不安を消すために一番重要な考え方とか?
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「不安はなぜ良いのか?(たとえ気分が悪くとも)」って本を読みました。著者はニューヨーク市立大学教授のトレーシー・デニス=ティワリー先生で、本作では「みんな不安を嫌がるけどメリットも多いから、それを活かそうぜ!」って内容になってます。「スタンフォードのストレスを力に変える教科書」の不安バージョンって感じですね。
ということで、いつものように、本書で勉強になったところをまとめておきます。
ポイント1.不安そのものよりも、不安に不安になるほうがダメージが大きい
- 最先端の薬、大量の自己啓発本、エビデンスベースな健康法などが世の中はあふれているにもかかわらず、不安に悩む人の数が減る気配はない。要するに、これらはすべてうまくいっていないと思われる。
- メンタルヘルスの専門家は、現在「不安について2つの重要な誤り」を広めており、これが不安に悩む人の増加をもたらしていると考えられる。
その誤りとは、第一に「不安は危険で破壊的な感情であり、その苦痛を解決するには不安を予防して根絶するしかない」というもの。
第二に、「不安はメンタルの誤作動によって起こり、それゆえに修正しなければならない」というものである。
- このような考え方は私たちを不安にさせ、意図せずしてメンタルのダメージ増加させる。「何としても不安を避けねば!」と思うと、逆に不安のレベルは高まり、本当に意味がある対策が取れなくなってしまう。また、これらの誤りは、不安のメリットを活かすモチベーションも奪い去る。
- 一番の問題は、私たちが不安を感じすぎることではなく、不安を感じる方法をマスターしていないことである。
ポイント2. 不安は私たちに希望を与える
- 不安を感じると誰でも嫌な感じになるが、この感覚は、人類が進化のプロセスで得た重要な役割を持っている。
「不安」とは、人間が持つ「未来について考える」や「想像する」「準備する」といった能力とともに生まれた感覚であり、恐怖が私たちを今この瞬間に縛り付けるのに対して、不安は私たちを脳の中で未来にタイムスリップさせてくれる。
つまり、不安とは、私たちに「先に何があるのだろう?」という不確実性について考えさせ、ベストな選択肢を選ぶ手助けをしてくれる働きを持つ。
だからこそ、不安は希望と表裏一体の存在であり、集中力を高め、障害を乗り越えて粘り強く行動し、創造性、革新性、社会とのつながりなどを生み出す原動力となるのです。
- 不安のメリットを活かす鍵は、不安の考え方を変えることである。
2013年の研究では、社会的な不安を抱えている参加者に、人前で即興スピーチするように指示。その際に、「不安は自分に集中力を与えてくれるのだ」などと、不安を利点としてとらえ直した参加者は、プレッシャーの中でも良いパフォーマンスを発揮し、心拍数も安定してい血圧が低かった。
この研究により、不安に対する認識をメリットに変えるだけで、私たちの身体には良い変化がおき、試練に備えやすくなることがわかった。
3. 不安は社会とのつながりや創造性を生み出す
- 私たちはしばしば「不安がストレスを引き起こす」と思い込んでいるが、近年の研究によると、不安は社会的なつながりと創造性を高め、そのことによりストレスを緩和することが分かってきた。
- 私たちの脳内では、不安を感じるとオキシトシン(愛情ホルモン)というホルモンが増える。オキシトシンは、恋愛関係、出産、他者のケアなど、社会的な結びつきに関わるホルモンであり、その量が増えるたびに、私たちは他者とつながるモチベーションが高まる。
近年のストレス研究によると、「他者とのつながり」は、不安を含むあらゆる種類の苦痛を生物学的レベルでコントロールできる最良の方法のあることが分かっている。これは、人類が「心の慰め」を得るために他者に依存するように進化してきたからで、この点を著者は「感情のアウトソーシング」と呼んでいる。
- ウィスコンシン大学による2006年の研究では、参加者にランダムな感覚で電気ショックを与えつつ、その間の脳の動きをスキャンした。このとき、参加者の1/3は愛する人の手を握り、1/3は見知らぬ人の手を握り、最後の1/3は一人で電気ショックに耐えさせたところ、愛する人の手を握っていたグループのみ、脳のストレス対処に関わるエリアが落ち着いていた。
つまり、愛する人の存在は、不安な脳を落ち着かせると考えられ、これが「感情のアウトソーシング」の一例である。
- また、不安は私たちの創造性も刺激してくれる。創造性を発揮するには、粘り強さと努力、想像力などを必要とするが、不安はそれらに集中させる働きを持っている。
事実、研究によると、不安な時期を経過することにより、アイデアの量と質、問題解決の持続力が高まることが分かっている。これは、創造性における「創造的流暢性」という現象である。
4.不安は不快でなければ機能しない
- 不安がうまく機能するのは、不安が私たちを嫌な気分にさせるからである。不安はとても不快なので、私たちはそれを取り除くために行動を起こす。
不安によって私たちは生産的な目標に向かうモチベーションを得られ、不安が減ることによって「目標が達成された」サインを得られる。このサイクルは「負の強化」と呼ばれ、不安な気持ちを止めることが報酬として機能している。
つまり、不安の機能を活かすには、不安の高まりや落ち込みに耳を傾け、不安とうまく付き合う方法を考えるのが重要となる。
- 不安はなんらかのアラームなので、決して不安を無視してはいけない。もし不安を無視し、冷静さを保ち続けようとすれば、何も解決しないどころか状態は悪化する。
そんな時は、まず「自分の不安は何を知らせようとしているのか?」を考えねばならない。仕事の締め切りが問題なのか、友人とのケンカが問題なのか、体調不良が悪化しているのか、といったように気になることを頭の中でチェックしていく。いったん不安の原因を特定すれば、不安を減らす行動目標を立てることができる。
5. 不安と不安障害は同じではありません。
- 不安は正常で健康な感情であり、ほとんど感じないものから、圧倒されるものまで、さまざまなレベルがある。しかし、不安のレベルが極端だからといって、不安障害とは診断されない。不安障害は、不安の感情が強烈で持続的であり、さらに対処が不適切で(不安の無視、引きこもり、強迫観念など)、仕事、私生活、または身体機能に問題を起こす場合にのみ診断される。
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たとえば、「授業中に発言できない」という感覚を抱いていただけなら、これはただの不安である。しかし、そのせいで夜も眠れなくなり、食事もとれなくなり、さらには学校を休み出して成績が悪化し、やがて極度の心配が学校以外の環境でも起こるようになったら赤信号。そのうち、動悸や息苦しさがひどくなり、友人との交わりも断つようになれば、これは不安障害だと言える。
ただし、このケースで不安障害と判断されたのは、強い不安や心配が発生したから感じていたからではなく、学校に行ったり、日常の活動が妨げられたり、友達を作ることができなくなったからである。
- 現代社会における問題は「不安の経験」ではなく、不安への対処の仕方を間違えた結果、不安障害につながってしまう可能性があることである。すべての不安を異常として扱うと、不安をうまく利用する方法を見つけられなくなる。
- デンマークの哲学者キルケゴールは、「正しい方法で不安になることを学んだ者は、究極を学んだことになる」と書いた。この言葉に従って、誰もが自分の不安に好奇心を持ち、それを尊重する必要がある。
人間が生まれつき持つネガティブな部分を拒絶さえしなければ、私たちは不安をうまく流し、管理し、重要なことを優先するために不安を利用できるようになる。そこではじめて、不安はチャンスに変わる。
ということで、全体的に「不安はうまく使え!」「不安を拒絶すると倍返しにあう!」ってテーマが一貫してまして、このブログをお読みの方にとっては定番の考え方じゃないでしょうか。私も「最高の体調」の半分を「不安」に割いていて、不安と未来の感覚を結びつけたあたりは「そうそう!」とか思いながら読みました。