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今週半ばの小ネタ:人間関係を避ける性格は治るか? 正しい指導法とは? 経営陣に女性を入れた方が良い説

Summary

ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

「つい他者から距離を置いちゃって友達ができない……」は改善するのか?

このブログでは、よく愛着スタイルの問題を取り上げております。愛着スタイルは他人との関わり方をもとにした性格分類で、詳しくは「あなたの性格は住む場所によって大きく変わる」をご覧ください。

 

 

一般的には、

 

  • 不安型=他者から嫌われるのを恐れまくる傾向。

  • 回避型=他者から距離を置こうとする傾向。当然、友達は少なくなる

 

の2つが人間関係に悪影響をおよぼすとされていて、普通は子ども時代に養育者からどんな扱いを受けたかで愛着スタイルが決まると考えられております。

 

 

で、この愛着スタイルってのは、残念ながら「なかなか変えづらいよねー」ってのが定説。長期的に見るとかなり安定した特性みたいで、後から変更するのは難しいと考えられております。

 

 

なんだけど、新たなテスト(R)では、「誰でも時間をかければ愛着スタイルを良い方向に変えられるのでは?」という希望ある結論になってました。たとえば、ある実験では70組のカップルを集めて、そのうち半分に「誰とでも最速で親密な関係になれる36の質問」に答えてもらい、さらにはふたりで行うヨガレッスンにも参加するよう指示したんだそうな。

 

 

すると、上記のエクササイズをしたグループは、回避型の愛着スタイルを持つ人のみ「パートナーとの関係が改善した!」と報告し、1ヶ月後のテストでも回避度が低下してたんだそうな。一方、安全型と不安型の人には同じ効果が出なかったようで、親密さを高めるエクササイズは、回避型の人になら効果がありそうっすね。

 

 

まぁ不安型に効果が出なかったのは残念ですが、私のように回避型の人間関係を構築しがちな人には、なかなか良い結果ではないでしょうか。研究チームによれば「仲の良い人と少し心を開くだけでも愛着スタイルは変わる。本当に簡単なことだ」ってことなんで、ご同輩はお試しください。

 

 

 

「大まかなイメージを伝える vs 細かい動きを伝える」本当に役立つ指導法はどっちだ?

たとえば、スポーツの指導などをする際に、

 

  1. 動作を細かく指示するパターン:もっとバットを短く持って脇をしめた状態で体に近い位置を……みたいなやつ

  2. おおまかなイメージを伝えるパターン:バットをコンパクトに振れ!みたいなやつ

 

といったやり方がありますけど、「どっちの指導法がいいの?」ってのをマンチェスター大学が調べてくれておりました(R)。

 

 

これは32人の男女を対象にしたテストで、みんなに「飛行機とか中国の漢字を描いてください!」と指示。その際に全体を2グループにわけまして、

 

  1. 書き方を細かく指示:「ペンを用紙の一番上に置いて、そのまま用紙の左角に向かって走らせて……」みたいなやつ

  2. 大まかなイメージを指示:「だいたいりょうさいどが4センチぐらいの二等辺三角形を描いて……」みたいなやつ

 

って感じでいろんな絵柄を描いてもらったそうな。で、その結果はだいたい予想できるでしょうが「大まかなイメージ」の勝利。どんな動きをすればいいかを指示されるより、イメージを説明された方が格段に正確な絵が描けたんだそうな。

 

 

研究チームいわく、

 

私たちは、何かのタスクを指示する際に、相手に物理的な動作を伝えることが多い。しかし、今回の実験では、参加者が知覚すべきことを指示されて描いた場合、その絵の精度は画像を直に見て模写するのとほぼ同じレベルだった。

 

スポーツの世界では、さまざまなコーチが多様な方法を使う。その中には、コーチが細かい動き方を指示するものもある。しかし、私たちの研究が一般化すれば、よりシンプルで純粋に "知覚的 "な方法が開発されるかもしれない。

 

とのこと。ざっくりと大づかみなイメージさえ伝えられれば、人間はかなりの精度で指示を実行できるんじゃないか、と。確かに、細かい指示をされると、その内容を追っかけるだけでも頭がバグりそうになりますもんねぇ。

 

 

ただ、この研究を現実に生かすためには、コーチが「知覚すべきこと」をちゃんと把握してなきゃいけないので(つまり、本質をつかんでなきゃいけない)、そこらへんは教え手の能力がかなり問われるでしょうなぁ……。

 

 

 

トップ経営陣に女性が入ると業績が爆上がりするのでは?説

多様性は大事!って話をほうぼうで耳にする昨今ですが、近ごろは倫理的な側面だけでなく、「実際に多様性ってメリットが多いよねー」みたいな報告も増えております。おもしろかったのがメリーランド大学などの研究(R)で、どんな研究かと言いますと、

 

  1. S&P1500コンポジットの上位企業の経営データを集める

  2. 1992年から2006年にかけて、それぞれの企業のトップマネジメントチームの規模と性別構成を調査する

  3. その企業の財務実績と性別構成を比べる

 

みたいな感じです。要するにチームは、「トップの経営陣の男女比が業績に影響するのでは?」と考えたわけっすね。

 

 

すると、結果は果たして読みどおりでして、

 

  • トップマネジメントに女性を登用すると、企業価値が4,200万ドル向上する

 

  • イノベーションを重視している企業ほど、女性がトップマネジメントにいることで業績は上がる

 

って傾向が見られたそうな。もちろん、これだけだと本当に多様性がパフォーマンスの向上をもたらしているのかは謎なんですけど、過去にタフツ大学が行った研究(R)では、人種の異なるグループと白人グループを比べたところ、前者のほうが社会問題について幅広い情報を交換できるなどと報告してたりします。視点が違う人がいた方が情報の幅が広くなるのはわかりやすい話っすね。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。