【質問】精神を鍛えて強くなる方法ってないですか?
こんなご質問をいただきました。
ふわっとした質問なのですが、精神的に強くなるにはどうすればいいですか。バイト先で失敗するとすぐに落ち込んで考え続けてしまいます。微動だにしないメンタルがほしいです!鈴木さんはメンタルが弱かったということですが、どう鍛えたのでしょうか?
とのこと。精神を鍛えて強くするにはどうすればいいのか、と。
で、このご質問について申し上げますと、私はいまもメンタルは弱いです。ちょっと前に「鋼のようなメンタルを作る本を!」という企画もいただいたのに、「いやー、自分のメンタルが豆腐なので……」と断ったぐらいなんで。
ただ、それでもなんとかやっていけてるのは、おそらく「鋼のように微動だにしない精神を鍛える」って考え方をしなくなったところかもしんないです。その昔は、「どんな状況でも慌てずクールにトラブルを対処できる人」みたいなキャラにあこがれたこともありましたが、
- 生来の臆病な気質はどうにもならない
- どんな状況でもクールな人間って、結局はサイコパスなんだよなぁ(サイコパスが必ずしも悪いわけではないですが)
って考え方になりまして、いまでは「鋼のようなメンタル」はあきらめております。
その代わりに、しばらく前から「落ち込むのは仕方ないから!そこから立ち直る方法を考えねば!」って方向にかじを切りまして、いまんとこそれでどうにかやってる感じです。いわゆるレジリエンスですね。
簡単におさらいすると、レジリエンスってのは工学の言葉で、変化した物質や物体が元に戻る様子ををメンタルに転用したものです。物体がもとにもどるには柔軟性が必要なのと同じように、個人の精神も弾力が欠かせないのだ!みたいな話ですな。
ちなみに、アメリカ心理学会は、レジリエンスを次のように定義しておられます(R)。
逆境、トラウマ、悲劇、脅威、あるいは重大なストレスに直面しても、うまく適応していくプロセス。
つまり、レジリエンスってのはプロセスを意味してまして、そこに至る手段はいろいろあるってことっすね。
では、レジリエンスを高めるためにはどうすりゃいいのか?ってことですが、これについてはブログでもいろいろ紹介してまして、
などが参考になるでしょう。「これ!って方法を教えてくれよ!」と思うかもしれませんが、これはなかなか難しい話でして、イエールの先生などが2014年に出した総説(R)などでも、
- レジリエンスの成長には、遺伝、成長した環境、文化、経済状況など多くの要因にもとづくものの、誰でもレジリエンスを育むことができるという点では意見が一致している
- レジリエンスは、意志の力、規律、努力によって養うものであり、そのための戦略はめちゃくちゃたくさんある。ただし、いずれにしても大事なのは、自分にとってうまくいきそうな方法を見極めることである
みたいに結論してたりします。運動でも勉強でもなんでも同じですけど、やっぱ自分なりの手段を探っていくしかないんですよねー。
とはいえ、それだけだと取り付く島もないので、個人的にはマギル大学の心理学者ロブ・ホイットニー先生によるガイドラインが参考になるなーと思っております(R)。
- レジリエンスポイント1. とにかく新しいことを学ぶ:なんでもいいから新しいスキルを習得していくと、それによって「自分は成長できてる!」や「なんとかなる!」みたいな感覚を養うことができ、そのおかげでトラブルに見舞われてもスムーズに回復するメンタルが育ちやすい。
習得するスキルは個人の趣味によって決めてよく、スポーツでもいいし、パズルや謎解きでもいいし、文章でもいいし、自分が興味をモテるものに取り組めばOK。新しい趣味をはじめて、ある程度のとこまでスキルを磨くだけでもレジリエンスは備わる。アートを学ぶとレジリエンスが上がるみたいな報告もあるんだけど、これも新たなスキルが成長するからかも。
このとき、なんらかのコミュニティや集団の中で新しいスキルを身につけたほうが、レジリエンスにつながりやすい可能性もある。これはおそらく、社会的なサポートが得られるからだと思われる。
- レジリエンスポイント2. とにかく小さい目標をクリアしていく:小さな目標を設定して、その目標をガンガンに達成していくと、レジリエンスが育まれやすいよー、という考え方。この「小さい目標」もなんでもいいんだけど、健康、メンタルヘルス、キャリア、お金など、自分の状況を好転させてくれそうなものが望ましい(新しい言語を学ぶ、とか)。
- レジリエンスポイント3. とにかく小さな不安を経験していく:自分が嫌なことをあえて行い、少しずつレジリエンスを高めるやり方。といっても、いきなり本気で嫌なことをやると心が折れちゃうので、少しずつレベルを挙げていく。
たとえば、「人前で話をするのが嫌だ!」という人は、「最初は友人の前で話す」「1人または2人の前で話す」みたいに小さめの不安を設定し、少しずつレベルを挙げていく。このとき、ポイント1と2の「新しいスキルを学ぶ」と「小さい目標設定」と組み合わせると、さらに効果が高くなる。
この3つのガイドラインはレジリエンス訓練の基本でして、ここさえ押さえておけば、どんなことでも意味はあると言えるんじゃないでしょうか。くり返しになりますが、サイコパス性を持った人なら「微動だにしない心」を目指すのもいいですけど、私のような人間は弾力性を目指す方がおすすめです。