【質問】あらゆる学習の効率を最大にする最強の難易度ってあるんですか?
こんなご質問をいただきました。
鈴木さんはよく「勉強などは難易度の設定が大事」という話をしていると思います。問題が難しすぎると やる気がなくなるのはわかるのですが、 だからといって簡単すぎてもいけないと思います。勉強の効率を最高にするには、どれぐらいの難易度を設定すべきなのでしょうか?
ということで、「難易度設定はどうすればいいのか?」というご質問ですね。 おっしゃる通り、何事もタスクが難しすぎるとやる気がなくなるし、かといって簡単すぎるタスクもモチベーションが下がるしで、 難易度は適切な範囲に収めなきゃいけないんですよね。 このへんは、「ヤバい集中力」 でも強調したポイントですね。
では、難易度設定を具体的にどうすれば良いかと言う話ですが、結論から言えば、
- 80%〜85% の成功率を狙う
ってのがお勧めです。 要するに、問題集だったら8割正解できて2割間違えるようなものを選ぶと成長が最大化されるんじゃないかなって話です。
この80〜85%と言う数字は、割といろんな研究で見られるものでして、 いくつか例を挙げてみると、
- アリゾナ大学などの研究(R)では、学習が簡単すぎず難しすぎず,かつ最も早く学習が進むスイートスポットは学習誤差が約15.87%の場合だと結論づけている。つまり、約85%ぐらい正解できる教材を使う場合に、もっとも学習効率が上がる。
- バラク・ローゼンシャイン博士らの調査(R)では、小学4年生の数学クラスを研究したところ、生徒の正解率が82%ぐらいの問題を出しているクラスほど成績が良く、逆に 成績が低い教室では73%に過ぎなかった。また、この調査では、生徒の成果を上げるための最適な成功率は約85パーセントと結論している。85%の成功率であれば、生徒は教材をよく学んでおり、なおかつチャレンジにしていることの証拠になる。
みたいになります。 これらの研究は、どちらも理論的な背景は全く異なるんですけど、 それでも似たような数字が出ているのが面白いところですね。
で、このルールをいかに使うかですが、普通に成功率に応じて課題を変えていけばいいだけです。 もし問題集に取り組んでいて、5問に1問以上間違うようなら、 もっと簡単なものに変えたほうがいいでしょうし、ほぼすべての問題に正解できるようなら、 もっと難しいものに切り替えたほうがいいでしょう。
問題の正解率で判断できない場合は、「全体の時間の5分の4 はすらすらと出来るような 課題に取り組めているか?」 といったあたりを基準にすると良いでしょう。 例えば、5分のピアノ曲を練習するんだったら、全体の4分は問題なく弾けるんだけど、 合計で1分位指がうまく動かないような曲を選ぶイメージですね。 まぁ厳密に80%台を狙うのは難しいので、あくまでざっくりした感覚で構いませんが。
また、この85%ルールはもちろん 絶対的なものではなく、課題によっては数字が変わることも十分にあり得ます。 例えば、外国語を読む場合などは、全体の95%近い単語を知っておかないと 本の内容が頭に入ってこないと言われてますし、エクストリームスポーツで20%近くも失敗していたら 怪我の率は上がってしまうので、そこはもう少し難易度を下げるべきでしょう。
とは言え、全体的に言えば、勉強、スポーツ、楽器の練習 といった大半の学習においては、「80〜85%の成功率を目指すのがベスト!」という法則が当てはまるようなんで、何かを学ぶ際はこの数字を頭に入れつつ取り組むのがわかりやすくていいんじゃないかと思う次第です。 どうぞよしなに。