辛いことから瞬時に立ち直る心理テク「自伝的自己効力感エピソード」とは?
現代ではレジリエンスが大事!とはよく聞く話。いわゆる「心の回復力」のことで、つらいことがあってもすぐに立ち直れる能力を意味しております。
人生では必ず嫌なことが起きるものなので、「嫌なことは避ける!」とか「鋼のメンタルを作る!」とか思うよりは、回復力を鍛えたほうが結局は一番効率がいいんですよね。自分のレジリエンスが気になる方は「自分はどれぐらいストレスに強いの?を計測する6つの質問」をご覧いただくといいでしょう。
でもって、具体的にレジリエンスを鍛える方法としては、
なんてのがありますが、チューリッヒ大学の先生方がさらに手軽な手法(R)を開発してくれていたので、チェックしておきましょう。
これは75人の男女を対象にしたテストで、過去のネガティブな失敗に悩まされてる人だけを選んだらしい(仕事のミスとか離婚とか)。実験では。全体をふたつのグループに分けまして、
- ポジティブな出来事を鮮明に思い出した後で、過去の嫌な記憶を思い出す
- 困難を乗り越えたときの出来事を鮮明に思い出した後で、過去の嫌な記憶を思い出す
って感じで、嫌な思い出のつらさがどう変わるかをチェックしたそうな。
この実験でいう「ポジティブな出来事」ってのは自然の中でリフレッシュしたとか友人と楽しい時間を過ごしたとか、そういった体験を意味します。一方で、「困難を乗り越えたときの出来事」は、難しい試験に合格したとか、大事なプレゼンに成功したとか、そういった体験を意味しております。
その上で、過去の嫌な記憶のつらさを評価してもらったところ、
- 困難を乗り越えたときの出来事を思い出したグループは、たった1回のエクササイズでも嫌な記憶の苦しさが減った!
だったそうです。ポジティブな記憶を思い出すだけではレジリエンスを高めるのに十分ではなく、大きな困難を克服した記憶を呼び起こすのが重要なわけですね。
なんでこういう現象が起きるのかというと、研究チームいわく、
自己効力感はレジリエンスの重要な要素だ。
自己効力感とは「ほんの少しの違いだったとしても、自分には変化を起こす能力がある」という信念を意味する。
自分の能力を信じるられなければ、そもそも何もチャレンジすることはできないだろう。
ということで、自己効力感が高まったおかげだろうと推測しておられます。困難を克服した記憶のおかげで「自分には難しい状況を乗り越える能力があるのだ!」って気分が高まり、そのおかげで別の視点から物事を見られるようになったため、結果的にレジリエンスが発揮されたのだってことですね。チームはこの現象を「自伝的自己効力感エピソード」と呼んでおります。
困難を乗り越えた体験を思い出すことは、ポジティブな出来事を思い出すことよりもはるかに大きな影響を与える。
自己効力感に関する行動を積極的に思い出した人は、ネガティブな状況を再評価し、別の観点から見ることが容易になった。と同時に、たんにポジティブな記憶を振り返るように指示された被験者に比べて、ネガティブな経験をより苦痛の少ないものとしても認識した。
実際、過去のデータなんかを見ても、自己効力感のある人は問題解決と感情のコントロールがうまいって傾向が何度も確認されてるんで、レジリエンスと関わってる可能性は高いんでしょうな。
そんなわけで、なにかつらい出来事があったときは、
- 仕事がうまくいったときの記憶
- テストに合格したときの記憶
- 友人とのケンカを乗り越えた記憶
みたいなのを少しだけ思い出してみると良さそうっすね。どうぞよしなに。