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『階段』こそ最強のトレーニング器具だ!説リターンズ

 

その昔「『階段』こそ最強のトレーニング器具だ!説」ってのを書いたことがありました。ざっくりまとめると、

 

  • SIT(短時間で高負荷をかけるトレーニング)を階段で行ったらめっちゃ効果があった!
  • そもそも階段はヒトにとって重要な動作をさせてくれるよね!
  • 階段を登る能力が高い人ほど「人生の質が高い」なんてデータもあるよ!

 

みたいな感じですね。別に本気で階段こそが至高だと思ってるわけじゃないですが、これだけどこにでもあるものなのに効果が高いんだから、最強の健康器具のひとつとしてカウントしても良いのではないかと思うわけです。

 

といったところで、新しい研究(R)は「ちょっと階段を上がるだけでも脳の働きが上がるぜ!」という内容になっててナイスでした。

 

これはオタゴ大学などが行った研究で、健康な男女52名が対象。日常的に週8時間ぐらい運動をしている、健康的な人だけを選んだそうな。

 

実験では参加者を2つのグループに分けまして、

 

  1. 階段上りグループ:1分間の階段上り+1分間の休憩を6セットやる(計6分間の運動)。
  2. 座りグループ:同じ時間を椅子に座って過ごす。

 

って感じに割り振ったとのこと。でもって、それぞれのグループが指示を終えた後で認知テストや気分を評価したら、階段上がりをしたグループはだいたいこんな結果が出たんだそうな。

 

  • 認知スイッチング能力の向上:まず、階段上りによって向上したのが「認知スイッチング能力」だった。これは複数のタスクやルールに対して、注意を素早く切り替える能力を指している。なので、たとえば「会議中に別の話題に切り替えて発言する」「日常生活で状況に応じた柔軟な判断を行う」みたいな作業が上手くなるんじゃないかという気がする。

 

  • エネルギッシュで幸福感のある気分に:階段上りを行ったグループは、「エネルギッシュな気分」と「幸福感の向上」を報告した。運動によって、エンドルフィンやドーパミンといった「気分を高めるホルモン」が分泌されるのが原因と考えられている。

 

  • 運動強度に応じた反応速度の向上:心拍数データによると、階段をより強い負荷で上った人ほど、認知テストの反応速度が速くなることが分かった。これは、少し息が上がる程度の運動が脳への血流を増加させ、認知機能を刺激するためだと思われる。

 

ってことで、階段上りを行ったグループはマルチタスクが上手くなり、エネルギーと幸福感のスコアが大幅に上がったらしい。この効果は、心拍数が高い(=より強い負荷で階段を上った)参加者ほど高かったそうなんで、階段を猛ダッシュで上がるのがかなり良さそうですな。6分間の運動で認知能力や気分が向上するなら、かなり手軽でよろしいですな。

 

まぁこの研究にはいくつかの課題も残ってまして、階段上り後の効果がどれくらい続くのかは不明だし、健康な若年層にしか限定していないので、高齢者にも同じ効果があるかどうかは不明だしで、誰にでも同じような効果が得られるとは思わんでくださいませ。とはいえ、繰り返しになりますが、たった6分間の階段上りで脳の働きと気分を変えるかもしれないのなら、試してみるのはありでしょう。

 

この文献を見る限り、6分の階段トレーニングを行う時は、以下のような手順で行うのが良さそうであります。

 

  1.  ウォームアップ(約2分)
  2. 6分間のインターバル階段上り:このトレーニングの核となる部分。1分間の階段上り+1分間の休憩を、以下のように6セット繰り返す。
    1. 1分間階段上り→1段ずつテンポよく階段を上る(全力疾走ではなく、ややきついと感じるペースでOK)。息が上がる程度の強度を目安に、心拍数を高めることを意識する。
    2. 1分間の休憩→階段を下りたら、平らな場所をゆっくり歩いて呼吸を整える。心拍数を少し下げ、次のセットに備えていく。
    3. このサイクルを6回繰り返す


  3. クールダウン(約3分):トレーニング後は、身体をクールダウンさせて心拍数を徐々に下げる。平らな場所をゆっくり歩きながら呼吸を整え、階段をもう一度、ゆっくりと上り下りする。最後に軽いストレッチを行い、脚や腰の筋肉をほぐして終了。

 

ってことで、この方法で6分の階段上りを行う際は、運動中に「ややきつい」と感じるぐらいのペースをキープしてくださいませ。目安としてはRPEで5〜7ぐらいを目指すのが良いんじゃないでしょうか。疲労感が強い場合はペースを落として、必要ならセット数を減らして調整してくださいませ。初心者は週2~3回から始めて、慣れてきたら毎日のルーティンに取り入れると効果的じゃないかと。

 

短時間で脳に大きな効果を得られるナイスなエクササイズなので、ぜひ昼休みのちょっとした時間を活用してぜひ試してみてくださいませー。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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