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職場の無駄な会議や上司の指示を取り除くにはどうすればいいか?を調べた本を読んだ話


フリクション・プロジェクト(The Friction Project)』って本を読みました。著者のロバート・サットン先生はスタンフォードの経営科学教授で、 日本でも「チーム内の低劣人間をデリートせよ」「職場のアホと戦わない技術」 などの本が出ております。 なんだか色物みたいなタイトルの本ばかりですが、 アメリカではかなり評価されている先生ですね。

  

 

で、本書は、「 職場の無駄な障害を取り除くにはどうすればいいか?」ってのをテーマにした一冊で、 例えば、無駄な会議、上司への無駄な報告、 無駄な雑務、無駄な事務作業などが発生する原因を見極め、それに対策する方法をまとめてくれてるんですね。 職場の“無駄あるある”が満載で、「なんでこんなことをやらなきゃいけないんだ……」と日々お悩みの方なら、 刺さるところがあるんじゃないでしょうか。

 

ってことで、いつもどおり本書から勉強になったところをまとめてみましょうー。

 

 

  • 生産性が高いチームを率いるリーダーは、おしなべて「受託者マインドセット」と呼ばれるメンタリティを持っている。優秀なリーダーは、自分たちを「他人の時間に責任を持つが仕事」だと考えており、従業員や顧客、生徒の時間を1分1秒でも無駄にしない義務があると感じている。

    2013年にDropboxが行った施策では、リーダーが全社員のカレンダーからいつもの会議をすべて削除させ、約1週間ほど新しい会議を追加しないように指示。その間、社員に「どの会議が必要不可欠か?」を考えるように指導した。 それと同時に、ミーティングはできるだけ少人数で行い、効果的でなかったり付加価値がなかったりした場合は、 その場で会話を打ち切るようにルールを設定した。

    おかげで社内からは無駄な会議が激減したが、これは1回で オッケーという性質のものではないので注意が必要である。Dropboxでも、 放っておくと無駄な会議がまた増え出したため、何度も何度も同じような施策を取り入れている。 このような 対策を取り続けるためには、リーダーの「受託者マインドセット」が欠かせない。

 

 

  • 組織の無駄を減らすのがうまい人たちは、 みんな「引き算の考え方」を取り入れている。 人間は「 足し算」で問題を解決しようとする傾向があるので、 物事を差し引いて問題を解決するのは意外と難しい。

    ヴァージニア大学が行った20の研究によると、 多くの人間は、複雑な問題に立ち向かう際に、引き算ではなく足し算で問題を解決 しようと試みた。 博士が調査した企業では、 自社のソフトに機能をどんどん追加する人に報酬を与え、複雑さを減らす人には報酬を与えていなかった。

    ハワイ・パシフィック・メディカルのメリンダ・アシュトン博士は、「 くだらないものは捨ててしまえキャンペーン(Get Rid of Stupid Stuff)」を始め、システム全体から電子記録プロセスを 再点検した上で、削除できる部分や簡略化できる部分について提案させた。

    その結果、 スタッフたちは188の削減目標を提案し、 全体で87の改善が行われた。 例えば、看護師が回診する際に、すべての患者に対して行われていたマウスのクリック回数を1回だけ削除する、などである。非常に小さな 改善だが、 これによって4つの病院で1ヶ月あたり約1,700時間の看護時間が節約された。

 

 

  • 過度に複雑な専門用語を 減らすのも、組織の無駄を減らすために大きく役立つ。ノーベル賞受賞者のダニエル・カーネマン博士は、 多くの人々は、 あまりにも多様で一貫性が定義やデータを 使っており、みんな自分が何をすべきか、誰を信頼すべきかがわからなくなっていると 指摘した。

    典型的な例としては、オーストラリアのアジャイルコンサルタントが行ったスピーチがある。この人物は、ホラクラシー、スクラム・プロップ、デミング、ビヨンド・バジェッティング、リーン・スタートアップなど、40種類もの 専門用語を使いながらスピーチを展開。 話の内容が専門用語の寄せ集めすぎなくなり、誰も何をすべきかを理解できなかった。

 

 

  • とはいえ、 完全に無駄がない組織を作ろうとするのは愚の骨頂である。たとえば、ハーバード・ビジネス・スクールのテレサ・アマビール博士は、 効率ばかりを重視して人を急がせすぎると、創造性が大きく低下することを示している。 創造性とは、根本的に非効率なプロセスであり、多くの行き詰まりや失敗、建設的な対立を伴うからである。

    テレビ番組『となりのサインフェルド』を制作したジェリー・サインフェルドは、「コメディに関しては、 困難な作り方こそが唯一の正しい方法である。効率的にする自然な方法はない」と言っている。 同じように、人生の多くのことに関しては、ゆっくり、難しく、複雑に物事を進めなければならない

 

 

  • そのため、Hearsay Systemsの会長であるクララ・シーは、何か新しいことを立ち上げるとき、混乱を受け入れるようチームに促す。これは、コンピュータ・サイエンスで使われる「懸念事項の分離」と呼ばれるアプローチにもとづくもので、うまく機能しているものを実装することに集中するチームと、プロジェクトのなかで絶対に発生する混乱を乗り切るのを目的とする別のチームを切り分けている。

    つまり、「受託者マインドセット」を持つ者は、他人の時間をムダにしないために、2つのことを同時にこなさなければならない。すなわち、「物事が正しく計画通りに進むよう人々を前進させ続ける」ことと、「確実に起きるハプニング、挫折、混乱を処理して創造性につなげること」である。

 

 

というわけで、サットン先生による「 職場の無駄な障害を取り除くにはどうすればいいか?」のお話でした。ここで取り上げたのはあくまで内容の一部でして、本書には、他にも組織のムダを診断する方法や、問題のリフレーミング、より包括的な組織設計や修復などの 戦略も紹介されていますんで、興味がある方はご一読あれ。 おそらく邦訳も出るでしょう。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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