このブログを検索




 「ラーメン好きは早死にする」って本当?──山形コホート研究から見えた、ラーメンとの付き合い方

 
 

ラーメンは確かに美味いんですが、なにせ美味すぎるのが難点。高塩分&高脂質が体に悪いだろうなーとはわかっていても、好きな方はなかなか止めるわけにもいかんでしょう。

 

では、実際のところ、ラーメンはどこまで体に悪いのかってことで、「山形コホート研究」という疫学調査(R)がラーメン摂取と死亡リスクの関連を調べてくれていて勉強になりました。

 

まずは研究のざっくり概要から見ておくと、

 

  • 対象は山形県に住む6,725人(平均59.7歳、男性34.9%)。
  • 全員に中央値4.5年の追跡調査を行い、みんなのラーメン摂取頻度をチェックする。
  • 調査の間に145人が死亡(癌死100人、心血管死29人を含む)し、その死亡リスクとラーメンを食べる頻度の関連を解析する。

 

みたいになります。「ラーメンはどこまで体に悪いか?」って調査は意外と行われてこなかったので、これはありがたいところですねぇ。

 

で、分析の結果を見てみると、

 

  • 全体解析では、ラーメンを週3回以上食べる人は死亡リスクが高い傾向があった。
    • いろいろ調整する前のモデルだと、死亡リスクが69%増えてる(HR1.69)
    • 年齢・性別・飲酒喫煙・既往症などの変数を調整した後も死亡リスクが52%増(HR1.52)

 

ってことで、ラーメン好きには切ない結論ながら、どちらも統計的には「有意」とまでは言えないのでご注意ください。つまり「確実に危険」と断言はできないけど、「危うい傾向はある」ぐらいのレベルだとお考えいただければと。

 

さて、これだけなら「やっぱラーメンは良くないんだなー」ぐらいで終わっちゃうんだけど、研究チームはさらにサブグループ解析もやっていて、ここでちょっと面白い傾向が浮かび上がっておりました。具体的には、ラーメンと死亡リスクの関係を、年齢・性別・飲酒習慣・スープ摂取量などで分けてみたところ、

 

  1. 70歳未満の人の場合、ラーメンを週3回以上食べる人は死亡リスクが2倍になる(HR2.20)。つまり、若い人はラーメンを食べても安心ってわけではなく、むしろ「若さゆえに塩分や脂質の影響をモロに受けるせいでダメージが大きい」って可能性がある。


  2. 習慣的に酒を飲んでいる人の場合、ラーメンを週3回以上食べると死亡リスクが2.7倍になる(HR2.71)。これはおそらく、お酒で血圧・肝機能がやられているところに、ラーメンの塩分が追い打ちをかけるのだと思われる。


  3. 男性の場合、ラーメンを月1回未満しか食べないグループにも死亡リスクの上昇が見られた(HR2.07)。これは「病気があるからラーメンを控えている人」が含まれていた可能性が高い(いわゆる因果の逆転)。


  4. スープを半分以上飲む人の場合、 ラーメンを月1回未満しか食べないグループにもやはり死亡リスクの上昇が見られた(HR2.43)。これもやっぱり塩分がカギで、スープを飲み干す行為は死亡リスクに直結するのだと考えられる。

 

ってことで、こうして見ると「70歳未満・飲酒習慣あり・スープを飲み干す男性」って条件がそろうと、ラーメンのダメージは最悪になる可能性が高いと申せましょう。つまり、深夜の飲み会帰りにシメでラーメンを食らい尽くす若い男性は、かなりヤバいとお考えください。

 

が、この結果をもって、「ラーメンは悪だ!」「ラーメンを食べるヤツはダメだ!」などと思わないようにお願いいたします。というか、私もたまには食べますし。

 

実際、研究チームも「ラーメンは絶対NG!」と言ってるわけではなく、以下のポイントを指摘しておられます。

 

  • ラーメンを食べるのが週1〜2回くらいなら、死亡リスクの面では特に問題はない

  • スープを残せば、塩分カットでリスクはさらに低下する

  • ラーメンを食べなくても、食生活全体のバランスが乱れてたら意味がない

 

あくまでラーメンの「食べ方」と「頻度」と「生活習慣」が問題だってことで、そりゃそうですよね。

 

また、この研究にも限界はありますんで、そこも注意しておきましょう。

 

  •  あくまで観察研究なので因果関係は断定できない

  •  ラーメン以外の食事内容や運動習慣は調整していない

  •  どんな種類のラーメンを食べたのか(味噌・醤油・とんこつ)までは不明

 

ここらへんは判断が難しいので、「ラーメンが直接死因」というより、今のところは「生活習慣の一部としてのラーメンが死亡リスクに寄与しているんだなー」ぐらいに考えておくのが妥当でしょうね。

 

その上で、今回の研究をもとに「ラーメン・ガイドライン」をまとめてみると、以下のようになるでしょう。

 

  1. 絶対にスープは残す→ 半分残すだけでも塩分摂取を大幅にカットできるんで。
  2. 頻度は週1〜2回まで → この範囲ならリスクが上がるわけじゃないので。
  3. 飲酒後のシメラーメンは避ける→ 「酒+ラーメン」は死亡リスクを上げるっぽいので。
  4. 栄養のバランスを取る → ラーメンを食べたら、意図的にサラダを増量してカリウム・マグネシウムを補給するのもマスト。
  5. 減塩ラーメンを選ぶ→ 最近は外食でも「塩分控えめ」メニューが増えているんで、できるだけそちらを選んでおきたい。

 

いずれも簡単な話ですけど、これを守るだけで「死亡リスクが3倍!」って未来はかなりのところまで回避できるんじゃないでしょうか。

 

繰り返しになりますが、ラーメンが完全な悪だってことはないので、ぜひとも「健康リスクとどう付き合うか」ってところを考えながら付き合っていくと良いのではないでしょうか。どうぞよしなにー。


スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item

search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

INSTAGRAM