今週末の小ネタ:オーガニック野菜って汚染されてる? SNSからちょっと離れるだけで幸福感が上がる? トップパフォーマーのアドバイスって役に立つの?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
オーガニック野菜って汚染されてる危険が大きいんじゃない?説
「オーガニック野菜ってどうなの?」って疑問についてはいまも明確な答えはありませんで、
- 農薬が少ないから体にいいのだ!
- いや、現代の農薬はかなり少ないからダメージはないのだ!
- オーガニック野菜のほうが栄養が豊富だ!
- いや、実際のデータを見ると、オーガニック野菜も一般的な野菜と栄養価は変わらないのだ!
などなど、いまだに議論百出なんですよね。
で、新しいデータ(R)は、「オーガニック野菜には人体に有害な細菌が含まれているかも?」みたいな結論になっててビビりました。これはスペインのバレンシア工科大学による調査で、こないだのECCMIDで発表されたものです。
個々でチームがどんな調査を行ったかと言いますと、
- バレンシアの地元スーパーマーケットを訪れて、ほうれん草やレタスなどのオーガニック野菜を研究用サンプルとして購入
- 合計17個の野菜をメタゲノム解析(微生物から分離した塩基配列の研究)し、自由生活アメーバの内部を調べる
みたいになってます。自由生活アメーバってのは環境中に広く存在し、オーガニック野菜にも生息している生物の一種です。一般には健康に問題がないと言われてるんですけど、実際にはアメーバを経由した細菌が体内に入り込んで悪さをするのでは?とも考えられてきたんですよ。
でもって、調査の結果がどうだったかと言いますと、
- ほとんどのオーガニック野菜から、シュードモナスやフラボバクテリウムといった無害な細菌が検出さた
- しかし、サンプルの3分の1から、サルモネラ菌、アルコバクター菌、レジオネラ菌など、合計52種類の病気を引き起こす細菌が検出された。これらの細菌は、腸チフス、下痢、心内膜炎、肺炎などの深刻な病気を引き起こす可能性がある
だったそうです。研究チームいわく、
汚染された用水で栽培を行った結果、野菜も汚染されることがある。特に葉物野菜は地面に近く、人間が調理せずに食べる可能性が高く、特に糞便による汚染を受けやすい。
とのこと。要するに、オーガニック野菜は地面からの汚染を受けやすい性質があるんだ、と。まー、これはあくまで初歩研究って感じなので、たまたま汚染野菜が多く見つかっただけかもしれないんですけど、ここらへんはもうちょい気にしといたほうがいいかもですね。
SNSからちょっと離れるだけで幸福感が上がる?説
オーガニック野菜とならんで、いまも議論が続いているのがSNSです。くわしくは「SNSは本当に役に立つのか?問題の現時点で一番まとまった答えとか」を参照していただければと思いますが、SNSは悪い説と良い説の両方が混在してるんですよね(個人的には、たんに使い方の問題だと思ってますが)。
といったところで、新たにバース大学がおもしろい研究(R)を報告してくれておりました。
こちらがどんな実験を行ったかと言いますと、
- 平均年齢29.6歳の男女154人を集める
- 参加者たちを、(1)1週間ソーシャルメディアの使用をやめるグループ(特にFacebook、Twitter、Instagram、TikTokを止める)と、(2)何も指示されなかったコントロールグループに分ける
- 1週間の終わりに、みんなのメンタルをチェックする
って感じです。通常、SNSの調査ってのは観察研究がメインなので、このようにRCTではっきりと因果関係を調べたものは珍しいっすね。
すると、1週間だけSNSをやめたグループには顕著な違いが見られまして、
- SNSを断ったグループは、幸福感、抑うつ状態、不安という3つの指標すべてがかなり改善した
- この結果は、ベースラインスコアや年齢、性別を考慮した後でも維持された
- TwitterやTikTokに費やす時間を短くするだけでも抑うつや不安は改善される(効果は小さいけど)
だったそうです。いやー、正直なところ、私が想定してたよりも大きな違いが見られてまして、やはりSNS断ちはメンタルに良いのかなぁって印象が強くなりました。確かに、ツイッターやティックトックをずっとやってたら、常に情報に追われてるような感覚になるでしょうから、少し使用量を減らすだけでも変化が見られるってのはありそうな気がしますね。
トップパフォーマーのアドバイスって役に立つの?
「なんかアドバイスが欲しい!」と思ったら、トップパフォーマーに相談するのが普通でしょう。なんの実績もない人に話を持ちかけてもなぁ……と考えるのが普通ですもんね。
が、最近の研究(R)では、「トップパフォーマーへの相談ってどうなのよ?」って疑問を投げかけてておもしろかったです。
これは、オンラインで1,000人以上の参加者を集めたもので、ワードスクランブルってゲームを行うように指示。参加者たちに4×4の16文字のボードを示し、60秒間でできるだけ多くの単語を探し出すタスクをやってもらったんだそうな。
でもって、その際に、事前にゲームを6ラウンドほどプレイした100人の先達を呼び、「これからプレイする人へのアドバイスを書いてください」と注文。これを、初心者のプレイヤーに見せて、「どのアドバイスを参考にしたいですか?」などを尋ねてみたらしい。
その結果、どんなことがわかったかと言いますと、
- ほとんどの参加者が「トッププレイヤーからアドバイスを受けたい」と答えた(そりゃそうですな)
- トップのプレイヤーほど、自分が最高のアドバイスをしたと思っていた
- しかし、実際には、トッププレイヤーのアドバイスを受けたプレーヤーは、他のプレイヤーからアドバイスを受けたプレーヤーよりも、ゲームの腕が上がらなかった
ってことで、実際にはトッププレイヤーのアドバイスは有害な何じゃないか?って結果ですね。
なんでこういう現象が起きるのかは謎なんですけども、研究チームは、こんな推測をしておられます。
- 個人のパフォーマンスとコミュニケーションスキルは必ずしも一致しないから
- トップパフォーマーほどアドバイスの量が多くなるため、初心者プレイヤーほど混乱したから
要するに、デキる人ほど有益なアドバイスを一個に絞れない傾向があり、そのおかげで初心者は逆にどうしていいかわからなくなるんじゃないか、と。これは会社生活でもありそうな話ですね。
ただし、研究チームいわく、
この結果は、私たちが優秀な人にアドバイスを求めると、時間とお金を無駄にしてしまうという意味ではない。その可能性はあるが、常にというわけではない。
ってことなのでご注意ください。このデータは、あくまで「トップの人間が必ずしも優秀なアドバイザーとは限らないが、みんなそれでもトップパフォーマーにすがりがち」って傾向を示してるだけですんで。