今週半ばの小ネタ:ビタミンDで頭が良くなる?電気をつけたまま寝ると死?ヨガや瞑想でADHDが改善?ミックスナッツ一日一つかみで脳の健康をキープ?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
血中のビタミンDが多い人ほど頭が良いらしい
毎度のことで恐縮ですが、またも新たにビタミンDの効果を示すデータ(R)が出ておりました。まずはこのデータの結論から言ってしまうと、
- 血中のビタミンD濃度が高い人ほど頭が良い!
みたいになります。脳がうまく働くにはビタミンDが欠かせないのは常識ですが、このデータでは、血中濃度が高い人ほど認知能力も高かったというんですよ。
これは、38の観察研究をメタ分析したもので、参加者の年齢は65歳以上が26件、45~65歳が10件、45歳以下が2件だったそうです。観察研究なので、あくまで因果関係はわからんのですが、データの規模が大きいんで、ある程度の参考になるんじゃないかと。
でもって、分析の結果を簡単にまとめると、以下のようになります。
- 血中のビタミンD濃度が低い人ほど、全般的な認知機能も低い。
- 逆に血中のビタミンD濃度が高い人ほど全般的な認知機能は高く、約60~70nmol/L(24~28ng/mL)まで改善が続いた。
- 縦断的研究のみを対象とした解析では、60~70nmol/Lを超えても、認知機能はほんのちょっとしか改善しないので、実質的に意味はないっぽい。
ってことで、もちろんこれだけでは「ビタミンDを増やせば頭が良くなる!」とは言えないものの、個人的には、血中のビタミンDは高値安定でいくぞ!って気にさせられました。
電気をつけたまま寝るのは、どれぐらい体に悪いのか?
「寝る前に明るい光を浴びるのはよくないよー」ってのはよく聞く話ですが、新しいデータ(R)は、「寝ながら明るい光を浴びるのもよくないよー」って結論になってました。電気をつけっぱなしで寝ちゃう人は意外と多いでしょうが、これがどれぐらい健康に悪いのかって話ですな。
この実験は、いつも6.5~8.5時間は寝ている健康な男女20名を対象にしたもので、全体を2つのグループに割り振っています。
- 100ルクスの頭上照明の下で8時間寝る。
- 3ルクス以下の薄明かりの下で8時間寝る。
100ルクスの照明ってのは屋内の階段の照明とか、街灯下ぐらいの明るさでして、それほど明るいわけじゃないものの、十分に視界は確保できるレベルってイメージですね。これを読んでいる方のなかには、もっと明るい照明で寝ている人もいるかもですな。
実験中、みんなの睡眠はポリグラフで検査され、これに加えて、主観的な眠気、体内のメラトニン、血圧、心拍数、翌朝の耐糖能などを調べたところ、
- 100ルクスで寝たグループは、HOMA-IR(糖を代謝する能力)が15%悪化し、薄明かりグループは4%改善した。
- インスリン感受性も、100ルクスで寝たグループは16%低下悪化し、薄明かりグループは3%改善した。
- 100ルクスで寝たグループは、ステージ2(中等度の睡眠状態)の時間が長く、深い睡眠の時間が短かった。
- 100ルクスで寝たグループは、心拍数と交感神経の活動が一晩中高かった。
って結果だったそうです。予想どおりの結果ではありますが、電気をつけたまま寝ちゃうと、糖質を代謝する能力は下がるし、血圧や心拍数も上がるし、寝ている間はずっと身体がストレスを感じ続けるわけっすね。
その理由はいまいちわかってないんですけど、研究チームは、
- 寝ている間の光で睡眠ホルモン(メラトニン)のレベルが下がるから?
- 寝ている間の光で自律神経が乱れまくって、体が覚醒状態になり、肥満、糖尿病、メタボリックシンドロームの発症につながっていく?
といった仮説を提案しておられました。まー、いずれにせよ夜間の光はなにかと厳禁ってことで、ひとつよろしくお願いいたします。
ヨガや瞑想でADHDが改善するかもよー
「ADHDにヨガと瞑想が効くのでは?」という系統的レビュー(R)が出ておりました。ヨガと瞑想は、どちらも注意力を意図的にコントロールする訓練をふくむので、ADHDに役立つ可能性は昔から指摘されてたんですよ。
これは10件の先行研究(RCT5件、非対照試験1件、非ランダム化試験1件、システマティックレビュー1件、メタアナリシス1件、レビュー論文1件)を調査したもので、小児を中心としたADHD患者1,642人が対象になってます。ヨガ&瞑想とADHDの関係を調べた研究としては、いまのところベストですね。
分析の結果をざっくりまとめると、こんな感じになります。
- 全体として、瞑想のトレーニングは、ADHDがもたらす不安感、ストレスの評価など、いろいろなメンタルヘルスの側面にプラスの効果をもたらした。
- メタ分析では、マインドフルネス瞑想によるトレーニングが、不注意と多動性/衝動性に対して大きな効果があることが、参加者682人(うち210人は子ども)のサンプルで明らかになった。このメタ分析では、11の研究のうち8つが中程度の質と評価された。
- 5件のRCTのうち、2件でADHD症状の改善が認められた。効果を報告した試験のうち、1つ(ヨガを含む)は参加者が16人で、期間は4日間だった。
ってことで、大きくまとめると、どうやらヨガと瞑想はADHDに良い可能性があると言えそうであります。この研究は子供がメインですけど、成人の男女も入ってますので、お悩みの方は試す価値があるんじゃないでしょうか。
ミックスナッツ一日一つかみで脳の健康をキープだ!
こちらも毎度の話で恐縮ですが、「ミックスナッツが脳に良い!」ってデータ(R)がまた出ておりました。あいかわらずナッツは良い報告が多いですねぇ。
こちらは健康な高齢者(平均65歳)28名を対象にした調査で、
- 毎日60gのミックスナッツを食べる(クルミ、ピスタチオ、カシューナッツ、ヘーゼルナッツを各15g)
- ナッツを摂取しない
って食事法を、それぞれ16週間ずつ交互に実践してもらったんだそうな。そのうえで、みんなの脳をチェックしたところ、
- ミックスナッツを食べたグループは、右前頭葉、頭頂葉、左前頭葉、両側前頭前野の血流量がガツンと増えた。
- また、視空間の記憶と言語記憶を評価する課題の成績も、ナッツを食べたグループの方が良好だった。
- 単語の記憶、脳の反応スピード、実行機能については、両グループに差はなかった。
って違いが見られたらしい。ナッツ60gってのは、ほんのひとつかみぐらいの量でして、これぐらいなら毎日続けるのにも手頃な量だと申せましょう。やっぱナッツもいいですなぁ。