亜鉛のサプリって免疫システムに良い影響があるの?についてのメタ分析を見てみよう
「パレオな商品開発室」で、いま亜鉛トローチを作ろうと動いているわけです。その流れでいろいろとチェックしてたら、新たにおもしろいメタ分析(R)が出てたんで、要点を軽くまとめておきましょう。
まず前提として、この研究は「亜鉛のサプリで免疫に良い影響はあるの?」って疑問について調べたものです。ご存じのとおり、亜鉛は免疫系がちゃんと働くために不可欠でで、ふだんの摂取の量が不足すると、免疫反応の低下につながる可能性があるんですよ。事実、亜鉛のサプは、免疫がかかわる病気の予防や治療に役立つことを示すデータもいくつかありますしね。
ただし、亜鉛サプリが免疫の働きにどこまで役立つかは謎が多いのも事実。複数の研究でいろんな結果が出ていることに加え、調査の対象になった免疫マーカーの数がめちゃくちゃ多いので、亜鉛のサプリが免疫機能にどんな影響を及ぼすのかを調べるのは難しいんですよね。
ってことで、この研究では、亜鉛サプリが免疫機能に及ぼす働きを調べた35件をまとめたメタ分析になってます。具体的には、1981年から2020年の間に発表された文献のなかから、18~100歳の参加者を対象にしたRCTが対象。全部で1,995人を対象にしてまして、アメリカから中国まで、いろんな国で行われたデータをまとめてます。
実験の期間は1.5〜72週間にわたってまして、硫酸塩、グルコン酸塩、酢酸塩、グリシン形の亜鉛を1日5〜44ミリグラムほど使っていたそうな。そのうえで、CD4、IL-6、CRP、TNF-αなどの免疫系マーカーがどう変わったかを調べてくれてます。
でもって、その結果がどうだったかと申しますと、
- 多くの免疫マーカーは、亜鉛サプリによって明確な影響を受けなかったが、好中球、(hs-)CRP、IL-6、TNF-αがわずかに減少した。
- 亜鉛のサプリにより、CRP、hs-CRP、好中球、TNF-α、IL-6が有意に減少した。
- 亜鉛のサプリは、CRP、IL-6、TNF-αを有意に減少させた(つまり、体内の炎症レベルが減少して、いろんな病気の可能性が減った)
ってことで、そこまで激しい変化が出ているわけではないものの、免疫系は活性化しているんだろうなーって感じがするわけです。
ちなみに、他のポイントとしては、
- ヘルパーT細胞の数と働きを示す大事なマーカーの増加は有意ではなかったものの、亜鉛が足りない人の場合は、1日50mg以上の亜鉛を8週間以上飲み続けると、顕著な変化が見られた。
- また、亜鉛が不足している人が亜鉛を補給すると、CD4値が上昇した(つまり、亜鉛によってヘルパーT細胞の働きが回復した可能性がある)
みたいなところがありますね。まー、全体的に試験のデザインがバラバラなんで、これをもって「亜鉛はマストなのだ!」とは言えないし、あくまで「亜鉛が足りない人なら効果が出る」って話なんで、普段の食事で亜鉛が足りてる人には関係ないところは押さえておいてくださいませ。
ちなみに、この研究チームもいくつかのポイントを指摘してまして、
- 体内の炎症を減らすには、亜鉛サプリの投与量と形態がめちゃくちゃ大事っぽい
- 亜鉛は、トローチやシロップの形で摂取し、一時的に口やのどに付着させることで、風邪の症状の重症度と持続時間を減少させる可能性がある
- 同じように、RCTのメタ分析やプール分析では、亜鉛を口から飲むことで呼吸器の感染症の発症率を下げ、インフルエンザに伴う症状の期間を短縮し、回復を助けることが示されている。メタ分析における投与量は、1週間あたり20ミリグラムから1日あたり92ミリグラムの範囲
みたいになってます。これらの知見をふまえたうえで、本稿のポイントをまとめてみると、こんな感じです。
- 亜鉛のサプリは免疫系の機能を改善し、ヘルパーT細胞を増やし、炎症を減らしてくれる可能性がある
- 亜鉛の補給は、特に亜鉛が不足している人ほど、免疫力を高めるのに役立つかもしれず、一般的な炎症を抑える可能性もある
ということで、体内の亜鉛が足りない人は、意識的に亜鉛の摂取を心がけていくのがおすすめです。
最後に、亜鉛の基本的なポイントをまとめとくと、こんな感じになります。
- 1日の推奨摂取量(RDA)は、19歳以上の成人である場合は、男性で1日11 mg、女性で1日8 mg。許容上限は1日40mgだが、長期にわたって大量に亜鉛サプリを使用すると、今度は銅や鉄分の働きをジャマする可能性もあるので注意されたい(特に亜鉛を摂りすぎると、銅が体内に吸収されにくくなる)
- 米の国立衛生研究所風邪によれば、風邪の対策に使うなら、トローチやシロップを使用するのが良いとのこと。これは、ウイルスの侵入口である鼻や口に亜鉛を付着させるためである
- ただし、基本的に亜鉛サプリに関する研究は、研究集団、投与量、製剤、治療期間がいろいろ違うので、亜鉛サプリの最適な投与量、製剤、期間についてはまだよくわからないことが多い
そんなわけで、亜鉛サプリは、ご自分の状態にあわせて適切にお使いください。どうぞよしなに。