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【質問】ウェイトベストでトレーニングの効果は高まりますか?



こんなご質問をいただきました。

 

ウェイトベストってどうですか?ずっと自重でトレーニングをやっているのですが、ちょっと物足りなくなったので、ウェイトベストを試したくなりました。

 

ということで、ウェイトベストの効果はどんなもんか?というお尋ねです。

 

ウェイトベストとは、その名の通り、重りが装着されたベストのこと。一般的には5〜20kgぐらいの重さがあり、重りが固定されていたり、ポケットに追加の重りを入れられたりするタイプがあったりします。

 

 

このようなベストをランニングや筋トレの際に着用することで、普段のエクササイズよりも少ない時間で効率よく筋力や心肺機能を鍛えられるんじゃないか?と考えられるわけですな。まぁ普通に考えれば、ベストを着れば自重が増えるので、それだけトレーニングの効果は出やすくなる気もしますしね。

 

事実、ウェイトベストってのは、これまでも軍隊や消防士の日々のトレーニングに取り入れてたりするんですよ。それによって、過酷な現場に耐えうるフィジカルを鍛えているわけですな。

 

では、実際のところ、研究ではどれぐらいウェイトベストの効果が示されているのかってことで、代表的なものを見てみましょう。

 

  • 効果1. 心肺機能とエネルギー消費量が大幅にアップ
    2020年に発表された研究(R)では、男女各10名が9kg(男性)と6kg(女性)のウェイトベストを装着し、0%、5%、10%の傾斜でウォーキングとランニングをしてもらったところ、ベストを装着することで以下のような心肺機能の向上が確認された。

    • 酸素消費量の増加:酸素消費量が男女ともに増加し、特に男性では+0.22L/分、女性では+0.07L/分の増加が見られた。酸素消費量が増えたってことは、身体がより効率的にエネルギーを燃焼したってことなので、運動の効果が高まって心肺機能が向上すると考えられる。

    • エネルギー消費量の増加:装着中の心拍数が+11 bpm上昇し、男性はエネルギー消費量が+3.8 kJ/分、女性は+1.5 kJ/分増加しました。これは普段のランニングやウォーキングと比較してもカロリー消費量が増えるため、ダイエットや体脂肪の減少に効果的です。

    • 糖質の燃焼率の向上:ウェイトベストをつけると、炭水化物の酸化率が男性で+0.6 g/分、女性で+0.2 g/分増加した。つまり、体がエネルギー源として糖質をより多く使用したってことなので、持久運動のパフォーマンスアップにも適していると考えられる。

 

 

  • 効果2. 軍隊式トレーニングでのパフォーマンス向上
    別の研究(R)では、43名の参加者に6週間にわたる軍隊風トレーニングを行ってもらい、ウェイトベストの有無でトレーニング効果がどう変わるかを調査。ベストを装着したグループは、4〜5kgのウェイトで最初の2週間をこなし、残り4週間では8〜10kgに増量したとのこと。すると、最終的な結果は次の通りだった。

    • PRTスコア向上:3マイル走でタイムが8.4%改善し、特にウェイトベストを着用していたグループは、カリステニクス(自重トレーニング)のパフォーマンスが28〜38%向上するなど、目覚ましい効果が確認された。

    • 最大酸素摂取量と持久力:ウェイトベスト装着グループは最大酸素摂取量が10.7%向上し、対照グループの6.8%を大きく上回った。また、トレッドミルでの持久力が6.8%上昇し、対照グループの3.0%の約2倍もの差が生じている。

 

ということで、これらの結果を見てみると、ウェイトベストを取り入れてみると、持久力や心肺機能を短期間で効率的に高められるんだろうなーって感じがするわけです。自重トレーニングで限界を感じている人は、試す価値が十分にあるんじゃないでしょうか。

 

ただし、ウェイトベストはメリットが豊富だと言っても、正しく使わないと怪我のリスクもあるので注意したいところです。上記の研究を見たところでは、以下のことが言えるでしょう。

 

  • 0〜10%の傾斜でのウォーキングやランニングでは、歩幅や歩行頻度に特に変化は見られなかったため、適切な重量を守る限りでは安全に使えると考えられる。

 

  • しかし、25kg以上のウェイトベストを着ると、足や腰に負担がかかりやすく、怪我のリスクが高まる。軍隊の訓練などの特殊なケースを除き、通常のトレーニングには5〜10kg程度の軽い重量が良いと考えられる。

 

  • そのため、初心者はまず2〜3kg程度の軽い重量からスタートし、体が慣れてきたら少しずつ増やしていくのが理想的。これにより、体への負担を最小限にしながら徐々に運動の強度を上げることができますんで。急激に負荷を上げると筋肉や関節に負担がかかりやすいので、1〜2週間ごとに重量を見直すくらいがベスト。

 

  • 負荷の大きいトレーニングは、適切な休息を挟みながら行うことで体をリカバリーし、怪我のリスクを減らすのがよい。だいたい週2〜3回のペースで行うと、ウェイトベストの効果を引き出しつつ、安全性も確保できるんじゃんないかと。

 

ってことで、ウェイトベストは、運動初心者から上級者まで、幅広い層にとって役立つトレーニングツールだと思われるわけです。ダイエットや持久力向上、心肺機能の強化などいろんなメリットがあるんで、自重トレーニングの効果を増やしたい方はお試しいただくと良いのではないでしょうか。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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