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今週末の小ネタ:断食でメンタル改善? 金縛りが起きやすい人とは? プロバイオティクスでアトピー改善? 寝る前のプロテインで睡眠中の消費カロリーが上がる?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。 

  

 

 

断食でメンタルは改善するか?

このブログでは定期的に断食のメリットをお伝えしてますが、新たに「断食はネガティブな感情や自己嫌悪に効くのか?」を調べた研究(R)が出ておりました。 もともと、メンタルの落ち込みってのは、エネルギー代謝の障害と関連している可能性がありまして、カロリー制限や断食でエネルギー代謝を変化させれば、認知機能や気分が改善 するのではないかと昔から言われてきたんですよね。

 


で、この非ランダム化試験では、 気分障害悩む21名の男女と健康なボランティア28名を集め、みんなに72時間ほど絶食 するように 指示したとのこと(水のみ摂取)。さらに、絶食の前後で、BDI-2を使って症状の変化を評価し、ついでにBDNF、ストレスホルモン(コルチゾールなど)、エネルギー代謝の変化(グルコース、インスリン、ケトンなど)の血中濃度を評価したらしい。

 


結果、断食には 以下のような変化が見られました。

 

  • 断食を 行ったグループは、ソマティックスコアが上昇したが、認知・感情スコアは低下した。この結果、断食前後のBDI-2合計スコアは全体的に同程度であった。代謝の結果やストレスホルモンは、 どちらのグループも同じぐらいの変化だった。

 

  • サブグループ分析では、メンタルの悪化が中等度または重度の参加者は、軽度の症状の参加者に比べて症状スコアと認知-情動スコアが減少し、この変化にはBDNFの増加が ともなっていた。

 

と言うことで、そこまで劇的な変化では無いものの、断食は悲観的な感情や自己嫌悪を改善する可能性がかもしれないらしい。 もちろん、72時間もの 絶食は簡単にはおすすめしづらいのですが、 「断食のメリットにはメンタル改善もあるのかなぁ」ぐらいに考えておくといいかもですね。

 

 

 

金縛りが起きやすい人は どんな特徴があるの?

金縛りって言う現象がありますよね。ご存知の通り意識はあるんだけど体を動かせないような状態で、一説には一般人口の7.6%が少なくとも1回は 経験するとも言われております。

 

 

今のところ、この現象に関する研究は非常に少ないのですが、 新たに「金縛りになりやすいのはどんな人?」という問題について調べたデータ(R)が出ていて面白かったです。

 

これは、ポーランドで行われた横断研究で、約4500人の大学生にアンケートをとってデータを収集。最終的に、2553人の学生を対象に分析を行ったとのこと(年齢は35歳以下)。 その内容をざっくりまとめると以下のようになります。

  • 回答者の33.14%が、生涯で少なくとも1回の金縛りを経験していた。
  • 健康上の問題(肥満とか高コレステロールとか高血圧とか)が3つ以上あると、金縛りのオッズが230%高くなった。
  • その他の原因としては、メンタルの問題、不安レベルの高さ、喫煙、飲酒、運動不足などがあった。
  • 毎日の睡眠時間が平均5時間以下の参加者は、6時間から9.5時間の睡眠時間の参加者と比較して、前月に多くの金縛りを経験していた。

 

ということで、金縛りになりやすい人と言うのは、心もせよ体にせよ何らかの問題がある可能性が高いみたいですね(もちろん、何の問題もないのに金縛りになる人も一定数いるみたいですが)。ちなみに、他の研究でも世界中の学生の金縛り体験率は28%ぐらいだそうで、そういえば私も、中学生の頃はよく金縛りにあってたなぁとか思い出しました。

 

 

プロバイオティクスでアトピーは改善するか?

プロバイオティクス(腸内細菌サプリ)はアトピーに効くのか?」を調べた メタ分析(R)が 出ておりました。



そもそも、アトピー性皮膚炎ってのは、腸内細菌が免疫系に及ぼす影響が関わっているって説が昔からありまして、腸内フローラを調節することで治療に 役立つ可能性が 以前から指摘されてたんですよ。

 


これは9件のRCTをまとめたメタ分析で、アトピーに悩む男女402名(16~60歳)を対象に、プロバイオティクスによる症状の変化を検討しております。それと同時に、研究チームはネットワーク分析も行っていて、プロバイオティクスの相対的な有効性に応じてランクづけもしてくれたんですね。

 


試験で使われたプロバイオティクスはさまざまですが、そのほとんどは 乳酸菌と ビフィズス菌がベース。8つの試験で使用されたプロバイオティクスは、カプセル、粉末、ヨーグルトタブレット、またはゲルを使っていて、残り1つの試験では、皮膚病変にプロバイオティクス軟膏を使っております。実験期間は4週間から24週間だったとのこと。

 


で、結果はこんな感じです。

 

  • プロバイオティクスのサプリは、短期的(4週)にはアトピーの重症度を中程度に、長期的(8週以上)には大きく減少させた

 

  • また、プロバイオティクスによって長期的にはQOL(生活の質)が中程度に改善した。

 

  • ネットワーク解析では、L. salivariusとBifidobacteriumをミックスしたものが短期と長期ともにアトピーに最適となる確率が最も高い

 

  • 次いで、短期ではL. SalivariusとS. Thermophilusの混合物、長期ではLactobacillus acidophilus L-92の混合物だった。

 

そんなわけで、まだこれで決定だとは言えないものの、全体として試験の質も高いですし、 それなりに希望が持てる結果ではないでしょうか。 もちろん、使用の際は絶対にお医者さんと相談するのはお忘れなく。

 

 

寝る前のプロテインで睡眠中の消費カロリーが上がる?

寝る前のプロテインで睡眠中のカロリー消費量が増える!」って報告(R)が 出ておりました。 タンパク質を消化の際に使うカロリーの量が多く、満腹感も大きいと昔から言われてきましたが、睡眠前のプロテインがどんな影響を及ぼすかはまだわかってなかったんですよね。



このRCTはBMI25未満の座りがちな成人31人を対象にしたもので、以下の指示を24時間それぞれこなしたそうな。

 

  •  夕食時に40gのタンパク質を補給し、その後で筋トレを行い、寝る前にプラセボを摂取(PRO-PLA)
  •  夕食時にプラセボを摂取し、その後で筋トレを行い、寝る前に40グラムのプロテインを摂取(PLA-PRO)
  •  夕食時にプラセボ摂取、その後で筋トレを行い、寝る前にプラセボ摂取(PLA-PLA)

 

3つの条件すべてにおいて、参加者は起きている間は座ったままだったとのこと(筋トレ中以外)。ここで使われた筋トレプロトコルは35分間で、下半身の運動を複数セット行い、1セットあたりの回数は8~12回、各セット間に15~30秒の休息を入れたそうな。また、採用差rたプロテインは、イチゴ味のカゼインだったそうです。

 

 

では、結果を見てみましょうー。

 

  • 基礎エネルギー消費量はすべてのグループで同じだった。

 

  • 夕食時(318kcal)または寝る前(330kcal)にプロテインを飲んだグループは、睡眠時エネルギー消費量がプラセボ(297kcal)より多かった。さらに、夕食時(318kcal)または寝る前(330kcal)にプロテインを飲んだグループにおける12 kcalの差は統計的に有意だった。
  • 翌日の食欲はプラセボより寝る前にプロテインを飲んだグループの方が低く、満腹感も高かった。

 

とのことで、寝る前にタンパク質を補給すると、睡眠中のエネルギー消費量が増加し、翌朝の満腹感が高まるみたいっすね。まー、あくまで微妙な違いなので、 現実での体型維持にどれくらい重要なのかは分かりませんが、 寝る前のプロテインを試してみるのはアリかもしれないですね。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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