デジタル時代だからこそ孤独になっちゃう問題を科学で解決だ!みたいな本を読んだ話
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『私たちの新しいソーシャルライフ(Our New Social Life: Science-Backed Strategies for Creating Meaningful Connection)』って本を読みました。著者のナタリー・カー先生とハイメ・クルツ先生はジェームズ・マディソン大学の心理学者で、いろんな心理系のジャーナルで名前をお見かけする先生方だなーって印象であります。
本書のサブタイトルは「意義あるつながりを築くための科学に基づく戦略」って感じでして、今はデジタル技術のおかげで大量の人とつながれるにもかかわらず、私たちの社会が記録的な孤独を経験しているのはなんでだろうねーって話が展開されてました。当ブログをお読みの方にはおなじみの論点ですが、あらためて孤独との向き合い方を教えてくれる良書ではないでしょうか。
ってことで、いつものように本書で勉強になったところをまとめておきましょうー。
- 人間は他者や社会とのつながりを求める根源的な欲求を持っている。社会とのつながりがある人ほどより幸せで健康になれることは、多くのデータが支持している。しかし、調査によると、大半の人は友人と過ごす時間が以前よりも減っており、平均で週3時間ぐらいだと考えられる。その割に、約半数の人は「友人ともっと過ごしたい!」と感じ、このギャップはどんどん広がっている。それ同時に、現代では「友人はなくても生活できる」と考える人も増えており、仕事で忙しいと感じている人は、友人との集まりやランチを真っ先に削ろうとする。
- 「友人はなくても生活できる」という考え方は、自分でも気づかないうちに社会とのつながりを破壊してしまいかねない。そのため、まずは社会とのながりは、睡眠・運動・食事と同じぐらい健康の維持に欠かせないものであることを思い出し、日常での優先順位を上げる必要がある。これは、自分の性格が内向的か外向的かは関係がない。どんな人でも、もっと人間関係の維持にリソースを投資する必要がある。
- 現代において、最も社会とのつながりを破壊しやすい行動は、「誰かが話している時に何度もスマホを見る」というものである。このような行動は、相手に「私は拒絶された!」と感じさせたり、パートナーとの仲を悪化させたりすることが研究で確認されている。当然、このような行動は、カップル間のケンカにもつながるため、心当たりがあるなら真っ先に改善しなければならない。
- 「忙しいのは良いことだ」という価値観も、現代における社会生活を破壊する要因のひとつである。そのせいでスケジュールをぎっしり埋めてしまい、自分から自然なつながりをカットしてしまう。このような価値観を持っている人も、自分がどのような価値観に動かされているのかを考えて、それに抵抗しなければならない。
- 「社会的合図の誤解」も、社会的なつながりを失わせてしまう原因のひとつ。これは、会話の後で「あそこであんなことを言わなければ良かった……」と悔やむ人は多いが、実際には相手は何も気にしていなかったような経験を意味する。過去数十年にわたる研究により、私たちは他人の心を読むことができず、他人の考えや感情を大きく間違って推測することが示されている。
最もよくあるエラーが「自分はそこまで相手から好かれていないだろう」と思い込んでしまう問題で、この間違いにより、私たちは本当は良い友人になれそうだった人を遠ざけてしまったりする。
- これは友人作りにおけるド定番のバイアスで、「好感のギャップ」と呼ばれる。みんな「相手はこちらとのコミュニケーションをそこまで楽しんでいないだろう」と考えるがが、その不安は往々にして誇張されており、たいていの人は、私たちが思う以上にこちらを好きになってくれるし、こちらとの会話を楽しんでいる傾向にあることが研究で示されている。
「好感のギャップ」は社会とのつながりを妨げる障壁を生み出すため、「たいていの人は、思ったよりもこちらの感謝の気持ち、サポート、親切心に感謝してくれる!」と自分に言い聞かせると良い。まれにそうならない場合もあるが、それはあなたとは関係がないことである。「好感のギャップ」で友人作りにおじけづいたとしても、意識的に相手へ感謝の気持ちを伝えたり、困っている友人をサポートしたり、無作為に親切な行動を取ったりする回数を増やすとよい。
- 良い友人を作るポイントは簡単で、多くの人は「どれくらいの頻度で顔を合わせるか」「どれくらい共通点があるか」が重要である。社会心理学者エリオット・アロンソンは、「地理的に最も近い人々は、最も親しい人々になる可能性が高い」と指摘している。誰かと会う機会が増えれば増えるほど、お互いに挨拶を交わしたり、会話を始めたり、共通の関心事を見つけたりする機会が増えるからである。これは「単純接触効果」として知られる基本的な心理で、食べ物、香り、音楽、人などあらゆるものに当てはまる。
- 「単純接触効果」を活用するには、ただ人前に出るようにすればよい。Zoomの会議中にカメラをオンにしたり、友人のSNSにコメントを残したり、グループの習い事に積極的に参加するとよい。毎日同じ時間にジムに通ったり、同じコミュニティの会合に出席したりするのもよい。そうすれば、同じ人たちと顔を合わせる可能性が高くなり、あなたは他の人たちを認識するようになり、他の人たちもあなたを認識するようになる。このアドバイスは、特に内気な人や物静かな人にとって役立つはず。友人を作るのに社交的な人になる必要はなく、ただそこにいるだけでいい。
- 「深い会話」も重要である。これは、自分の不完全さを認め、本音を語り、心の奥底にある願いを明かすような会話のことで、対人関係に絶大な影響があるにも関わらず、多くの人はこのような行動をためらいがちであることが研究で示されている。
ある研究では、参加者に見知らぬ他人と「表面的な会話」と「深い会話」をするように指示した。表面的な会話では、参加者は「今日はどんな調子ですか?」といった質問を行わせ、深い会話では、「人生で犯した過ちを一つ取り消すことができるとしたら、それは何ですか?なぜ取り消したいのですか?」といった質問に答え、より個人的な情報を開示させた。その結果、深い会話を行った場合は、浅い会話よりも相手を身近に感じ、より楽しい会話ができるようになった。そのため、会話においては安全策を取るのは禁物である。
- ただし、私たちの人生には他者が絶対に必要ではあるが、つながりを感じるために他者に依存しているわけではない。 私たちは、自分の内側にある主観的なつながりの感覚を高める練習に取り組むことで、自分の身を孤独から守り、健全な人間関係を築くための強固な土台を作ることができる。このような「内なるつながり」の感覚は、瞑想、ヨガ、呼吸法、自然に浸ることなどで得ることができる。 研究によると、これらのトレーニングを実践した人には、より内なるつながりを感じ、孤独が癒される傾向が確認されている。
- また、マインドフルネスを毎日実践すると、わずか2週間で孤独感を軽減できるとの報告もある。 研究チームは、マインドフルネスが「孤独は生存への脅威だ!」と考える私たちの脳を鎮め、これによって社会的なつながりをより利用しやすくするのだと考えている。