【質問】筋肉を増やすにはロイシン単体のサプリを飲む必要はありますか?
こんなご質問をいただきました。
筋トレを始めたんですが、ジム仲間から「ロイシン単体のサプリが一番効くよ!」とすすめられて、ちょっと気になってます。 プロテインは毎日飲んでるし、食事もそこそこ気をつけてるつもりなんですが……。 でもBCAAとかEAAとかもあって、正直どれが何に効くのかよくわかりません。 ロイシンだけをわざわざ摂る意味って本当にあるんでしょうか?
ということで、ロイシンは本当に良いのか?って疑問ですね。確かに、「筋トレするならロイシンを摂れ!」みたいなフレーズを耳にしたことがある方は、多いかもしれません。
ざっくり言えば、ロイシンは筋タンパク質の合成を始める“スイッチ”の役割を持ったアミノ酸で、「mTORC1」という経路を活性化する働きを持っております。これは筋肉の合成プロセスを起動させるトリガーになりまして、要するに、
筋トレで筋繊維にダメージが入る
体が「修復せねば!」と反応する
そのときにロイシンがあると、mTORC1が刺激されて、筋合成が始まる
という流れになってます。ちなみに、ロイシンはBCAA(分岐鎖アミノ酸)に含まれる3つのアミノ酸(ロイシン・イソロイシン・バリン)のうちの1つなんですが、この3つの中でもダントツで重要視されているのがロイシンなんですよね。
というわけで、数あるアミノ酸のなかでも、ロイシンは「筋肥大のスイッチを入れるのに欠かせない!」と言われるようになりまして、サプリメント業界でも「ロイシン◯g配合!」といった商品が多く見られるようになったわけです。個人的には「めんどいからプロテインでいいやー」って感じなんですけど、ロイシン単独の効果については気になったりしておりました。
では、ロイシンの実際の効果やいかに?ってことですが、まず前提として、ロイシンが筋肉の合成に関わっているのは事実であります。ロイシンが筋タンパク質の合成をスタートさせるメカニズム自体はかなりよく研究されていて、「筋トレ後48時間はロイシンへの感度が高まる」なんてデータもあるぐらいですからね(R)。なので、ロイシンが大事なのはほぼ確とお考えください
が、「サプリで余分にロイシンを摂る必要があるのか?」ってことになると、これはまた別の話。この点で有名なのは2023年のメタ分析で、若くて活動的な成人を対象に、筋トレをしている人たちが、ロイシンをサプリで追加した場合に筋肉や筋力の増加に差が出るのか?を調べております。
その結果はと言いますと、
- ロイシンを摂っても……
筋肉量の増加:差なし
筋力の向上:差なし
回復スピード:これも特に変わらず
って感じだったんですな。なんだか不思議な結果のようですが、どうやらしっかり筋トレしていて、そこそこ高たんぱくな食事をとっている人にとっては、ロイシンのサプリを追加しても「プラスアルファの効果」は出にくいみたいなんですよ。
ちなみに、一部では「ロイシンは高齢者のサルコペニア(筋肉減少症)にも効く!」という話も聞きますが、実はこちらもかんばしくない結果が出てたりします。あるメタ分析(R)によると、たとえサルコペニアの高齢者であっても、
ロイシンだけを摂っても、筋肉量・握力・脚力のどれも明確な改善は見られなかった
ただし、ビタミンDとセットで摂った場合のみ、握力にちょっとした改善があった
という微妙な結果になってるんですよ。「ロイシンを飲んでおけばOK!」と単純には言いづらい感じっすね。
というわけで、ここまでの話をざっくりまとめると、以下のような結論になるんじゃないでしょうか。
ロイシンは筋肉合成のスイッチではあるけれど、食事で十分足りていればサプリで追加しても意味がなさそう
高齢者でも若者でも、筋トレ+適切なたんぱく質摂取でほとんどの効果は得られると考えたほうがよい
「適切なたんぱく質」というのは、たとえば体重1kgあたり1.2gぐらいでもOK(個人的には1.6gが良いと思うが、そんなに摂取できない人はこれぐらいで)
個人的には、BCAAやEAA(必須アミノ酸)だけを単体で摂るよりも、ホエイプロテインなどの「完全なたんぱく源」をとるほうが、筋タンパク質の合成は高まりやすいんじゃないかなーと考えてまして、あえてロイシン単体にこだわる必要はないんじゃないか、と。あとついでに言っておくならば、「ロイシンはめっちゃまずい!」って問題もあるので、こちらも念頭に置いておきたいところです。ロイシンのサプリって苦いし、口に残るし……って感じなので、よっぽどのマニアじゃないと続けるのは厳しいと思うんですよ。どうぞよしなにー。


