このブログを検索




今週の小ネタ:見た目に自信がないならSNSから離れよう、よく眠りたきゃ果物と野菜を食べよ、練習で人は幸福になれるがサボるとすぐ元に戻る


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

見た目に自信がないならSNSから離れよう!

自分の見た目に自信がない?それならSNSから1週間離れなさい!」みたいなデータ(R)が出ておりました。

 

これは若い女性のボディイメージと自尊心について調べた実験で、66人の女性を対象にしたものです。ボディイメージは「自分の体型やルックスをどう考えているか?」を表す言葉で、これがネガティブな方向に傾けば、当然ながらメンタルは悪化するわけです。事実、「ボディーイメージはメンタルの安定に大事!」って研究は山ほどあるんで、自分の肉体をどう思うかは、日々を健やかに過ごすための重要な要素だと言えましょう。

 

で、この研究では、参加者の半数に、TikTok、ツイッター、フェイスブック、インスタグラムの使用を1週間だけ避けるように指示。残り反芻の参加者には、すべてのSNSをいつも通り使うように指示したらしい。

 

すると、SNSを止めた若い女性の大半は、自尊心とボディイメージが大きく改善。より自信を持って行動できるようになり、自分の見た目をきにしなくなったんだそうな。

 

研究チームいわく、

 

今回の実験で得られた効果は非常に大きかった。心理学の実験で、これほど大きな効果量を目にすることはあまりない。人間の行動は複雑でばらつきが大きいため、常に実験の結果にはゆらぎが出るからだ。

 

とのこと。小規模の実験なので注意は必要ですが、このデータに関する限りで言えば、わりとビビるレベルの効果が出てまして、「SNS断ちって良さそうだなぁ……」って気がするわけです。

 

ちなみに、これだけの効果が出た理由としては、

 

  • 他人と自分を比べるとの有害な比較が少なくなったから。

 

  • SNSに使う時間が少なくなったおかげで、より健康的な活動が増えたから(友人と遊んだり、睡眠が増えたり、外で遊んだり、運動をしたり)

 

といったあたりが考えられております。他人との比較は、SNSで不幸になる主な原因だと考えられてるんで、それが減るだけでもメンタルは改善しそうですよね。

 

さらに研究チームいわく、

 

かつて、あなたが触れるコンテンツには限りがあった。昔は、ファッション誌や美容雑誌を見るのに、何分も何時間も費やすことはできなかったはずだ。

 

しかし、ソーシャルメディアは無限だ。常に新しくて斬新で、それが脳の報酬系を刺激して、もっともっと何かを欲しがるようになる。

 

ってことなんで、SNSの使用量を減らすに超したことはないのかもですねー。

 

 

 

よく眠りたきゃ果物と野菜を食べよ

よく眠りたきゃ果物と野菜を食べろ!」ってデータ(R)が出てたんで、こちらも内容をチェックしておきましょう。

 

この研究はヘルシンキ大学によるもので、フィンランドの成人5,000人以上を対象に、みんなの睡眠と食生活をアンケートで調べ、そのデータを分析したんだそうな。

 

分析にあったては、WHOが推奨する成人の1日の睡眠時間を7時間から9時間として参加者を階層化。その結果、「ちゃんとほどよく眠れている人」の睡眠は平均7.7時間、「ロングスリーパー」は平均10時間、「ショートスリーパー」は平均6時間だったらしい。

 

でもって、全体のデータから、年齢、性別、金持ちレベルなどを調整したてみたら、

 

  • 「ちゃんとほどよく眠れている人」は、ショートスリーパーと、ロングスリーパーの両方よりも、果物や野菜をより多く消費していた。

 

って傾向が見て取れたとのこと。もちろん、この研究は観察研究なので、どんなメカニズムが働いているのかはチェックしていないんですが、研究チームの推測としては、

 

  • よく眠れている人は、睡眠不足や過剰な睡眠をとる人よりも、定期的な運動や農産物の多い食事など、健康的なライフスタイルを採用する可能性が高いのでは?

 

  • チェリー、キウイ、トマト、キュウリといった特定の果物や野菜には、メラトニンという睡眠ホルモンがたっぷり含まれているので、人間の体内リズムと睡眠パターンを調整する働きがあるのでは?

 

ってことを言っておられます。果物と野菜が多い人ってのは、もともと健康的な生活を送っているし、特定の食材は睡眠の質を上げる働きがあるしで、睡眠に効くのも当然かもしれないよなーって話であります。

 

ちなみに、最も睡眠を改善する可能性が高かったのは、根菜類、種菜類、葉物野菜だったそうです。以前も「アブラナ科の野菜を増やすと睡眠の質が上がるんじゃないか?」って説がありましたが、これを見ると、トリプトファンの量も関係しているのかもですな。やっぱ、もっとブロッコリーを食べよう……。

 

 

 

練習で人は幸福になれるが、サボるとすぐ元に戻るぞ

人生の幸福度を上げるのは可能だが、生涯にわたって練習し続けなきゃダメだぞ!」みたいな内容の研究(R)が出ておりました。

 

これはブリストル大学などの実験で、228人の学生に、同大学で教えられている幸福学のコースを受講してもらったんだそうな。その内容は、「パレオな男」を読んでいる方ならおなじものものばかりで、

 

 

みたいな感じです。これらの知識を学生に伝えて、日常で実践してもらったわけですね。

 

研究チームいわく、

 

私たちが教えていることの多くは、他人を助けたり、友人と一緒にいたり、感謝したり、瞑想したりすることで、自分自身から注意をそらす、ポジティブ心理学の介入を中心に展開されている。

 

これは現在の "セルフケア"の考え方とは矛盾するようだが、自分の頭から離れることで、多くのメンタルヘルスの問題の根底にある否定的な問題から遠ざかることができる。これは数え切れないほどの研究で示された事実だ。

 

とのこと。ポジティブ心理学の基礎的な知識だけを伝えて、それらを実践した場合にどれぐらいの効果が現れ、その効果はどれぐらい続くのかをチェックしたってことですな。

 

で、結果はこんな感じになりました。

 

  • 幸福学のコースが終わった直後、参加者の幸福度は10~15%向上した。

 

  • 幸せのトレーニングを止めた参加者は、その効果が1〜2年で消失していた。

 

  • 推奨された活動を実践し続けた生徒たちは、改善された幸福感を維持していた。

 

ってことで、たいていの人は、ポジティブ心理学の知見を使えば幸福度が10~15%ぐらい上がるものの、その習慣をサボってしまうと1年ぐらいで効果が消えちゃうのではないか?って結論であります。

 

再び研究チームいわく、

 

この研究でわかるのは、ジムや瞑想リトリート、あるいはエビデンスに基づいたポジティブ心理学のコースなどをこなすだけでは、ただスタート地点についただけ過ぎないということだ。

 

ジムに通うようなもので、1回レッスンを受ければずっと健康でいられるというものではない。肉体的な健康と同じように、精神的な健康にも継続的に取り組まなければならない。

 

というわけで、幸福度を高めるためのツールはすでにそろっているんだけど、それらを続けられないのが問題なんだって話であります。まぁ筋トレだって、しばらくサボれば筋肉が落ちるのは当たり前なんで、幸福の介入も同じことなんでしょうなぁ。

 


スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item

search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

INSTAGRAM