「低脂肪食でテストステロンが下がる」って本当?男性ホルモンをキープするには、どれぐらい脂質を摂ればいいのか?のメタ分析
ここ10〜15年ほどで、脂質の立ち位置もだいぶ変わったもんです。かつては「脂=悪の元凶」と言われ、とにかく脂を減らせば健康になれる!みたいな雰囲気が主流だったわけです。特に90年代は“ローファット信仰”が強く、「ノンオイルドレッシングが正義!」みたいな風潮もあったもんです。
が、近年は脂質の役割が見直され、むしろ「脂は健康に不可欠!」って感じになってきたのはご存じのとおり。特に注目されているのが、「脂質の摂取量とテストステロン(男性ホルモン)の関係」であります。
テストステロンといえば、筋トレに欠かせないのはもちろんのこと、やる気・集中力・性欲といった人生のパフォーマンス全般に関わるホルモンでして、いわば「男のエネルギーの源」。こいつを増やすためには、適切に脂肪をとらなきゃいけないんですよね。
ってことで、そんな中で近ごろ興味深いメタ分析(R)をチェックしましたんで、「テストステロンと脂質の関係」について掘り下げてみましょう。これは6件のランダム化比較試験(RCT)をまとめ分析で、「脂質を減らすとテストステロンは下がるのか?」って問題に、ある程度の答えを出したものになります。高脂質の食事と低脂質の食事をくらべて、テストステロンの量にどれほどの違いが出るのかを検証したわけです。
調査の対象になったのは18〜65歳の健康な男性で、試験の期間は2〜10週間。低脂肪食(平均脂質比率19%) と高脂肪食(同39%)を比べて、総テストステロン、遊離テストステロン、尿中テストステロン、ジヒドロテストステロン(DHT)などの指標をチェックしたんですな。
その結果がどうだったかと言いますと、
- 高脂肪食のほうが、テストステロンが明確に高かった!
だったそうです。とくに大きな差が出たのが総テストステロン値で、
- 低脂肪グループ:50〜100ng/dlほど低下
- 高脂肪グループ:それに比べて有意に上昇
って傾向が観察されてたりします。ちなみに、テストステロンの基準値は300〜1000ng/dlぐらいと言われてるんで、そこまでヤバい変化ではないものの、日常的なパフォーマンスや筋肥大、性欲に影響するぐらいの差はある、と考えられるんじゃないかと。
では、なぜ脂質が少ないとテストステロンが下がるのか?ってとこが気になりますが、研究チームは以下のような仮説を立てております。
- 脂質はホルモンの原材料だから→ テストステロンはコレステロールを原料に作られるため、脂質摂取が少ないと材料不足になる。
- コレステロールが足りないと、ステロイドホルモンの合成が滞る→ 特に飽和脂肪酸や一部の動物性脂肪が、テストステロン合成に関与している可能性がある。
- 脂質が少ない食事では、ビタミンDや亜鉛などの吸収が低下する可能性がある→ テストステロン生成に必要な栄養素の吸収効率が下がる。
こういった仮説が出たのは、菜食中心の低脂肪食を行ったグループほどテストステロンの低下が激しかったからで、研究チームも「ビタミンやミネラルの不足が影響したのでは?」と考察してたりします。つまり、「脂を減らしたからテストステロンが減った」のもあるんだけど、微量栄養素の問題も大きいのかもですね。
じゃあ、テストステロンを増やしたい人は、ひたすら脂質を摂ればいいのか?って疑問も湧きますけど、ここは判断が難しいところです。研究では、脂質が30〜40%の範囲に収まっている場合にテストステロンの改善効果が見られたんだけど、それ以上の摂取がさらに効果的かどうかは不明であります。脂を増やしすぎると、今度は炭水化物やタンパク質の摂取量が削られるリスクもあるんで、ここらへんはバランスが大事になるでしょうね。
ってことで、ここまでの話を踏まえて、テストステロンを安定させるには、以下のようなガイドラインが考えられますね。
- 総摂取カロリーの30〜40%を脂質から摂る。または「体重1kgあたり1gの脂質」を目安にする(例:体重70kgの人なら脂質70g/日)
- 飽和脂肪酸もある程度必要(卵黄、赤身肉、バターなど)なので、不飽和脂肪酸(オリーブオイル、ナッツ、アボカドなど)とバランスよく
- 野菜ばかりの食事は、ビタミンDや亜鉛の不足に注意。ファイバーの摂りすぎもホルモン合成を妨げることがあるので、これも注意
- その他、ビタミンD、亜鉛、マグネシウムはテストステロン生成に重要なので切らさないように
私自身の経験でも、かつて試しに低脂質ダイエットを試して脂質比率15%くらいの生活をしていたころは、妙に集中力が続かなくなって困ったことがありました。あれも脂質を過度に制限しすぎてしんどくなったのかもですなぁ。もちろん、個人差はありますが、「脂質を過度に制限すると地味にしんどい」ってのは、多くの人に共通するポイントかもしれません。テストステロンが気になる方は、まずは脂質の摂取量をチェックして、足りていないようなら少しずつ増やしてみるのが良いかもしれません。