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運動の専門家「激しいエクササイズをするときこそ鼻呼吸の方が良いぞ!」

 


 

激しい運動をするときこそ鼻呼吸の方が良いぞ!」みたいな話(R)が、ネヴァダ大学などの調査で出ていておもしろかったです。

 

当たり前ですけど、たいていの人は、運動をするときの呼吸は強度によって変わりまして、

 

  • 低・中強度の運動では鼻から息を吸って口から吐く(ウォーキングやサイクリングなど)
  • 高強度の運動が激しくなればなるほど、完全に口で呼吸する(ランニングとか)

 

みたいな傾向があるはず。私もランニングをするときは完全に口呼吸っすね。というか、口呼吸をする以外に考えたことがなかったかも。

 

が、この研究から分かるのは、それとは正反対で、簡単に言えば「激しい運動のときこそ鼻呼吸だ!」って結論なんですな。なんでも、ここで行われた実験の結果により、「さまざまな強度で運動する場合、口で呼吸するよりも鼻で呼吸する方が酸素の消費量が少ない!」って傾向が見られたんだそうな。

 

「酸素が少ない」と言われると良いことのように思えないかもですが、上記の事実は、「少ない酸素でいっぱい運動ができる」って意味でして、言い換えれば体の燃費が良くなったと表現できるわけで、体が疲れにくくなったとも考えられるわけです。うーん、そうだったのか。

 

それにしても、鼻呼吸ってのは1回の呼吸あたりで取り込める空気の量は減るわけですから、これで激しい運動に対応しやすくなるってのは不思議な感じがするわけです。もしかしたら「鼻呼吸の回数が多いのかな?」とか思ったら、この実験では、鼻呼吸で運動した人は鼻呼吸の回数が少なかったって結果も出てまして、いよいよ不思議な感じがしてきますな。

 

これがどういうことかと言いますと、

 

  1. 空気は、圧力が高いエリアから低いエリアへと移動して肺に入っていく。

  2. 鼻腔内は口よりも狭いので圧力が高い。

  3. 圧力が高いおかげで、空気はよりスピーディに肺にに移動する。

  4. その結果、酸素がより素早く筋肉に送り込まれる。

 

みたいな流れらしい。空気の量は口呼吸のほうが格段に多いんだけど、そのぶん圧力が低いせいで、肺に空気が届くスピードは遅くなるらしい。なるほどねぇ。

 

実際、この研究だと、口呼吸と鼻呼吸で同じ運動をしても心拍数に差が出ないらしい。つまり、鼻の方が入ってくる酸素の量は少ないんだけど、それにもかかわらず心臓が酸素を筋肉に送るために必死にならなくてすんでるってわけですね。激しい運動中に鼻呼吸と言われるとちょっと心配になるけど、意外と心臓に余計なストレスはかからないみたいですね。

 

ということで、これを見る限り、ランニングのような強めの運動のときでも鼻呼吸をしたほうが、おそらく疲れにくくなるし、運動中の血圧も下がるし、筋肉の効率もよくなるっぽいっすね。ただし、この考え方が筋トレやHIITのようなエクササイズにも当てはまるかどうかは謎でして、それと言うのも、筋トレやHIITのように短時間で爆発的に体を動かすエクササイズだと、おもなエネルギー源として糖質が使われるので、酸素がそこまで重要じゃないんですよね。そう考えると、おそらくHIITの最中に鼻呼吸をしたところで、パフォーマンスが上がるってことはないのかも。

 

ただし、一方では、運動の疲れを改善するためには酸素が必要なので、インターバル間の休憩や筋トレのセット間休憩に鼻から深呼吸をするように心がけるのはかなりアリのような気がしますな。休憩中の鼻呼吸を調べた研究がないので、あくまで想像の話なんだけど、これは意識してやってみよう。

 

ちなみに、激しい運動に鼻呼吸を導入する際の注意点としては、

 

  • 慣れない人が急に鼻だけで呼吸をすると、呼吸の終わりに二酸化炭素が残る状態になりやすく、不快感や過呼吸を引き起こす可能性がある。

 

  • なので、最初のうちは、あんま激しくない運動で鼻呼吸を続けて慣れておく段階は必須。その際には、無理に鼻から思いっきり吸い込もうとするのではなく、顔の筋肉から力を抜いてリラックスした状態で鼻から深呼吸できるように注意する。

 

といったあたりは覚えておきたいところです。いきなり鼻呼吸に切り替えようと思いすぎると、逆効果になる可能性が高いので、くれぐれもご注意ください。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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