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今週の小ネタ:「よく嚙め!」でどこまで健康になる? 共感力は体に悪い? ネイルケアでメンタルが改善?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

  

 

「よく嚙め!」ってアドバイスを守るとどこまで健康になるの?

「早食いは太る!」って話は昔からあって、このブログでも「早食いの人はゆっくり食べる人にくらべて2.15倍肥満になりやすい!」って話を紹介したことがあるわけです。「よく嚙んで食べよう!」ってアドバイスは、正しいと考えてよさげなんですよね。

 

で、新しいデータ(R)も「よく嚙む問題」に関するもので、関西医科大学の先生方が行った研究になります。参加者は20歳以上でBMI30以上の日本人女性34名で、実験では全体を2つのグループに分けて、片方にだけ「よく嚙もう!」ってアドバイスを実践してもらったんだそうな。この時のガイドラインとしては、

 

  • 月1回に管理栄養士による栄養指導を実施
  • 1口あたり30回以上噛み、1口ごとに箸を置くことを実践してもらう

 

みたいになります。「1口あたり30回」ってのは、まさに定番のアドバイスですね。ちなみに、咀嚼回数や咀嚼時間の評価には、イヤホン型光センサーで外耳道の変化を測定したらしい。凄いですねぇ。

 

でもって、6カ月後、結果はこんな感じになりました。

 

  • どちらのグループも体重やBMI、体脂肪率などは低下した。

 

  • ただし、よく嚙んだグループのほうがBMIが大きく低下した(-4.2±3.8% vs -8.3±5.3%)。

 

  • さらに、よく嚙んだグループには、-3.6%(-15.8~-1.1)の低下が見られた(よく嚙まないグループには変化なし)。

 

  • インスリン値も、よく嚙まないグループは数字が上がったが、よく嚙んだグループは-13.4±35.4%の低下が見られた。

 

ということで、BMIや血糖コントロールの数値については、よく嚙んだグループに良い影響が見られたみたい。おそらく、よく嚙むことでグレリン(食欲刺激ホルモン)の低下などが起きるんでしょうな。

 

もちろん、女性のみを対象にした研究なので、男性にも同じことが起きるかは謎ですけども、やっぱよく嚙むことで肥満に関する数値は改善するのかなーって感じですね。私も気をつけねば……。

 

 

 

共感力が高い人は体内の炎症が増えちゃう?

共感力は大事だよー」って話はよく書いてますが、新しいデータ(R)では「共感力の高さが健康にダメージがあるぞ」って結論になっててビビりました。他人の気持ちを理解できる能力が大事なのは間違いないものの、この能力が生理的に悪影響があるかもしれないみたいなんですな。

 

これはデンバー大学などの研究で、

 

  1. 全米で行われた成人の健康調査のデータを分析。参加者が24歳から32歳のときに収集されたデータと、8年後に32歳から40歳のときに収集されたデータを使用した。

  2. データのなかには、感情的共感(他人の感情を感じ取る能力)、抑うつ症状、c反応性タンパク質(体内の炎症のマーカー)の3つのデータが含まれている。

 

って感じになります。そこでどんな事実が確認されたのかと言いますと、

 

  • 共感レベルの高さは、血中のc反応性タンパク質のレベルの高さと関連していた(つまり、共感力が高い人ほど体内の炎症が多い)。

 

  • ただし、共感力と炎症の関係は、抑うつ症状のレベルが低い人の間でのみ見られた(つまり、抑うつ症状がない人ほど、共感力が体内の炎症に結びついていた)。

 

という結論だったんだそうな。なんでも、共感レベルが高い人ほど、8年後の慢性炎症のマーカーのレベルが高かったそうで、メンタルが健康で共感力が高い方には辛い結果ですね。CRP値の上昇は、心臓病や脳卒中などの疾患を起こしやすくなりますからねぇ。

 

まぁ、この研究では、共感性の測定法について「それでいいんかな?」と思うところもありますし、抑うつ症状の評価が自己申告によるものなので、ここらへんで結果がズレてる可能性もあるかなーって気はしました。

 

また、「なんで共感が炎症に関係するの?」ってとこも謎なんですが、私としては、共感性が高い人ほど周囲の人からストレスをもらっちゃうのかなー?とか思いました。だからといって、共感力を持っている人が、持ち前の能力を落とすわけにもいかないでしょうから、「自分の共感力のせいでストレスが増えてるのかな?」ぐらいに認識しておくと良いかもですね。

 

 

 

ネイルケアでメンタルが改善?

ネイルケアは女性のメンタルに良い!」という、おもしろいデータ(R)が出ておりました。

 

こちらは埼玉学園大学などの調査で、20代前半から30代後半の日本人女性500人にアンケートを行ったもの。みんなの年齢、居住地、配偶者の有無、世帯収入などを調べたうえで、ネイルサロンに通ったり、自分でネイルケアをしたりという、ネイルケアの習慣についても尋ねたとのこと。

 

さらに、この研究では、ネイルサロンにおける「自己開示の深さ」についても調査しているのがおもしろいところ。具体的には、自分の趣味、日常生活、困難な経験、短所、弱点、ネガティブな性格に関する話題を、ネイリストとどれぐらい話したかを尋ねたんだそうな。つまり、研究チームは、ネイルケアは自己開示を行う場所として機能しているんじゃないか?と考えたわけっすね。

 

その結果、なにがわかったかと言いますと、

 

  • サロンでネイルケアを実践した女性は、セルフでネイルケアをした人に比べて、よりポジティブな心理的な効果を得られていた。
  • 大半の参加者は、ネイルケアのあいだにポジティブな感情が高まり、リラックスし、活力が湧いたと報告した。
  • ネイルケアの最中に、趣味や日常生活を話し合うぐらいの軽い自己開示を行った女性は、肯定的感情の増大、リラックスの増大などの良いメリットを得られていた。
  • ただし、より深い自己開示(自分の否定的な性格やトラブルに関する自己開示)を行った場合は、一部のメンタルに否定的な影響があった。

 

って感じだったらしい。研究チームの仮説どおり、ネイルケア中の自己開示はメンタルの改善につながるものの、あんまり深めでヤバいことを話してしまうと、逆効果になってしまう可能性があるわけですな。確かに、「セルフケアは重要だ!」ってのと「安心できる環境で個人的な考えを共有するのはメンタルに良い!」ってのは、どちらも昔から言われることなので、そこにネイルケアサロンがハマるってことはあるかもですね。

 

とはいえ、この研究は対照群が含まれていないので直接的な比較が難しいし、大都市圏に住む日本人女性だけを対象にしているので、どこまで一般化できる話かどうかは謎であります。そこはご注意いただきたいところですが、「軽い自己開示でセルフケアができる環境が大事!」ってのはおそらく男女を問わず真理でしょうから、頭に置いておくと良いかもですね。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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