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不安が暴走して止まらない!を解決するかもしれない「内感覚曝露」トレーニングの話

 

 

こないだ書いた「心と体を数分で癒す方法のトップ5はこれだ!」ってエントリで、こんな話を取り上げました。

 

最も効果的なのは、パニックが不意に現れる前に、自分の身体感覚を歓迎し、受け入れることを学ぶことである。

この練習は「内感覚曝露」と呼ばれ、自分が恐怖を感じる身体感覚を、意図的に再現してみる形で行う(例:心拍数の増加、息切れ、めまい)。

たとえば、息切れが怖いなら過呼吸や息を止める練習をする、めまいが嫌なら頭を速く回したり、体を激しく振ることで、めまいや失神感を再現する。

 

ということで、なにかパニックを起こしそうなときは、「内感覚曝露」ってトレーニングが良いよーって話です。これがどんなものかと言いますと、

 

  • 呼吸が浅くなるせいでパニックが起きやすい人は、速く深い呼吸を伴う過呼吸をする。または、息を止めたりする。

 

  • めまいのせいでパニックが起きやすい人は、首を左右に振ってから、まっすぐ前を見る練習を積む。

 

  • 心臓のドキドキのせいでパニックが起きやすい人は、めちゃくちゃ運動をして心拍数を上げる。

 

といった感じになります。なぜこのようなことをするのかと言いますと、私たちのパニックや不安は、身体感覚の変化によって悪化することが多いからです。いくつか例を見てみましょう。

 

  • 閉所恐怖症の場合:狭い空間で怖い経験したことがある人は、空気が不足した状態に敏感になっているので、ちょっと走って呼吸が浅くなっただけでも、「空気が足りない!」と脳が錯覚し、さらなる恐怖を生み出す。

 

  • 高所恐怖症の場合:高いところで怖い経験をしたことがある人は、足が脱力したような感覚になった際に、脳が「落下している!」と錯覚し、パニック感情がブーストすることがある。

 

  • 注射恐怖症の場合:注射で怖い経験をしたことがある人は、血が減った際のふらつきに恐怖を覚えているため、軽いめまいを体験しただけで、不安がブーストすることがある。

 

どんな人でも、不安や恐怖を感じると、発汗、震え、息切れ、心臓のドキドキなど、さまざまな身体感覚を経験するもの。しかし、この感覚への意識が過敏になりすぎた性で、必要よりも多くの不安が発生し、それに飲み込まれてしまうケースがあるんですな。これは、パニック症候群まで行かずとも、不安になりやすい人にはよく見かける現象だったりします。

 

かくいう私も身に覚えがありまして、30代のころはアレルギー性鼻炎がヒドすぎたせいで、ちょっと鼻が詰まっただけで「呼吸ができなくなる!」みたいな気分になり、その時に鼻炎薬を持っていなかったら、もう大変。えも言われぬ不安で、呼吸がどんどんできなくなっていくんですよ。「口で呼吸すればいい!」ってのは頭ではわかってるんですが、どうにもならんのですよねぇ……。

 

その他にも、ありがちな症状としては、

 

  • テスト本番の緊張で手に汗がにじむと、その変化に敏感な人は、「いまめちゃくちゃ緊張している!」と脳が反応し、さらに緊張が深まる。

 

  • 誰かに怒られて心臓がバクバクすると、その変化に敏感な人は、「いまめちゃくちゃ動揺している!」と脳が反応し、さらに動揺が深まる。

 

みたいなパターンがあります。いずれも身体感覚の変化へ過敏になりすぎてしまい、実際よりもメンタルをやられちゃう点が同じっすね。

 

というわけで、このような問題に心当たりがある方は、以下のステップをお試しいただくのも良いでしょう。

 

 

ステップ1. トリガーの特定と準備

まずは、自分が不安を感じる身体の変化を特定してください。たとえば、

 

  • 心拍数が上がると不安になる

  • 息切れで呼吸が乱れると不安になる

  • めまいがすると不安になる

  • 発汗すると不安になる

 

みたいなものが典型的です。自分がめっちゃ不安になったときを思い出して、その時の身体を意識するとわかりやすいかもしれません。

 

 

ステップ2. エクササイズの選択

自分が特に不安を感じる身体感覚を再現できるようなエクササイズを選んでください。よく使われるものには、以下のようなのが多いですね。

 

  • 過呼吸: 1分間、めっちゃ深くスピーディに呼吸する。息が苦しい感覚を体験することが目的。

 

  • 息切れ: ストローを使って呼吸する。2分間、ストローを通して呼吸し、息切れを再現する。

 

  • めまい: その場でグルグルと1分間ぐらい回転してみる。

 

  • 心拍数の上昇: その場で1分間全力で走る。

 

  • 発汗: 暖かい部屋で過ごす、またはサウナに入る。

 

 

ステップ3. エクササイズの負荷を少しず上げる

1回のエクササイズは1〜2分から始め、最初は軽いエクササイズから始め、慣れてきたら徐々に強いものに移行しましょう。

 

  • 例:心拍数の上昇
    • 最初のころは、軽い運動から始める(例:ゆっくり歩く)。
    • ちょっと慣れたら軽いジョギングを1分間行う。
    • さらに慣れたら、その場でジャンプしたり、速く走ったりして心拍数を上げる。

 

 

ステップ4. 感覚の記録

エクササイズが終わったら、自分が感じたことや反応を記録してください。これをやっておくと、どの程度の不安を感じたか、どのように対処したかを評価するのに役立ちますんで。

 

 

以上が内感覚曝露の基本で、これを毎日やってみると、自分の脳が少しずつ「アレ?この身体の変化は普通のことなんだな」って事実に気づき、不安をこじらせなくなって行きますんで。その際は、効果を一般化するために、複数の状況でエクササイズを行ったほうが効き目は出やすいはずであります。

 

私の場合も、窒息への恐怖を乗り越えるために、呼吸ができなくレベルまでHIITをくり返していたことがありました。おかげで呼吸への不安は9割方減りまして、無闇に薬を飲まなくても良いようになっております。ご同輩の方はお試しください(もちろん、重めのパニック障害にお悩みの方は、専門家の監視下で行う必要がありますが)。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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