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今週の小ネタ:IQが高い人は「未来を当てる」のがうまい、「几帳面な人」ほど子どもが多い、認知症の診断には平均3.5年もかかる


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

IQが高い人は「未来を当てる」のがうまいらしい

「未来の予測がうまい人ってどんな人?」って問題の答えを知りたいなら「超予測力」って本を読むのが最適でしょうが、新しい研究(R)では「自分の寿命を正確に予測できるのはどんな人?」って疑問を掘り下げてて面白かったです。

 

これはバース大学の研究で、「寿命の予測が得意な人」の特徴を調べたものです。「寿命の予測が当たるって何の役に立つの?」と思われるかもですが、これができれば、

 

  • 寿命を正しく予測できれば、老後資金の計画が立てやすくなる
  • 健康や保険の選択も合理的にできる
  • 人生の意思決定全体がブレにくくなる

 

といったメリットが得られますからね。なかなか大事な能力じゃないかと思うわけです。

 

そこで研究チームは、50歳以上の男女3,946人を集めて、みんなへ定期的に「あなたは75歳まで生きられる確率は何%だと思いますか?」といった質問を投げかけて、回答を統計的な寿命データと比較。それによって「どれだけ見積もりが現実とズレているか」を測定したんだそうな。

 

その結果、どんな傾向が見られたかといいますと、

 

  • IQが1標準偏差高いと、予測のズレが20%減る!

 

みたいな感じです。IQが低めの人は、聞くタイミングによって回答がコロコロ変わる傾向があったのに対して、IQが高い人は答えが一貫して安定してた上に、常に現実的な見通しを答えていたらしい。IQが高い人は、寿命の予測も得意なわけですね。

 

とはいえ、「やっぱりIQが低いとだめなのか……」って話ではないのでご注意ください。「超予測力」にもあったとおり、予測精度や判断力は、ある程度トレーニング可能なんで。詳しくは本書をお読みいただければと思いますが、たとえば、

 

  • 確率的思考(ベイズ的思考)を意識する
  • 過去の意思決定の記録とフィードバックをとる
  • 不確実性を前提にしたマインドセットを養う

 

といったトレーニングを積めば、誰でも予測精度が高められますんで。また、別研究では、瞑想によって抑制機能が向上し、判断が安定するというデータもあったりするんで、そっちも併せて試してみると良いかもですね。

 

 

 

「几帳面な人」ほど子どもが多いらしい

昔から「マメな人はモテる!」などと言うわけです。この考え方を支持するデータは割と多くて、いわゆる“誠実性”がモテにつながるのは間違いなさそうっすね。

 

新しいデータ(R)もそこらへんに関わるもので、世界17カ国・2万人超のビッグデータを用いて、「性格と子どもの数の関係」をチェックした内容になります。厳密に言えばモテとは関係ないんですが、「子どもが多い」ってのは、特定のパートナーと長期的な関係を維持できているサインだとは申せましょう。

 

ここで使われたデータは、2010〜2012年の「世界価値観調査」で、対象は22,635名(平均年齢42歳・女性51%)。非常に大規模かつ多様なサンプルになっていて良い感じですね。

 

性格の測定には毎度おなじみビッグファイブ尺度を使っていて、みんなの性格と子どもの数を比べたとのこと。すると、性格ごとに以下のような特徴が見られたそうな。

 

  • 誠実性(マメかどうか) → 子どもの数と正の相関
  • 外向性(陽キャかどうか) → 負の相関
  • 神経症傾向(不安になりやすいかどうか) → 負の相関
  • 開放性(好奇心があるかどうか) → 負の相関
  • 協調性(人と仲良くなれるかどうか) → 相関ナシ

 

直感では「外向的な人のほうが子だくさんでは?」と思いがちですが、実際には“几帳面な人”の方が子どもが多い傾向があったみたいっすね。

 

念のためおさらいしておくと、誠実性ってのは、ビッグファイブの中でも「自己管理力」に関する性質で、

 

  • 計画的に行動する
  • 約束を守る
  • 責任感がある
  • コツコツと努力する

 

といった特性を含んでおります。こういった性質が、なんで子どもの数と関係するのは不明ですが、おそらく以下のような進化的なメリットがあるんだろうなーと思っております。

 

  • パートナーとの安定した関係を維持しやすい → 家族を築くうえでの信頼と責任があるため、関係の持続率が高まるっぽい
  • 子育てに必要な長期的計画力がある → 教育費や生活設計など、育児に向いた意思決定ができるっぽい
  • 避妊行動にも一貫性がある → 逆説的に、意図的に「家庭を作る」行動につながる可能性もあるっぽい

 

つまり、誠実性が高い人ほど「繁殖」に関する長期的スキルを持っているってことなんじゃないかと。

 

一方で、外向性や神経症傾向、開放性といった他の性格特性については、「文化によって関係が変わる」というパターンが見られまして、たとえば、

 

  • 外向性  → タイでは“子だくさん”と関連していたが、アルジェリアやチュニジアでは逆に“子どもが少ない”と関係していた
  • 神経症傾向 → イエメンでは“子どもが少ない”と関係していたが、イラクでは“子どもが多い”という逆の傾向があった

 

どうやら、ある性格が生殖的に有利かどうかは、その社会の構造や価値観によって変わるところも多いみたいっすね。やっぱ人間の性格が有利に働くかどうかは、環境によって変わるんでしょうなぁ。

 

まあ、あくまで横断的データなので因果関係は不明ですが、これだけ大規模かつ国際的に一貫した結果が出ている点は注目に値するでしょうな。どの国でも誠実性の高さと“子どもの多さ”が一貫して相関してるってのは、いつの時代でも自己管理力が大事ってのを表してるんでしょうなぁ。

 

 

認知症の診断には平均3.5年もかかるらしい

正式な認知症の診断が下るまでにかかる時間は平均で3.5年!ってデータ(R)が面白かったのでメモ。要するに、「認知症かも?」と思ってから、何年も病名がつかないまま放置されるケースが普通ってことでして、なかなか怖いもんですな。

 

まずおさらいですが、「認知症」はひとつの病気ではなく、

 

  • アルツハイマー型認知症
  • 前頭側頭型認知症(FTD)
  • 血管性認知症
  • レビー小体型認知症

 

といった複数の症候群の総称であります。基本的には進行性で、時間が経つにつれて記憶、言語、注意、判断力などが徐々に低下していき、最終的には日常生活が困難になるのが怖いところです。「高齢者の病気でしょ?」と思われがちですが、40代や50代でも発症するケースもあり、特に若年性認知症は誤診や診断遅れが多いとされていて、かなり怖いもんです

 

で、このレビューは、UCLなどの研究チームによるもので、合計3万人以上の患者を対象に13件の研究を分析したものです。そこで何がわかったかと言いますと、

 

  • 平均で認知症の症状の出現から診断までに3.5年かかる
  • 特に以下のケースでは、診断がさらに遅れる傾向があった。
    • 若年性認知症:平均4.1年
    • 前頭側頭型認知症:平均4.2年
    • アルツハイマー型認知症:平均3.6年
  • 一方で、高齢発症型の認知症は2.9年で、やや早めに診断されるっぽい。

 

って感じでして、いかに認知症の診断が難しいかが浮き彫りになってますね。

 

では、「なぜ診断までにそんなに時間がかかるのか?」って話ですが、研究者たちは以下のような要因を挙げておられます。

 

  1. 医師の思い込み:若い人が受診すると「認知症じゃないでしょー」って思い込みが働くため、うつ病やストレス障害などと誤診されがち。

  2. 症状がわかりにくい:アルツハイマー病のように記憶が明らかに低下するケースは早めに発見されやすいけど、FTDのように行動や性格の変化が主症状の場合は気づかれにくい。

  3. 診療プロセスの複雑さ:複数の診療科をたらい回しにされたり、MCI(軽度認知障害)として様子見されて、時間が経ってしまう。

  4. 社会的格差:アメリカの研究では、人種的マイノリティや教育歴が短い人ほど診断が遅れる傾向あり。医療リテラシーやアクセスの問題が関係している可能性がある。

  5. 専門施設の有無:オーストラリアのデータでは、専門の認知症クリニックにアクセスできた人のほうが診断が早かったとのこと。

 

どれも難しい問題ですが、早期診断ができれば薬物療法で症状の進行を遅らせられるし、サポート体制も準備できるしで、残りの人生をどう生きるかの戦略を立てられますからねぇ。ここはどうにかしておきたいところですなぁ……。とりあえず、「若年性でも認知症はありえる!」と認識したうえで、変化があったら遠慮せずに専門外来に駆け込むマインドを持っておくのが大事っぽいですな。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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