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心理学者「目標を達成するにはSMARTよりSUCCESSだ!」


「インナー・チャンピオン・プログラム」(R)って本を読んでたら、「目標を達成するにはSMARTよりSUCCESSだ!」って話を書いてて、おもしろかったのでメモっときます。

 

 

著者のトーマス・ラトリッジ先生はカリフォルニア大学の心理学者で、「心理学のテクニックを駆使して健康になろうぜ!」って話をまとめたもの。その際に、定番の目標設定法として有名な「SMART」をとりあげたページがあるんですよ。

 

 

「SMART」はご存じ定番のゴール達成法でして、

 

  • S(具体的)=できるだけ具体的に明確な目標に落とし込む

  • M(計測可能)=目標の達成度が数字で把握できる

  • A(達成可能)=夢のような目標ではなく、現実に達成できそうなレベルを選ぶ

  • R(関連性)=自分の仕事の内容に関係があるかどうか

  • T(締め切りが明確)=いつまでの目標を達成するかを決める

 

というガイドラインの頭文字を取ったものです。この基準にしたがって目標を設定することで、ゴールの達成度ががっつり上がると言うんですな。

 

 

ただし、近年は「SMART」への批判も多くありまして、「SMARTってデータの裏づけがなくない?」ってのをよく言われるようになってきたんですよ。ラトリッジ先生いわく、

 

何十年も使われているにもかかわらず、SMARTによるゴール設定が、SMARTを使わないゴール設定よりも、より良い結果をもたらすという科学的データはほとんどない。

 

とのこと。これは本当にそのとおりで、くわしくは「目標設定の超定番「SMART」ってのはどこまでデータの裏づけがあるのか?」をご覧ください。実はSMARTってのは、1980年代から世界中で使われてるわりには、これといったデータがないんですよね。

 

 

さらにラトリッジ先生いわく、

 

SMARTには、経験的に支持されているゴール設定戦略が含まれていないことが、研究により明らかになっている。SMARTは、効果が実証されていない戦略を含んでいるのにくわえ、実証された目標設定法を含んでいないという点で、両方の面から批判できる。

 

とのこと。SMARTってのは、うまくいくことがわかってるテクニックが入ってないし、逆にうまくいかないかもしれないテクニックが入ってるしで、どうにも使い勝手がよくないのではないか、と。

 

 

ただし、だからといって「SMARTはオワコン!」と言っちゃうのも早計なのでご注意ください。おそらく、SMARTのやり方ってのは、「もっと健康になるぞ!」とか「ライフスタイルを改善するぞ!」みたいな目標を達成するのには向いてなくて、「レポートを書く!」とか「プロジェクトをやりとげる!」といった、ビジネスの実用的な目標に使うならアリなんじゃないでしょうか。

 

 

ってことで、以上をふまえたうえで、ラトリッジ先生は、より幅広い目標を達成するために役立つガイドラインを考案してくれております。その名も「SUCCESS(サクセス)」というもので、SMARTと同じく、効果的な目標を立てるのに欠かせない要素の頭文字を取ったものです。SMARTよりも、過去に研究で効果が示されたものをまとめてくれていて、非常に参考になるはず。

 

 

では、「SUCCESS(サクセス)」のガイドラインを見てみましょうー。

 

 

  • Subjective(主観的):達成度が高い目標は、どこまでも個人的でなくてはならない。他人が望んだ目標では達成度が低くなってしまうので、まずは「自分が本当に欲しいものはなにか?」「自分にとって本当に必要なものはなにか?」を掘り下げてから、それに沿って目標を作るべし。

  • Urgent(緊急性):即座に行動を起こすことができる目標ほど達成度が高くなる。「今すぐ行動できる目標はなんだろうか?」「今すぐ行動することで得られるメリットは何か?」「待つことの代償は何でしょうか?」と考えて、できるだけ緊急性が高く、すぐに取りかかれるような目標を作るべし。

  • Committed(コミット):達成度が高い目標は、「達成できるまで頑張ろう!」と思えるようなものでなくてはならない。できるだけコミットメントがわいてくるような目標を作るべし。

  • Concrete(具体性):漠然とした目標よりも、具体的な目標の方が実現しやすいのは間違いなし。「体重を減らす」ではなく、「1週間で体重500g減らす」ぐらい具体的にすべし。

  • Evaluate(評価):達成度が高い目標は、つねに目標に対する進捗状況を確認できなくてはならない。「いまゴールまでちょうど中間地点だな」「締め切りまでゴールに向かうには1日5千文字書けばいいんだな」と思えるぐらい、進捗状況をチェックできる目標を作るべし。

  • Shared(シェア):目標の達成度を高めるためには、他人に知らせねばならない。ゴール達成率を高めるには、目標を書き出して、周囲に公表すべし。

  • Support(サポート):目標の達成度を高めるためには、他者から支援を受けたり、他者と協力して進められねばならない。誰かからの助けを得られるか、一緒にゴールを目指せる相手がいるような目標を作るべし。

 

 

SUCCESSのガイドラインは以上です。こうして見ると、確かにSMARTよりも、過去にデータで効果が示された手法がコンパクトにまとまってる印象でして、「これを満たせばゴールを達成できそう!」と思ったことでした。いまいちゴール設定がうまく行かない人はお試しください。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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