどんな性格なの?
「失敗にヘコたれやすい人ってどんな性格なの?」を調べたデータ(R)が、エクス・マルセイユ大学などから出ておりました。人生には失敗がつきものですが、これに気持ちが負けてやる気がなくなる人と、失敗を糧にして再出発できる人は何が違うのか?ってポイントですね。
研究の対象はフランスの男女80人(年齢18〜61歳)で、調査が行われた4週間の間に「どんな求職活動をして、それが失敗に終わったかどうか?」を尋ねたんだそうな。
でもって、そのついでにみんなの自己効力感(就職面接に受かるかどうかの自信)と、さらにビッグファイブ(性格特性)も調べてみたところ、結果はこんな感じになりました。
- 神経症傾向が強い人(不安になりやすい人)は、前の週に失敗すると次の週の努力を減らす傾向があった。この傾向には、自己効力感は関係がなかった(つまり、自信があろうがなかろうが、不安になりやすい人は失敗に弱い)
- 外向性が高い人(社交的で外部の報酬に反応する人)は、前の週に成功すると次の週はさらに努力する傾向があったが、一方で前の週に失敗すると次の週の努力を減らす傾向があった。
- 内向的な人(非社交的で内面の報酬に反応する人)は、前の週に成功しても次の週にもっと努力するようにはならなかったが、前の週に失敗しても次の週モチベーションが落ちなかった。
ということで、不安になりやすい人が失敗に弱いのは当然でしょうが、外向的な人は成功で調子に乗るぶんだけ失敗に弱く、内向的な人は成功でも失敗でもあんまり変わらないってあたりはおもしろいですね。
なんでも、感情が安定していて内向的な人ってのは、失敗が起こっても「障害を克服したい!」って気持ちが生まれやすく、そのぶんだけ失敗からの立ち直りが早いんだそうな。そう考えると、内向的な人間としては人後に落ちない私としては、そこらへんを「強み」として使っていくように考えた方がいいんでしょうな。
酒は癌の直接の原因になるかもねーという話
オックスフォード大学や北京大学などのチームが、「酒は癌をダイレクトに引き起こすかもよ!」と警告しておられました(R)。
これは中国のバイオバンクが集めた男女15万人以上のDNAサンプルを使ったもので、このデータを、みんなの飲酒習慣のアンケートと合わせて中央値で11年ほど追跡したんだそうな。なんでこういう研究をしたのかと言いますと、
- アジア人は遺伝レベルで酒に弱い人が多いから
であります。中国人も日本人も欧米に比べて酒に弱い人が多く、それはアルコールの処理する遺伝子の変異(ALDH2やADH18)を持っている確率が高いんですよね。
それと同時に、アルコールで癌の発症リスクが高まるのも有名で、
- アルコールが体内でアセトアルデヒドに分解される
- アセトアルデヒドは猛毒なので、体のDNAにダメージを与えて修復を妨げる
- DNAが損傷を受けると、細胞が制御不能なまま成長を始めて癌になる
って流れがほぼ確立されております。なので、酒に弱いアジア人はアルコールの癌リスクも高いんじゃないか?と言えるんですよね。
でもって、この研究では、追跡の期間中に男性の約7.4%(女性9万人に対し、男性約6万人)が癌を発症しまして、これを細かく調べてみると、
- ALDH2系の酒に弱くなる遺伝子を2つ持っている男性は、そもそもアルコールをほとんど飲まないため、あらゆるがんの発症リスクが14%低く、アルコールとの関連が指摘されてきた癌の発症リスクが31%低かった。
- ALDH2系の酒に弱くなる遺伝子を持っているのに定期的に飲酒をする男性は、頭頸部がんと食道がんのリスクが高かった。
だったそうです。酒に弱い遺伝子を持ってる人は、そもそも酒を普段からほとんど飲まないので、酒を飲む人より癌リスクが低めに出るみたいっすね。
一方で、酒に弱い遺伝子を持っていながら酒を飲む男性は癌リスクが有意に高いので、
- 酒はやっぱり癌リスクの直接的な原因になっているっぽい
と判断できるわけですね。研究チームいわく、
これらの知見は、アルコールがいくつかの種類の癌を直接引き起こすことを示している。遺伝的にアルコール耐性が低い人は、これらのリスクがさらに高まる可能性がある。
とのこと。私は自分の酒に関する遺伝子を調べたことがないので、ここらへんがどうなのかは不明なんですけど、7年前に酒を止めてからめっきりアルコールに弱くなったので、今後も祝いの席ぐらいでしか飲まないだろうなぁ、と。
日中にボンヤリしないと長期記憶が作られないかもよー
日中にボケーっとする時間がものごとを覚えるのに大事かもよーって話(R)が、ボン大学から出ておりました。頭をぼーっとさせて、とりとめもないことを考えているときに、脳は勝手に記憶を定着させているんじゃないか、と。
これは平均年齢24歳の健康な男女10人を対象にした試験で、どんな実験をしたかと言いますと、
- カエル、木、飛行機、人などが描かれた写真を何枚か見せる
- それぞれの写真のそばには白くて四角いラベルが貼られ、参加者は正方形の位置を記憶しなければならない
- 最後に、今度は四角いラベルがない状態で、すべての画像を見るように指示し、「どの位置に四角いラベルがあったか」を指し示してもらう
- 実験のあいだ、みんなの脳をfMRIで記録する(休憩時間や仮眠時間の脳も記録)
みたいになってます。なんだか謎の作業ですけど、このようなタスクをこなすためには視覚野や海馬といった複数の脳領域を使わねばならず、「ヒトがいろんなものを覚える際に脳はどう動いてるのか?」を調べるのにちょうどよかったりするんですよ。
で、実験の結果は以下のような感じでした。
- 人間の脳がボケーっと空想を浮かべている休息状態にあるときに、過去の出来事を表す神経細胞の活動パターンが再現されていた
- 過去の出来事に似た活動パターンの量が増えるほど、記憶テストの成果も良い傾向があった
ちょい難しい話ですが、言い換えれば、参加者がボケーっと休憩してなんも考えていないときに、脳は「さっき四角いラベルの位置を記憶したときの動き」と同じような活動を見せてたってことです。要するに、ヒトの脳ってのは、ボケーっとしてる時に過去の記憶のシミュレーションを行っていて、その仮定で長期の記憶を定着させてるのでは?って話ですね。
逆に言えば、なにかを学んだ後は意図的にボケーっとする時間を作らないと、せっかくの勉強が身につかないかもしれないわけっすな。休憩を入れずにガンガンに勉強するのは、やっぱよくないんでしょうなぁ。