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ウォームアップは高負荷?低負荷?筋トレ効果を左右する最適な準備運動を科学的に検証してみたらどうなった?

 


筋トレ前のウォームアップを、皆さんはどうしておられますでしょうか? ウォームアップをせずにいきなりトレーニングを始めるのは論外として、「高負荷で筋肉を目覚めさせるのが良いのか?それとも軽いウォームアップで筋肉を温める程度で十分なのか?」みたいなお悩みをお持ちの方もいるでしょう。私もそうです。

 

そんな疑問に答えるべく、新しい研究(R)では「ウォームアップのやり方によって筋トレのパフォーマンスは変わるか?」を検証してくれております。具体的には、筋トレをずっとやってる14人の男性を対象に、

 

  1. 通常のウォームアップ
  2. 高負荷ウォームアップ
  3. 低負荷ウォームアップ

 

って3パターンを比べ、「どの方法が最も効果的なのか?」を調べたんですな。

 

さらに、実験の内容をもうちょい詳しく書いておくと、

 

  • 28歳の筋トレ経験が豊富な男性14名を対象に実施。みんなの筋トレ歴は平均9年で、1回の1RMで体重の1.4倍をスミスマシンで持ち上げられるぐらいの熟練トレーニーを扱っている。

 

  • 上述の筋トレのエキスパートたちに対して、以下の3種類のウォームアップ方法を指示する。

    • 通常のウォームアップ(コントロール):各自が普段行っているウォームアップを行う。
    • 高負荷ウォームアップ(HL-CA)1RMの90%の重さで3回のスクワットを実施。
    • 低負荷ウォームアップ(LL-CA)1RMの45%の重さで6回のスクワットを実施。

 

みたいになります。どのウォームアップ方法でも、コンセントリック動作(つまり筋肉が縮む動き)を爆発的に行うよう指示されていて、ウォームアップ後に休憩を挟み、本番のトレーニングでスミスマシンを使ったスクワットに挑んでんもらったそうな。その上で、パフォーマンスがどのように変化するかを比べたわけっすね。

 

では、どんな結果が出たのかを見てみましょうー。

 

  • どのウォームアップ方法でも、スクワットの反復回数には差が見られなかった。

 

ってことで、どのウォームアップ方法でも筋トレのパフォーマンスには影響を及ぼさないらしい。従来は「高負荷でウォームアップを行ったほうがパフォーマンスが上がる!」と言われてきたんで、ちょっと意外な結果ですな。これまで筋トレ界では、高い強度でウォームアップを行うことで、筋収縮の速度が高まり、一時的に筋肉のパフォーマンスを高めると考えられてたんですよね(いわゆる「PAPE」)。

 

事実、過去の研究(R)では、特定の条件下で高負荷のウォームアップが効果を発揮すると報告されてるんですよ。具体的には、1RMの90%の重さで3回のベンチプレスを行った後、75%の重さで反復回数が増えたというんですな。これを見てると、適切な負荷とウォームアップが筋肉のパフォーマンスを一時的にブーストする可能性は高いんですよね。

 

それにも関わらず、今回の研究でPAPE効果が現れなかったのが謎ですが、その理由については、個人的に以下の要因があるのかなーとか思っております。

 

  • 休憩時間が影響している:過去の研究では、ウォームアップと本番の間に最適な休憩を挟むことで、高負荷ウォームアップの効果が出やすいことが示されているんだけど、今回の実験では10分の休憩を取っており、これが適切だったかは謎。個人的には、もう少し短い休憩時間のほうが良かったような気がする。

 

  • 個々の筋力レベルの影響:筋肉の容量や出力は個人差が大きく、特定の条件下じゃないと高負荷ウォームアップの効果が出ない可能性が大きい。今回の参加者も、筋肉の質や量に微妙な差があったかもしれない。

 

  • 偶然による結果:筋トレのパフォーマンスが、その日の体調やコンディションによって大きく左右されるのは当然のこと。今回の実験でも、必ずしも全員が同じ条件で最大のパフォーマンスを発揮できたとは限らず、ランダムな変動の影響が結果に影響した可能性は否定できない。

 

ここらへんの不確定要素が大きいので、この実験だけで「高負荷ウォームアップは無意味か?」とは言いづらいとこっすね。

 

それでは、今回の研究からどんな教訓が得られるかと言いますと、「ウォームアップの負荷にこだわりすぎず、各自がトレーニングのパフォーマンスを最大化できる方法を見つけようぜ!」みたいになるでしょう。具体的には以下のガイドラインを守るのが良さそう。

 

  • 短時間で効率よくウォームアップを終えたい時:トレーニングの前に少し体を温めたいだけなら、低負荷のウォームアップでも十分効果的だと思われる。少なくとも今回の研究では、低負荷のウォームアップがパフォーマンスに悪影響を及ぼすことはなかった。

 

  • 筋肉の能力を最大限に引き出したい場合:PAPE効果を狙って高負荷ウォームアップを試す場合、ウォームアップ後の休憩時間を試行錯誤するのも手。おそらくウォームアップ後に休憩を入れずに、すぐにトレーニングを始めるのが良いのかもしれない。

 

  • パワー系の動きを重視する場合:瞬発力が重要なトレーニングをする時は、高負荷で筋肉を刺激するウォームアップが効果を発揮しやすいと思われる。たとえば、ジャンプやスプリントなど爆発的な力が求められる動作では、PAPEの効果が現れやすいと思われるので、実験的に取り入れてみる価値がある。

 

ということなので、個人的には普段の筋トレ前には割と軽めのウォームアップで済ませて、プライオメトリクスとかをやるときには高負荷ウォームアップをやってみようかと思ったりしました。まだ議論の余地が多く残されたテーマではありますが、現時点では、自分の目的によってウォームアップの方法を変えていくのが良さそうっすな。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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