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【質問】「やせるゼリー」に入ってたシブトラミンって本当に効くの?どれぐらい危険なの?


  

こんなご質問をいただきました。

 

「やせるゼリー」という違法ゼリーに入っていたシブトラミンってどういうものなんでしょうか?検索しても難しいのが多くて、よくわかりませんでした。「脳に作用して食欲を抑える」と書いてあって怖いですが。

 

ってことで、近ごろ健康被害で話題になった「やせるゼリー」に入っていたシブトラミンってのは、どういう成分なのか、と。禁止されている成分というけど、どんな問題があるのかってことですね。

 

 

シブトラミンはどれぐらいヤバいのか問題

で、今回の事件で問題になった「やせるゼリー」に入ってるシブトラミンは、ひとことで言えば「抗うつ剤」に似た働きを持つ成分一種です。どういう働きをするのかと言いますと、

 

  1. シブトラミンを飲むと、脳内でセロトニンの吸収がブロックされる

  2. 脳内のセロトニンの量が増える

  3. 食欲が減る!

 

みたいな感じです(ただし、抗うつ剤として効くわけじゃないですが)。セロトニンと言いますと、一般にメンタルを落ち着かせる神経伝達物質ってイメージがありますが、消化器系に働きかけて食欲をコントロールする作用も持ってるんですよ。実際、セロトニンが足りない人はドカ食いに走りがちだったりしますしね。なので、ニュースなどでは「脳に作用」って表現をしてるわけです。

 

 

では、 シブトラミンはどれぐらいヤバいのかってとこが気になりますが、このポイントについては、アメリカのFDA御大が2010年に安全性のレビュー(R)をしてくれてまして、

 

  • シブトラミンを服用している人は、対照薬よりも多くの心臓と血管の異常が観察されている(11.4% vs 10.0%)
  • なので、シブトラミンは、心臓と血管の病気を経験したことがある人は心臓発作と脳卒中のリスクを高めるかもよー

 

みたいになってます。基本的に心臓まわりの副作用が問題視されてまして、実際にアメリカでは54例の死亡事故が報告されてたりするんですよ。なので、現在は日本だけでなくアメリカやカナダ、インドなどで販売が禁止されております。怖いですねぇ。

 

 

ちなみに、2016年には、みんな大好きコクランレビュー(R)も出てまして、こちらも「シブトラミンは一部の患者で血圧と心拍数を大幅に上昇させるよー」って結論。やはり心臓と血管への負担が大きいのは間違いないっぽいですね。

 

 

 

そもそもシブトラミンはやせるのか問題

では、続いて「そもそもシブトラミンはやせるのか?」を見てみましょう。上記のような危険を押してまで使うほど、シブトラミンはダイエットの効果があるのか?ってことですね。

 

 

このポイントについては、いくつか信頼度が高い系統的レビューが出てますんで、ざっくり内容を見ておくとこんな感じです。

 

  • シブトラミンの試験を6つチェックしたら、4試験中3試験で、プラセボと比較して統計的に有意に大きなBMIの減少がみられた。BMIの変化は、-1.5〜-3.6kg/m²の範囲だったよー(試験期間は6〜12ヵ月)(R)

 

  • 29の試験をまとめたら、1年の試験でシブトラミンのダイエット効果は、3ヵ月で-2.78 kg(95%CI,-2.26~-3.29 kg)、1年で-4.45 kg(95%CI,-3.62 ~-5.29 kg)だったよー。でも出版バイアスがあるよー(R)

 

ということで、この結果をどう考えるかは難しいところですけど、全体的に見ると、どのデータもめちゃくちゃ肥満体の人を対象にしてまして、「そりゃあ減量薬の効果は出やすいだろうなー」って印象ですね(つまり、ちょっと太ってるぐらいの人が体型改善に使えるのかはわからない)。そう考えると、心疾患リスクを抱えてまで使うほどのメリットなないんじゃないの?ってとこじゃないでしょうか。

 

 

まぁ、いまでも海外とかから買った謎のダイエット薬とかにはシブトラミンが入ってる可能性もありますんで、そこらへんはくれぐれもご注意くださいませー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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