「階段」こそ最強のトレーニング器具だ!説
体力アップには階段が最強?
世の中にはいろんなトレーニング器具がありますが、こと「体力アップ」 が目的ならば「階段が最強なんじゃない?」みたいな論文(1)が出ておりました。
これはマクマスター大学の実験で、「SITプロトコル」の調査で有名なギバラ博士によるもの。SITを階段で行った場合の効果について調べたんですね。
SITってなに?
SITってのは「短時間で体力が激増する運動法」で、HIITとならんで効果が確認されているテクニックであります。具体的には、
- 2分のウォームアップ
- 20秒だけ超全力でダッシュ
- 2分ほど軽く歩く
- 20秒だけ超全力でダッシュ
- 2分ほど軽く歩く
- 20秒だけ超全力でダッシュ
- 3分のクールダウン
みたいな感じ。最近は個人的にも使ってますが、HIITより休憩が多いぶんだけ気分的にラクです(最終的にはすげー辛いけど)。
階段のどこが素晴らしいのか
どんな運動でも使える方法でして、ジムでエアロバイクやトレッドミルを使ってもOK。ただし、この実験でなぜ階段を選んだのかと言いますと、
- なんせ手軽だから:自宅でも旅先のホテルでも仕事先でも、階段はすぐに見つかる。
- ヒトにとって重要な動作だから:ジムの特殊な器具にくらべて、階段を昇り降りする動きはより汎用性が高い。実際、階段を登る能力が高い人ほど「人生の質が高い」ってデータがあるそうな。そういえば「脚力が強い人は頭もいい」なんて話も以前に紹介しましたしね。
といったところ。とにかく、階段の昇り降りは手軽でメリットが大きいわけですな。
階段でSITをしてみたら…
この研究は31人の女性が対象で、2パターンの実験を行っております。まずひとつめは、
- 階段を使ってSITをする
- ジムのエアロバイクでSITをやる
の2つをくらべたもの。週3のペースで1回10分のSITを42日ほど続けたらしい。
SITの方法は、上で紹介したのと同じ「20秒✕3回」のパターン。つまり週にたった15分の運動を4週間続けたわけですね。
その結果は、
- 階段を使ったSITでも、心肺機能(VO2max)は12%も向上していた
- ジムのSITでも同じぐらい体力がアップしていた
ってことで、階段でもジムと同じレベルの効果が見込める模様。もっとも、参加者の体脂肪率やウエストサイズには特に変化がなかったようなので、やっぱインターバル系のトレーニングは体力アップ用に使うべきなんでしょうな。
もうちょいラクな60秒✕3回パターンでも効果あり
そして、もうひとつの実験が、「60秒✕3回」パターンのSITを週3回で試したもの。具体的には、
- 2分のウォームアップ
- 60秒だけ全力でダッシュ
- 60秒ほど軽く歩く
- 60秒だけ全力でダッシュ
- 60秒ほど軽く歩く
- 60秒だけ全力でダッシュ
- 3分のクールダウン
って感じです。ポイントは「20秒✕3回」のときは「超全力」を出すのに対し、「60秒✕3回」では「全力」ぐらいのパワーで階段を駆け上がっていくとこですね。ざっくりした目安を言うと、
- 超全力:走り終わった直後に倒れるぐらいのレベル。RPEで10ポイントぐらい
- 全力:「かなりキツい!」と感じるぐらいのレベル。RPEで8-9ポイントぐらい
といったところ。このパターンで4週間ほどトレーニングを続けたところ、
- 心肺機能(VO2max)が8%向上!
って結果だったそうな。20✕3回パターンにはおよばないものの、こちらもかなりの成果が出ております。
心肺機能が上がるほど寿命も伸びる
「心肺機能が8〜12%アップ」と言われてもピンと来ないかもですが、この数値は、
- ウエストが7センチ減った
- 血圧の上が5mmHg改善
- 空腹時血糖が1mM改善
と同じぐらい早期死亡率を下げるとのこと。いずれにせよ、心肺機能が上がるほど寿命が長いのは間違いないんで、積極的に鍛えていきたいところです。
ちなみに、この研究だと「20✕3回パターン」のほうが良い結果が出てますけど、個人的には「60秒✕3回」をオススメします。実際に試すとわかりますが、「超全力」で20秒の階段ダッシュって本当にツラいので、「もうやりたくない!」って気分になりがちなんですよ。
その点、全力で「60秒✕3回」なら「ツラいけど気分もいいなぁ」みたいな気分に落ち着くケースが多め。特に運動慣れしてない場合は、「60秒✕3回」パターンのほうがよいかな、と。
また、直近の信頼性が高いデータだと「SITは1セッション2回で十分なんじゃね?」って結論なんで、実際は「60秒✕2回」でもいいのかも。そのへんはご自分の体力と相談して決めてください。
とりあえず、週15分の階段ダッシュで寿命が伸びるってのは手頃でいいですなー。