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今週半ばの小ネタ:ボーズのハイテク耳栓って意味ある? 漢方で不眠は改善する? 熱か冷たさで筋肉痛を軽減できる?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

    

 

 

 

ボーズのハイテク耳栓って不眠は改善するの?

ボーズからスリープバッズ2っていう耳栓が出るじゃないですか。寝室のノイズをマスキングつつ、心地よい音楽を流す機能を持った高機能な耳栓で、お値段およそ3万3千円。

 

 

耳栓にしてはかなりのお値段ですが、果たして使う意味はあるのか?ってところを調べたデータ(R)が出ておりました。

 

 

これは36人の救急医学の研修医を対象にした前向き研究で、そのうち26人が研究を完了したとのこと。まずはみんなの普段の睡眠状態をチェックし、その後で参加者にスリープバッズを提供。希望するときに使ってもらい、さらに14日間調査を継続したうえで、睡眠の質がどう変わったかを調べたんだそうな。

 

 

で、調査の結果がどうだったかと言いますと、

 

  • スリープバッズを使った夜は、睡眠の質が向上していた
  • スリープバッズの使用は、日中の眠気の減少や日々の緊張の緩和と関連していた
  • 初期の睡眠スコアが悪い参加者ほどイヤホンによる恩恵を受けていた
  • ただし、みんながイヤホンを使った日数の中央値は14日中5日で、6ヶ月後の再調査では、イヤホンを継続して使っていると回答したのは50%未満だった

 

だったそうです。睡眠の改善効果があるのにイヤホンを使うのを止めた人が多いのが不思議ですけど、これは装着感の悪さ、オーディオトラックの制限、イヤホンの使用忘れなどが主な原因だったそうな。そう考えると、睡眠中に耳栓をむしり取ってしまう癖がある私のような人間が、この商品を買うのはちょっとギャンブルですな。3万ナンボも出して装着感が悪かったらキツいもんなぁ……。

 

 

ちなみに、この試験だけではスリーブバッズの実力はよくわからんなぁ……ってのが正直なところです。この技術の価値を確かめるためにはプラセボ対照が必要だし、もっと客観的な睡眠の基準を使わないと厳しいので(標準的な耳栓との比較も欲しい)。ってことで、私としてはまだ様子見っすね。

 

 

 

 

漢方「加味逍遥散」で不安は改善するか?

「加味逍遥散(かみしょうようさん)」っていう有名な漢方がありますな。8種類の生薬を配合した漢方製剤で、日本だとツムラさんとかが「イライラや不眠」用に販売していて、そこそこメジャーではないでしょうか。

 

 

で、その実力はいかに?ってことで、新しいメタ分析(R)では、「加味逍遥散は不安の症状を改善するの?」って問題を調べてくれておりました。もともと中国では加味逍遥散が不安症の治療に広く使われているんだそうな。

 



この研究は、不安障害に悩む患者さんを対象とした9つのRCTをまとめたもので、総勢809名のデータを解析。抗不安薬と比較した場合と、加味逍遥散+抗不安薬を併用した場合の両パターンで、不安の軽減効果について検討しております。

 

 

加味逍遥散は、6試験で1日300〜400ミリリットルの煎じ薬として使われ、3試験では1日量10〜27グラムの顆粒として服用。介入期間は28日から56日になっております。

 

 

でもって、分析の結果はこんな感じでした。

 

  • 抗不安薬と比較して、加味逍遥散はメンタル改善の有効率が高く、副作用の発生率が低かった
  • 抗不安薬と比較して、加味逍遥散+抗不安薬は有効率が高く、その他のいろんなメンタルの指標も改善した

 

ってことで、この結果を見る限り、加味逍遥散って意外と良いのでは?って感じっすね。いちおう、すべての試験でバイアスのリスクが高かったので、メンタル改善にガンガン使おうぜ!ってレベルでもないんですけども、使用候補のひとつには入れてもいいんじゃないでしょうか。

 

 

 

熱か冷たさで筋肉痛を軽減できるか?

体を温めたり冷やしたりするのが体に良いのは間違いないんですが、新しいメタ分析(R)は、「筋肉痛を減らすのに最も役立つのはなに?」ってところを調べてくれておりました。こりゃあ筋肉痛にお悩みの方には嬉しいっデータですね。

 

 

これはRCTのネットワーク分析で、1,367人の患者を評価した59の研究を収集。運動をしてから1時間以内に寒冷療法または温熱療法を行った参加者が、その後で筋肉痛がどうなったかを分析してくれております。

 


この研究で効果をチェックしたテクニックは、以下のようになります。

 

  • 温冷交代浴
  • クライオセラピー(液体窒素を利用して-120℃~-196℃の超低温になったキャビン内に入る)

  • 冷水に体をひたす
  • 温水/冷水に体をひたす
  • コールドパック療法
  • ホットパック
  • アイスマッサージ
  • 超音波療法

 

でもって、これらのテクニックを、運動後になにもしなかった場合と比べてみたら、結果はこんな感じになりました。

 

  • 運動から24時間後の筋肉痛を減らすには、ホットパック療法が最も効果的だった

 

  • ホットパックに続いて温冷交代浴が続き、その次にクライオセラピーが続いた

 

  • また、48時間後の筋肉痛の軽減についても、やっぱりホットパック療法が最も効果的で、次いでクライオセラピーが2位だった

 

  • 運動から48時間後以上の筋肉痛の軽減には、クライオセラピーが最も効果的だった

 

とのことで、全体的に見ればホットパックがベストって感じですね。クライオセラピーもいい線いってるものの、なんせ自分ではできないし値段もバカ高いですからねぇ。

 

 

ちなみに、ホットパック療法ってのは、運動が終わってから「マイ ヒーティング パッド 」みたいな商品を使って、数時間にわたって筋肉に熱を送り込む感じになります。これによって、血流の増加とカルシウム流入の促進がうながされて、筋肉痛を減らす可能性があるんだそうな。

 


また、温冷交代浴の場合は、冷水と温水へ交互にひたることで、血管収縮と血管拡張の交互作用、血流の増強、炎症の軽減などが起き、回復を促進する可能性があるとのこと。こうして見ると、サウナと水風呂のくり返しも筋肉痛には役立つのかもしれんですな。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。