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暑さに勝つサプリはどれ? ネットワークメタ解析が導いた「メントール&タウリン」の秘密


   

「まだまだ暑い!」ということで、夏の暑さ対策に役立つサプリを調べたデータ(R)が出ておりました。

 

これはアスリートを対象にしたメタ分析で、「暑い環境でどうパフォーマンスを落とさないか?」ってのがテーマ。これは今のスポーツ科学における最重要テーマのひとつで、従来は「氷で冷やす」「氷水を飲む」といったアプローチが中心だったんだけど、最近は「サプリメントでどうにかできないか?」って発想に注目が集まってるんですよ。

 

ただし、これまでの研究は個別サプリを単独で検討したものがほとんどで、「結局どのサプリが一番効くんだ?」ってのを調べたものはほぼ皆無だったんですよね。そこで登場したのが、今回紹介するネットワークメタ解析であります。

 

ネットワークメタ解析ってのは、ざっくり言うと「複数の研究を一斉にまとめて、間接的にも効果を比較できる」統計手法のことです。たとえば、Aサプリとプラセボを比べた研究、Bサプリとプラセボを比べた研究があれば、「AとBどっちが強いか」まで推定できちゃうのが特徴であります。

 

そこで研究チームは、暑さに効くサプリを調べた研究から精度の高い25件をピックアップ。その内訳をチェックしてみると、だいたいこんな感じになります。

 

  • 参加者:552人
  • 平均年齢:28.3歳(健康な男性アスリート中心)
  • 競技種目:ランニング、自転車、サッカー、ラグビーなど
  • 環境:27〜40℃、湿度40〜80%
  • サプリの種類:クレアチン、BCAA、チロシン、タウリン、ポリフェノール、ナトリウム系サプリなど(なお、カフェインと硝酸塩は、エビデンスが多すぎて他のサプリとの比較がややこしくなるので除外されている)

 

その上で、どんな結果が出たのかと言いますと、

 

  • メントール:タイムトライアルの完走時間を有意に改善した(要するに、何も飲まない時よりも「速くゴールできる」ようになった)。SMD = -1.83(95%CI:-3.15〜-0.51)

 

  • タウリン:疲労困憊に至るまでの時間を有意に延長した(要するに、何も飲まない時よりも「バテるまでの時間を伸ばせる」ようになった)。SMD = 0.91(95%CI:0.08〜1.73)

 

って感じです。明確に「効いた」と言えるのはこの2つでして、他にもBCAA(SMD=0.73)、クレアチン(0.43)、高ナトリウム(0.47)などもプラス傾向だったんだけど、いずれも信頼区間が広くて有意差ないってことで、つまり「期待はできるけど確定的じゃない」という扱いになっておりました。

 

次に、主観的な評価(RPE、疲労感、温熱感覚など)もチェックしときましょう。運動のパフォーマンスは気分に大きく左右されるので、ここも大事なポイントであります。

 

こちらも結果は明確でして、

 

  • 有意に効いたのはメントール入りエナジージェルだった(SMD = 2.14)。

 

って感じだったそうです。メントール入りのジェルは「疲れにくい」「暑さが気にならない」と感じられる効果が大きかったそうで、つまりメントールは「実際にパフォーマンスを上げる」だけでなく「しんどさを軽減する」心理的なサポートも期待できるんじゃないか、と。

 

となると、「なぜメントールとタウリンが効くの?」ってところが気になるんで、生理学的なポイントを見ときましょう。

 

  • メントールの仕組み:メントールは口や喉にある冷感受容体(TRPM8)を刺激する。そのおかげで脳が「涼しい!」と勘違いするので、体温は変わらなくても体感温度は下がる。その結果、RPE(自覚的運動強度)が低下し、「まだいける!」と感じやすくなる。

 

  • タウリンの仕組み:一方で、タウリンはアミノ酸の一種で、抗酸化作用やカルシウム代謝調整を通じて筋収縮や持久力をサポートする働きがある。特に暑熱環境では酸化ストレスや疲労蓄積が増すため、「バテにくくする」方向で働くのではと考えられている。

 

ってことで、どちらも納得の理由でして、これは使えそうな気がするわけです。研究チームいわく、「暑熱環境では、個々のサプリを単独で用いるよりも、併用したほうが効果が高いように思われる。」とのことで、こちらも理にかなってるんじゃないでしょうか。簡単にまとめると、

 

  • メントール → 脳をだまして「快適に」
  • タウリン → 筋肉や代謝をサポートして「実際に持続」

 

ってことになりますね。これは自分でも使ってみよう。

 

この知見を日常で活かすのであれば、

 

 

 

ってことになりまして、非常に簡単ですね。これをどちらもやっておけば、タウリンでスタミナ底上げしつつ、メントールで「まだいける」と脳をだますことができるはずであります。特に真夏の試合や大会前に効果を実感しやすいかもしれませんし、普通に暑い日をやりすごすのにも使えるかもしれません。もちろん、サプリはあくまで補助として、水分・塩分補給、そしてペース配分って基礎を押さえるのは忘れていただきたくないですが。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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