小説をよく読む人ほど言語力が上がり、最後は金持ちになるんじゃないか説
「どうやら小説ってのは脳に良いらしいなぁ……」ってのが最近の見解なわけです。まだまだ研究例が少ない分野ではあるんですが、フィクションってのは共感力やら発想力を鍛えてくれるらしいんですな。
でもって、行動科学者のレイモンド・マー先生らが、「フィクションで言語能力が上がるぜ!」みたいな研究(R)を出しておりました。
言わずもがな、言語を使う能力ってのは、勉強においてもビジネスにおいてもパフォーマンスアップには欠かせない能力でして、11,000人以上を対象にした研究(R)でも、7歳のときに読み書きが上手だった子どもは、35年後に金持ちになるケースが多かったと報告されてたりするんですよね。この傾向は、親の経済力、知能、学業への意欲などを調整した後でも残ったそうで、これは非常に気になるポイントじゃないかと。
これは約1,000人の若者のデータをもとにした調査で、
- フィクションとノンフィクションを読むと、言語能力ってどう変わるの?
みたいなポイントを調べたんだそうな。もともと、2011年に行われた精度が高めなメタ分析(R)では、「読書は言語能力の向上に役立つよ!」と言われてまして、未就学児から大学生まで読書で言語能力が上がるのはほぼ間違いないと言われてたんですよ。ただ、小説とビジネス書では働きが違うのか?ってあたりはまだ分かってなかったんですよね。
でもって、ここでは4つの調査が行われてますが、ざっくりどんな話かと言いますと、
- 参加者の言語能力を測定するために、SAT(アメリカ版の大学入学共通テストみたいなやつ)のデータを使って、みんなの言語能力をチェックする。
- みんなが、どれぐらいフィクションまたはノンフィクションを読むかを調べる(読書習慣を教えてもらったり、大量の人名リストから本物の作家名を見分けたりして判断した)
- 両者のデータを比べる
みたいになります。日常的な読書量を調べたうえで、それをテストの成績と比べたら関係性があるのか?みたいなポイントを調べたわけですね。
で、どんな傾向が見られたかと言いますと、
- フィクションを読むことは、ノンフィクションを読むことと比べて、言語能力をより強く、より一貫して予測
- フィクションの読書量を考慮した場合、ノンフィクションの読書量は言語能力の予測に全く寄与しなかった
だそうです。簡単に言えば、小説を読む人ほど言語力は高く、一方でノンフィクションの消費は言語力と関係がないかもしれないぞ、と。この違いはおもしろいもんですねぇ。
また、この研究にはフォローアップ(R)も行われてまして、こちらの調査では、
- およそ200人の参加者に、「自由時間にどれぐらい読書してます?」と尋ねる
- みんなの言語能力を調べて、読書量と比べる
って感じで、余暇における読書量と言語力の関係性をチェックしたんだそうな。その結果も、やはり上と同じでして、
- 「自分の楽しみのために読書をしているよ!」と答えた人たちほど、言語能力が高い傾向にあった
- ノンフィクションよりも小説を読むのが好きな人ほど、言語能力が高い傾向があった
- いっぽうで、「ノンフィクションを読むぞ!」ってモチベーションが高い人は、言語能力が別に高くなく、それどころか能力が低い関連する傾向があった。
だったらしく、ノンフィクションって言語能力には逆効果かも?というおもしろい結果になってますね。もうちょい具体的に言うと、
- 「俺は自己成長のために本を読むぜ!」「学びのために読むぜ!」ってモチベーションがある人ほどノンフィクションを読むことに重点を置き、その姿勢が言語能力の低さと関連していた
みたいな話になってました。ここらへんの理由はよくわからんのですが、「読書から何かを得るぞ!」ってスケベ心で本を読んじゃいけないのかも?のような気がしますね。
ちなみに、ノンフィクションよりも小説がよい理由はまだ謎でして、
- 物語はいろいろな感情を換気するので、新しい単語を覚えるのに役立つのかも?
- 物語に対する興味が、テキストへの集中力を高めるのかも?
といった仮説が提示されておりました。確かに、ストーリーを読むほうが集中が増して、そのぶんだけ言語を吸収する能力が上がるって可能性はあるかもですね。
ってことで、現時点でビジネス書がメインのような方も、余暇の楽しみとしてフィクションに親しむ時間を持つのは非常によろしいのではないでしょうか(もちろん、「この読書で言語能力をあげるぞ!」みたいなスケベ心を持たないようお気をつけください)。